227食話、夢の世界その2
「それで、君はサクラの何なんだね?」
「何とは?」
「こ、ここここ恋人と聞いているのだ」
「ぶほぉっ!ゴホゴホ」
汚なっ!くノ一女が盛大にお茶を吹き出した。近くにいた俺は避けるが、目の前の席に座ってた父親は顔面に、もろ浴びていた。
「あっ、父さんごめん。剣の勇者カズトが避けるからだろ」
「俺が壁になれって事か?御免蒙る。何で、俺が受けなきゃならんのだ」
そもそもコイツの父親が変な質問をするからだ。俺には、嫁が4人いるのだ。動揺する方がおかしい。
「ゴホン、それで答えだがNOだ。俺には嫁がいるのでね。コイツとは、タダの友達だ」
もし、浮気でもした暁には死ぬよりも凄惨なお仕置きが待ってる。想像するだけでも恐ろしい。
「そ、そうか。それもそうか。カッハハハハ、サクラに恋人なんてと思ったが」
それ以上言わない方が良いと思う。女性に対して禁句とされるのが、何処の世界でも変わらないようで、それは年齢と適齢期だ。
「父さん(怒)」
「ヒィッ!な、何をそんなに」
「あらあら、お父さんったら、サクラに恋人が出来ないと思っているのね。サクラにも素敵な人はきっと見つかるわ」
チラッチラッと母親がこちらを見て来る。そんなに期待されても無理なものは無理だ。了承したら、こっちの身が危ない。
俺は、ズズーッとお茶を飲み素知らぬ顔をする。
「お母さんも!もう知らない」
バタンとくノ一女は出て行ってしまった。取り残された俺は、どうすれば良いんだ?くノ一女の両親に挟まれ、ここが自分の世界でも気不味い。
「あらあら、どうして怒ったのかしら?」
「と、年頃なのだろ」
もう年頃という時間は通り過ぎたと思うが、これをくノ一女の前で口にしたら怒られるのは目に見えている。
チョイチョイ
「うん?なんだ」
チョイチョイ
「おい、くノ一…………サクラ突っつくの止めろ」
腰当たりに指先で突っつく感触が、むず痒くて、たまらず振り返ったが背後に誰もいない。
「お兄ちゃんはだーれ?」
「…………?!」
まだ3歳くらいだろうか?首を傾げる女の子がいた。何処か《戦車》の面影を感じる。
くノ一女を幼くしたら、目の前の女の子みたいになるだろうか?それなら、もっと可愛味があって良いと思うのだが、まぁ妹ラブな時点で、それは無理か。
「俺は、カズト。君のお姉さんの友達だ」
「カズト…………お兄ちゃん?」
「そうだよ」
指先を咥えながら何かを考える素振りを見せる事、数秒後。二パァーっと太陽みたいな眩しい笑顔を向けられ一瞬キュンとなってしまった。
別にロリコンじゃないよ?
「カズトお兄ちゃん、遊ぼう」
「いや、俺は」
「クルミの事嫌い?」
目頭に涙を浮かぶ様子を見ると断われきれない。父親母親もこちらをジーーっと見詰め無言の圧力が乗し掛かる。
「うっ………分かった。俺と遊ぼう」
「やったー」
どうして、幼い子はこうも切り替えが早いのか謎だ。俺は、幼い《戦車》に手を引かれ外に出た。
そこにはシートがひいており、手作りあろうオモチャが無造作に置かれている。
「何して遊ぶんだ?」
「えーっとね、おままごと」
おままごとをするなんて何年振りだろうか?まだ、幼かった頃にリンカと思い出したくもないがカノン姉とした記憶がある。
そして、何故か俺が奥さん役でカノン姉が旦那役でリンカがその子供役であった。
そこまでは良い。カノン姉は形から入る質で自分の服を俺に着せて女装を強要してきた。それがトラウマとなっている。
「クルミが奥さん、カズトお兄ちゃんが旦那様」
「わかった」
幼いクルミは、カノン姉より全然常識を持ってるようだ。俺は、そんな事にホッと胸を撫で下ろし了承した。
それで、俺は一旦シートから離れクルミが見えない位置まで移動し、仕事から帰って来たフリをする。
「ただいま」
「おかえりなさい。あなた。二パァ」
クルミの満面な笑顔に、またもやキュンとときめいてしまう。本当に、俺が戦ったクルミなのか?最早別人だと思ってしまう。
「ご飯にする?それかお風呂?それともク・ル・ミ?イヤン」
幼いのに何処で、そんな文言を覚えて来たのか謎すぎる。自分で言っておきながらクネクネと赤面しなが身体をくねらせては、こっちをチラチラと見て来る。
「ご飯を頼む」
「チッ…………はい、お待たせ。ご飯です」
今、舌打ちしたよね?それに何やら不機嫌な様子だ。あの笑顔にキュンとした俺のトキメキを返して欲しい。




