SS12-4、盾勇者=教祖〜人間道〜
「後ろの奴らは良いの?」
「こんな楽しい事を他の奴らには任せてやらない。私が独り占めしたいんですもの」
「そう、後悔することになる。みんなはサポートをお願いする。ワタクシに巻き込まれないようにお願い」
「「「了解」」」
最初は、1人で殺る積りであったが強い。本当は使う積りは無かったが、とっておきの技術を使うしかない。
「人間道の聖鎖―――――!!」
グハッ、痛い痛い!他の聖鎖と比べるもなく全身に痛みが走る。鎖が全体に幾重にも巻き付き、まるで聖鎖自体に身体を常時食べられるみたいだ。
だが、それを代償として引き出した力は絶大。見た目が醜くなるが、そんなの関係ない。
「【厭離穢土】発動」
これを発動した瞬間、サンドラは意識を手放した。サンドラが認識した敵を殲滅するまで止まらない。
『ガルルルル」』
「これでは猛獣ではありませんか。はぁ〜、詰まらない事するのね」
『ギャォォォォォォ』
意識を手放したら楽しめないではないかと心底教祖カノンはガッカリしてる。戦いは、お互いが意識を持って殺ってこそ楽しいと考えてる。
これでは、魔物退治と何ら変わらない。折角の勇者同士の戦いが出来ると思ってたのに。
「サンドラさん!」
「今のサンドラに手を出すな。言われた通りにサポートに回るぞ」
今のサンドラを戻す手段が不明な今、無闇に近付く訳にはいかない。だが、サンドラが今の現状を打破するような予感がするタケヒコの野生な勘が訴えてる。
『ギャオ』
「うんうん、速度が上がってる。暴走と化してリミッターを外したからかしら?」
それに暴走した割には動きが読み辛くなってる。それと接近戦だけと思いきや、鎖も使用してきて緩急を付けており、まるで獣のはずなのにプロの格闘技選手と戦ってる気分になってくる。
「甘いわよ。【反射鏡Ⅲ】」
【反射鏡Ⅱ】が相手の魔法や技術のエネルギーを貯め一気に返すのに対し、【反射鏡Ⅲ】は、そっくりそのまま技を跳ね返す。よって、鏡状となった聖盾から鎖が十数本出現しお互いの鎖がぶつかり合う。
いや、そうなるはずだった。
「なっ?!これは!」
【無常の相】
そう、教祖カノンの頭に響いた気がした。
お互いの鎖が、ぶつかり合う端から教祖カノンの鎖が砕かれて行く。その一方で、サンドラの鎖の勢いは止まらない。そう最初から教祖カノンが放った鎖が無かった風に迫ってくる。
「くっ…………」
盾の勇者らしく防御するべきか?それとも回避するべきか?勇者内で随一の防御力を誇る。こんな鎖に傷付けられる程に柔じゃない。
そう本来ならば。それが聖武器の鎖で且つシリーズ系の技術を発動してなければ容易に防御出来る。
先程のこちらの鎖が一方的に砕かれたところを見ると、他の防御の技術を使っても突破される可能性がある。
よって、回避する選択肢を取る。避けられないような速度ではない。鎖の隙間を縫うように身体を入れていく。
「ふぅ、危ない危ない」
「こっちもいる事、忘れないでね」
回避したところに待ち伏せしてたのは、槌の勇者サクラであった。まさか、暴走と見せ掛けて自我はハッキリしてるとか冗談は止めて欲しい。
「雷の聖槌ミョルニル【雷神槌】」
「ちっ………【金剛】」
バチバチバチバチ
雷を宿した槌と宝石ダイヤモンドの盾がぶつかる。アグドでは、あんまり知られてないが、ファンタジーな鉱石を除けば、ダイヤモンドはトップレベルでの硬度を持つ鉱石だ。
その結果、バキンとサクラの方が打ち負けた。上部に腕ごと弾かれ腹部ががら空きだ。その瞬間を見逃す程、教祖カノンは優しくない。
「ほら返すわ【反射鏡Ⅱ】」
「しまっ――――――」
サンドラの鎖とサクラの雷エネルギーを一気に放出する。ケンゴに放った比ではない。だから、反動により教祖カノンも踏ん張りが効かず、幾らか後退してしまう。
「凄まじいわね」
「ゲホッ」
まともに受けたサクラは、全身焦げて煤で汚れてるだけで無傷に近い。
「チッ…………巨人族のタフさは厄介だ」
「ゲホッゲホッ、もう痛いわね」
「ウソつけ」
『ガルルルル』
サクラごと、教祖カノンに鎖の雨が降り注ぐ。全部は回避仕切れずに、いくつかは聖盾と腕・足に被弾してしまう。




