225食目、剣の人形
勇者が持つというシリーズ系と呼ばれる系統の技術郡。各々で違うユニークな技術ばかりで、どれも絶大な能力を有する。
カズトのシリーズ系は黄道十二星座、勇者パーティとして一緒に活動しているミミもまだ全貌を把握していないと内心思っている。
「カズトが頑張ってるから、ミミも取って置きを出す」
ガサゴソ、テッテレーン
「模倣人形」
模倣人形とは、ミミが作製したミミコレクションと呼ばれる魔道具の1つ。
「ここにカズトの髪の毛を入れると、あら不思議カズトのソックリさんが出来上がり」
掌サイズの木製ぽい人形の口元にカズトの髪の毛一本をグイグイと押し込み、それから数秒後見る見る内にカズトと瓜二つな人形に変化した。
「これならカズトが消えた事バレない」
「でも、これ人形なのよね?」
「そうだ!人形なんかにカズトの真似なんか出来るはずも」
「俺がどうした?」
「「喋った!!」」
まさか話すとは思ってなかただけに抱き合うように心底2人は驚いた。そう、これはミミが作った魔道具。ただの魔道具な訳がない。
髪の毛じゃなくてもDNA情報を獲得出来る身体の一部さえ、ほんの少し入れて挙げればDNA本人に変身し、動きや話し方にクセなんかも完璧に真似というレベルではなく、最早本人としか見えない。
「もう1つの模倣人形にレイラの髪の毛を入れて」
カズトの人形のようにレイラの髪の毛を入れると、見る見る内にレイラへと変化した。何処からどう見てもレイラ本人である。
「ここはスタッフルーム?私を見詰めてどうしたの?」
声色・仕草・身体付き、どれをとってもレイラ本人しか思えない。
「人形本体は、本人と完璧に心の奥底から認識してるからボロが出る事はない。むしろ本物とすり替わっても分からないかも?」
これで店からカズトとレイラの分身が消えた事は、ここにいるメンバーしか知らない。バレる事はない。
(カズト、お店守るから絶対に戻って来て)
天井を仰ぐように内心で願いを込めた。
場所は戻り、《隠者》の影の中。双児宮の聖剣ジェミニを解除したカズトは目を瞑り集中する。
「ふぅー、今から格の違いっていうものを見せてやる」
「なによ、ここから出る気?そんなの不可能よ」
《隠者》は暗くてカズトには見えないが冷や汗で焦る。ほんの数時間前に破壊され、ダメージが跳ね返ってきたのだから。
また破壊でもされたら面目が立たない。そうなれば自信がなくなっちゃう。
「出る積りはない」
「なら、どうする気よ」
「こうするのだ。白羊宮の聖剣アリエス奥義【夢の世界】発動」
そう叫ぶと、カズトが持つ聖剣から眩い光が、暗闇しかない世界を包み込む。
「ギャァァァァ、目がぁぁぁ目がぁぁぁぁ」
まぁこんな暗闇で光度が高い光を喰らえばそうなる。俺は予め瞳を瞑ってたお陰で目潰しは、ほぼ喰らってない。
そして、眩い光が収まった時、緑溢れる大地に小規模な村がある光景と変貌したいた。ポツポツと家が建ち並び、住民達の声が響き渡る。
俺は両目を押さえ転がってるくノ一女を置いて姿を隠す。この光景が何なのか俺には分からないが、さぞ驚くだろう。
何故なら、ここはくノ一女にとって何か心の奥底にあるはずの景色なはずだから。
「剣の勇者め。一体何を…………??!!はへっ、ここは!」
思わず予想外な風景に驚きを通り過ぎて変な声を出してしまった。周囲を見渡すも聖剣の勇者は何処にも見当たらない。
「逃げたか?それにしてもこの場所は…………」
最早、茫然自失となるしかない。何故なら、ここは自分と実妹とであるクルミと一緒に産まれ育っだ村そのものであったからだ。
間違えるはずがない。記憶の片隅に追い遣ったはずの風景が目の前に広がってるのだから。
この匂い、風の感触、知り合いであろう者達の声、自然と涙が頬を伝い落ちる。
「あら?サクラ何してるの?」
《隠者》は、その声にドキッとした。あり得ない。その声の主は、《隠者》が幼い頃、まだ《隠者》でなかった子供の頃に死んだはずだ。
《隠者》と《戦車》2人の母親の声であった。この村が存在してるなら、もしかしてと思っていたが。
「お母さん!」
思いきって振り返ると、やはり母親の姿がそこにあった。




