SS12-5、盾の勇者=教祖〜人間道その2〜
私には被弾するもサクラには1つも命中していなかった。運良く外れた?いや、無作為に放った様に見えるが私だけを狙った鎖。
「ふぅ、危ない危ない」
サクラの方は、それを分かってない様子。だが、もし本当に無作為に放たれていてもサクラの身体能力なら避けられていただろう。
私は鎖を被弾したが大した傷じゃない。激しい割には掠り傷程度だ。こんなの大した事はない。
【苦しみの相】
また頭に何か聞こえた気がする。
「グハッ、これは毒?いや、これは」
苦しみ―――――物理的な身体を蝕む毒の類ではない。精神や魂にダメージを与える類の攻撃。
そう、毒というよりは呪いに近い。先ずポーションや医者では治せない。呪いの専門家、呪術師に見せるしかない。
「やってくれるじゃないの」
だが、そこまで強い呪いじゃない。死の呪いなら一発アウトだが、これは常に苦しいという程度だ。まぁ常人ならその場で倒れるレベルだ。
だが、勇者は精神的にも耐性を持ってるため倒れる事はないが嫌な事には変わりはない。
耐性がある故に微小なダメージが入り続ける、常に病気の治りかけに感じる怠さを感じ続けてる、そんな感じだ。
「あーっ、もう鬱陶しい呪いじゃないのよ」
あーっ、もうイライラする。
イライラしながらも2回頭に聞こえた声を思い出す。その声が聞こえた後にサンドラの技術が発動した風に見えた。
確か1つ目の【無常の相】で、こちらの技術を無効化にし、2回目の【苦しみの相】で、呪いを与えられた。
それと人間道の厭離穢土には3つの相があったはずだ。
残りの1つは、【不浄の相】。それがどんな効果を持つのか不明だが、厄介この上ない事には変わりないはずだ。
何故なら、勇者のシリーズ系の技術だからだ。どれもこれもシリーズ系は強力だが…………強力な分性格が悪い。
教祖カノンのシリーズ系である”タロットカード“も例外ではない。良い意味でも悪い意味でも。
「あーっもう、最後の【不浄の相】も耐え抜いて見せるから早く出しなさい」
3つある内、2つを見たから残りの1つも見たいと思うのは、何でも手に入れて来た教祖カノンの性。
「アグッ……………もう、既に見せている」
「サンドラ無事なのか?!」
「無事とは…………言い難いけど命に別状はない」
フラフラと今にでも倒れそうなサンドラ。もう体力は限界を超えており、最早倒れぬという意思だけでもってる他ならない。
「もう既に見せてるって、どういう事?」
この私が見逃していたっていうの?それはあり得ない。教祖である私が見逃すなんてあり得ない。一体何処で使ったと言うの?
ふと、私は違和感を感じる。何故、サンドラは血塗れなのか?あんなに血塗れになる程、私は攻撃をしていない。
「人間道は、ワタクシの持つシリーズ系の中で最も醜い技術。使う代償として【不浄の相】を自分自身に掛ける事」
「自分に掛けるですって?」
そんな痛い想いをして、やり遂げたのは私に大した事のないイタズラ程度の呪いを付与させた事だけ。
リスクの方が明らかに高過ぎる。一歩間違えれば、血の流し過ぎであの世行きでもおかしくない。
そんなデメリットが高い技術を使うなんて、バカと言うしかない。いや、もしも私が同じ立場なら使っていたかもしれない。
「ワタクシのやる事は終わった。悔しいけど、後はみんなに任せる」
「あぁ任せろ」
バタッとその場にサンドラは倒れた。タケヒコが受け止め、弓の勇者兼森精族であるアーシュリーに任せた。
森精族なら全快は叶わずとも回復をさせられる。それに守り抜く事に強い。
「任せられたからには必ず勝つぞ」
「おうよ、任せろ」
「アタシも行くよ」
「今度は3人か。面白いじゃない。格の違いを見せつけてやるわ」
サンドラがくれたチャンスを無駄に出来ない。サンドラの呪いが確実に教祖カノンを弱らせている。
サンドラの回復兼護衛のアシュリー以外の3人で教祖カノンと第2ラウンドの開始だ。
「風の聖棍オシリス【風刃根】。これは防げるかぁ」
「ふむ、【アースウォール】風属性なら土属性が一番」
「甘いぜ」
瞬く間に聳え立った土壁にタケヒコが根を突いた。普通なら風の勢いは止まり、土壁にヒビも入らないはずだった。
ビシビシ
「おらぁぁぁぁぁ」
「なんと!遠心力で貫通力を上げたか」
それも勢いが全く落ちていない。土壁で防げると思っていきら回避が間に合わない。仕方なく聖盾ムーンローアで防いだ。




