SS12-6盾の勇者=教祖〜盾vs斧&槌〜
「吹き飛べぇぇぇ」
タケヒコの【風刃根】を防御するが、足が地面から離れつつある。これは私にダメージを与えるための攻撃ではない。土壁を壊したからには一見激しく見えるが、次の攻撃に繋げるだけの布石。
「行ったぞ」
地面から足が離れては踏ん張りが利かない。それに吹き飛ばされた先には槌の勇者サクラが待ち構えている。
「来た来た。雷の聖槌ミョルニル【トール・ホームラン】」
「くっ」
サクラは振り被り盾を構える教祖カノンを打った。ガコンと鈍い音を鳴り響かせながら、飛んで行く先にショウキが待ってましたと聖斧マリアを構える。
「最後は任せろぉぉぉぉぉ」
「くっ………【パーフェクトガード】」
何とか技術を絞り出し基本的な防御技術で身を固めた。どれくらいダメージを軽減出来るか不明だが、やらないよりはマシだ。
「喰らいやがれ。風の聖斧ヴァイキング【螺旋一斧斬】」
振り降ろされた聖斧から発せられた極大な風の刃に防御技術を持ってしても押し潰されてしまいそうだ。
「ぐっ…………盾の勇者を舐めるなぁ」
ハァハァハァ、さっきからおかしい。身体が重く感じるし、技術の発動する時間と出力の出がいつもより悪い。
これが鎖の勇者が残した呪いの効力か?甘くみていた。動けない訳ではないが、これ程の強力な呪いは教祖カノンは知らない。
「やはり盾の勇者なだけはあるな」
「めちゃくちゃ硬いよ」
「チッ、あれで切れないとか巫山戯てる」
「あんな攻撃をやってて良く言うわ。巫山戯てるのはそっちよ」
今だに呪いによる技術や身体の不調を強く感じるが、徐々に慣れて来た。
今の現状、呪いを解く事は出来ないが、普段と遜色ないパフォーマンスを、ほぼ可能になってくるはずだ。だが、イライラする事には変わりない。
「盾が最強の武器なのよ。それを今から証明してあげる」
「盾が最強の武器?」
「最強の武器は斧だ」
「そこ張り合うところ?」
戦いに大切な事は何だと質問されたら私はこう答える。防御こそ大事だと。いくら攻撃されても耐え抜いて、反撃の狼煙を挙げる時を待つ。殺らなければ勝ちなのだ。
だからこそ、盾が最強なのだ。盾こそ無敵、盾に敵うものなし。
「これが盾の戦い方よ【反転:腕力】」
防御極振りなステータスで戦ってこれた理由の1つは、この技術にある。防御を他のステータスに好きなだけ割り振る事が出来る。
「先ずは30%と言ったところかしらね」
外見は変わり映えしない。筋肉が特段ムキムキに増強した訳ではない。だが、オーラというか教祖カノンが数倍大きく見えるような錯覚を3人共見ている。
「これで3人目ね。行くわよ、ショウくん」
「来い!迎え討つまでだぜ。【風林火山:侵略すること火の如く】」
聖盾ムーンローアを装着してる右腕を振り上げ右拳を叩きつける。炎を纏った斧と何の変哲もなく見える拳がぶつかり合う。
何の知らない者が見れば炎を纏ってる斧の方が勝ると思う事だろう。だが、現実はどうだ?
「びくともしないだと?!」
「それで力を入れてるのか?」
互角…………いや、教祖カノンの方が押している。3人の連携が決まった時の怠さはまるでない。
「どうしたの?それでも男だとは笑っちゃうわ」
「なんだと!こんのちくしょー」
「そうそうやれば出来るじゃない…………のよ」
私のディスりにショウキも押し始めた。流石は勇者のパワータイプの2強と言われるだけはある。
だが、本来防御特化である私にパワーで押し切れないのはヤバい。30%で互角近いとなると、もうショウキの強さの底が見えている訳だ。
まぁ私の防御が強過ぎるのか。私の防御30%をパワーに振ってるのだから。そりゃぁ、私の方がパワーが上となるのは必然的になる。
「だけどね、もっと腰を入れないダメじゃない。直ぐに殺られちゃうわよ?」
でも、それでも弱い。何らかの奥義ならまだ勝ち目はあったろうが、出し惜しみしてれば勝てるものも勝てなくなるのは当たり前。
「まだまだ本気じゃないでしょ?」
「グギギギ」
「はぁー、とんだ検討違いだったかしら?っね」
「グホッ」
もう良いや。壊れてもまた新しい勇者で遊べば良いだけ。勇者が死んでも代わりの勇者が何処かで召喚される。
それに、斧の勇者よりも後ろの二人の方が幾分か楽しそうだ。




