SS12-2、盾の勇者=教祖〜盾vs銃&鎖
「《戦車》、迎えに来たわよ」
「えっ?教祖様?」
「えぇそうよ」
どうやら《戦車》は、私に気付いていなかったようだ。いつも側にいる姉がいないから無理もない。
「教祖様ぁぁぁ、お姉ちゃんがお姉ちゃんが」
「安心しなさい。今、《世界》が迎えに行ったから。今直ぐに会えるわよ」
「本当?!」
「本当よ」
泣きじゃくったり笑顔を見せたりする《戦車》を見ると1人の可愛い女の子にしか見えないから不思議だ。
ガキン
「もう酷いじゃない。今、この娘を慰めてる途中なのに。タケちゃんったら、お姉さんも怒るよ?」
「五月蝿せい。どの面を下げて俺達の前に現れやがった。カノンの姉さん」
不意打ちながらも根の勇者であるタケヒコの一撃を盾で防ぐ教祖カノン。
「今は戦う気なんてないのよ。この子らを迎えに来ただけなの」
「はいそうですかと帰すと思っているのか?」
「うーん、思ってないわ。そっちこそ、私に勝てるとでも?」
満面な笑顔から殺気全開の獲物を狩るような暗い瞳でタケヒコを睨む。勇者であるなら誰だって修羅場をいくつも乗り越えて来たものだ。
だが、どんな修羅場を乗り越えていようとも教祖カノンの殺気は異常だ。タケヒコの手元が、ガタガタと揺れている。
「うわぁぁぁぁぁぁ」
バンバンバンバン
「おい、ケンゴ止めろ」
教祖カノンの殺気に負け、タケヒコの静止も虚しく銃の勇者であるケンゴは、銃を教祖カノンに向けて連射した。
だが、冷静でない弾などに当たる教祖カノンではない。完璧に見切り、銃弾の雨の中を涼しい顔で進んで行く。
「ダメじゃないケンちゃん。そんな冷静を欠いてはダメよ」
「〜〜〜〜〜!!」
一発も当たらずに教祖カノンは、ケンゴの直ぐ目の前まで来ていた。
「ケンちゃん返すわ【反射鏡Ⅱ】」
ケンゴが放った弾を、タダ避けていた訳ではない。弾のエネルギーを盾に回収しながら進んでいた。それを一気に解放させた訳だ。
「ウギャァァァァ」
「ケンゴ!」
「もう急に撃ってくるんだもん。こっちだってやり返すしかないじゃない。私達は、タダ退散したいだけなのに」
「こんな現状で、それを許されると思ってるのか?」
国中の建物は壊され、国民達もいくらか犠牲になってる中で、この現状を起こした敵を『帰りたいから』と言われて、はいそうですかと行く訳がない。
それでは、国のメンツが立たないのと犠牲になった者達への示しがつかない。それに、教祖カノンは元々いた地球でもかなりやらかしてる。それも国際指名手配されるレベルで。
「カノンさん、何でだ?昔は、あんなに良くしてくれたのに」
「カノン姉ぇ、昔のカノン姉ぇに戻ってよ」
「あら、ショウとサクラも久し振りね。昔も今も私は変わらないわ。タダ子供の頃は色々実行するだけの力が無かっただけの事よ」
そう子供だと知識・体力・筋力・金銭面などなど年齢が足枷になって出来ない事が多い。
だから、それらが足枷にならない程度の年齢になるまで待った。待ち続けた。
今まで学業成績が優秀で、大学卒業してから様々な企業を立ち上げ、世界中から期待されていた娘が、いきなり国際指名手配犯になっても昔から知ってる知り合いは全員こう言う。
『あんな事をする子じゃっなかった』と……………。
「貴様が全ての黒幕か!」
「アナタは初めて会うわね。鎖の聖武器…………そう、アナタが《死神》が言ってた娘ね。唯一成功した実験体だと喜んでいたわ」
「貴様ぁぁぁぁぁぁ!【鎖拳】」
「あら?ダメじゃない。折角のリーチを活かさなきゃ」
スカッ
教祖カノンがカウンターを決めようとしたが、空を切っただけでサンドラには当たりはしなかった。良く見ると、サンドラの背中から鎖が延び紙一重で止めている。
「喰らえ!水の聖鎖ヒュドラ奥義【多頭の水鎖蛇龍】」
「意外と冷静じゃない」
ドガッグシャっガラシャン
「やったか!」
土煙で良く見えないが、あの近距離では命中してるはず。防御しようにも勇者の奥義を生身で受けてタダで済むはずはない。
「でも、ダメよ。そんな距離では、本来の威力の1/3も出せないわよ」
「ウソだろ?!」
土煙が晴れた後の光景が信じられない。あんな近距離で命中したはずなのに教祖カノンは無傷であった。




