230食目、マーリンを死守せよ
「ケンゴ!ちくしょー、そこをどけぇ」
「まさか、ケンゴが殺られるなんて」
教祖カノンによって現れたもう1人のタケヒコを倒せずにいるタケヒコとサクラ。ケンゴが教祖カノンの【鏡世界】の中へ消え焦っている。
「もうそろそろケンちゃんが放った光線が来る頃…………ね!」
パリンと何かが割れる音と共に何かが教祖カノンの元へ迫って来る。瞬時に聖盾ムーンローアを構えるが、衝撃でいくらか後退する。
「カズト!」
「パイセン」
「みんな無事か」
どうにか《世界》から逃げ遂せ、自分の世界から脱出する事が出来た。
脱出したところで直感で敵であろう教祖カノンに斬り付けた訳だが、当たっていたようだ。
周囲を見渡すと、ショウキとサンドラが倒れており、後は無事のようだ。
「カズちゃん酷いわ。いきなり、斬り付けるなんて」
「酷いなものか、カノン姉。どれだけ俺が、カノン姉の事を殺したいと思っていたか」
「まぁ嬉しいわ。私の事を、そんなに思っていてくれてたなんて。私もカズちゃんの絶望した顔を見てみたいと思っていたところなの」
自分の母と父を廃人と化したこの女だけは許さない。血が繋がってる実の姉でも関係ない。それに俺だけの問題だけではない。
俺以外の数多くの人達を不幸に追いやってる。同じ血が流れてる俺が引導を渡すべきだろう。
「でもね、今直ぐには無理なの」
「なにっ?」
「分からない?」
教祖カノンが上の方向へ指を差した。一体、何が上にあるというのだ?!
「分かった?私に指摘されるまで気付かないなんて、カズトちゃんもまだまだね」
「あれは何だ!」
いや、誰も見ても明らかだ。何らかの攻撃で、上空から光線が降ってきてる。
「あれはね、テンパったケンちゃんが放ってしまったの。困ったものね。それで私は、アレを防ぐためにこの国全域に障壁を張ったわ。でも、防ぎれる確率は五分五分と言ったところね」
そう言えば、ケンゴがいない。一体何処に行った?何処を見渡しても見当たらない。
「ケンゴを何処にやった?」
「ケンちゃんはね、私の世界にいるわよ」
「なに?直ぐに解放しろ」
「やーよ。それより良いの?アレを止めなくて?協力して止めましょう」
ちっ…………悩んでるヒマがない。今は、あの光線を止めないと国中の国民達も犠牲になる。
「分かった。それで何をすれば良い?」
「そうこなくちゃ。私が張った障壁を強化すれば良いのよ」
「簡単に言ってくれる。カノン姉の仲間も協力させろ。それと、あれをどうにかしろ」
「えぇ良いわよ」
もう1人のショウキは消え、教祖カノンの部下を守っていた障壁が消えた。
「あなた達も手伝いなさい。《世界》いるわよね?」
「はっ!遅くなり申し訳ありません」
「ハァハァ、や、やっと出られたぁ」
自分の世界に閉じ込めたはずが、《世界》と《隠者》の2人は脱出出来たようだ。
「聞いてた通りだ。お前らも手伝え」
「手伝わない者は後でお仕置きね?」
みんな目を瞑り集中し、精神を活性化させる。失敗は許させない。【神の手】が当たるギリギリまで、集中する。
「今だ!天秤宮の聖剣ライブラ【重力剣】全開放」
「土の聖槌アバンダンティア【断崖の城壁】」
「ムッフフフフ、仕方ありませんねぇ。最硬度【星盾】展開」
「教祖様の命令がなけりゃ貴様らを見捨ててるわ【命令:技術強化】」
「お姉ちゃんが無事、クルミも頑張る【武器庫】展開。機械砲を障壁上部に設置。チャージ完了……………発射」
「我が主の命により手伝いましょう。【時間圧縮】」
「たくぅ仕方ないわね。勘違いしないでよね。教祖様の命令だから仕方なくよ【影膜】」
「土の聖棍ニョイボウ【百棍乱舞】で障壁を支える」
「ワタシもいるわ【精霊王の樹】」
「ハァハァハァハァ、オレもいるぜ。風の聖斧ヴァイキング【防斧壁】」
敵味方関係なく、教祖カノンが張った障壁を強化や別に違う障壁を張ったりと幾重にも張り巡らせ要塞化となった。
その障壁に、とうとう【神の手】が衝突した。メシメシと音を立てながら迫って来る。
「もっと腰を入れろ」
「やってるわよ」
「流石は勇者の奥義の1つ。半端ないわね」
「おい、カノン姉も何かしろ」
「もう私に何もやれる事はないわ。国全体を覆って、疲れちゃった」
そうだった。カノンは自分の仕事が終わったら即座に帰るような性格だった。それでいて、自分の興味がある事には、とことん取り組む、そんな女だった。




