216食目、シロの助け
「ここは何処だ?」
カズトが目を覚めると、そこは真っ白い空間であった。自分は確か、《戦車》と戦って逃してしまったが勝利したところまでは覚えてる。
身体にはダメージはすっかり無くなっており、むしろ《戦車》と戦う前よりも元気なくらいだ。
『やっと目が覚めたか』
「シロ様!」
シロがいるという事は、ここは神界か。相変わらず真っ白な空間で、シロが鎮座してるテーブルと椅子しか存在しない。
『妾が助けてやったのだぞ。感謝するが良い』
「ありがとうございます。感謝しております」
『うむ、それで何かないのか?』
うっ…………やはり、タダで助けた訳ではないか。何かあったかなとアイテムボックスの中を探る。
一応、勇者をやってる傍ら料理人なので一通りの食材と料理道具は入れてある。
「うし、今作りますので少々お待ちください」
『はよぉ、するのだ』
ちょうどアイスのボックスの残りがあった。これで、あれを作ろう。
細長いグラス状の容器に、先ずはコーンフレークを敷詰め、その上から生クリームを絞り込む。
生クリームの上に薄くスライスしたイチゴやリンゴ、ブドウにブルーベリーを生クリームと交互に層になるよう敷き詰める。
容器からはみ出る寸前まで積み上げたら、てっぺんにバニラアイスを乗せ、その周囲に生クリームを一周、果物をこれでもかって位に乗せたら完成。
ゴトン
「お待たせしました。フルーツパフェでございます」
『これは見事な美しさ』
生クリームと果物の層が宝石のように輝き食べるのが勿体無い程に芸術性を高めている。
『では、頂こう』
スプーンで生クリームを一口パクッと口に含む。
『やはり、生クリームは最高。雲のようにふわふわとしながらも絶妙な甘さで頬がとろける』
毎回美味しそうに食べる様子を見ていると、こっちまで幸せな気持ちになってくる。そして、俺も食べたくなってきた。
「甘味は、あんまり得意ではないが」
前世でパティシエの修行をやっていた頃、嫌になる程に味見をしたものだ。たが、久し振りに食べると美味しく感じるのは何故だろう?
他の料理なら今でも十二分にやってるが、苦手な事もあり甘味に関しては俺の嫁達に一任している。
「こんなに美味しかったのか?」
ボソッとシロに聞こえない音量で、つい口に出た言葉が自分でも信じられなかった。
『貴様も食べてるのか?うん?なに泣いてるのだ?』
「えっ?」
自分の頬を触ると濡れていた。なんで涙が流れてるのか理解出来ない。別に悲しいとか嬉しいとか思ってないはずなのに。
『そんなに美味しかったのか?カイトは、変なヤツだな。自分で作ったもので泣くとは』
久々で忘れていた感覚。子供の頃は、お菓子が大好きで良く母親がクッキーを焼いてくれた。
自分の誕生日には、店のケーキではなく母親自身がスポンジから生クリームまで自作したものであったのを覚えてる。
けして店のケーキと比べると見栄えは良くなく、味も素人に毛が生えた程度。だが、母親のケーキは美味かった。
「そう…………ですね。変ですね。自分で作って自分で泣くとは」
自分が料理人を目指す切っ掛けを今になって思い出すとは。というより、最初は洋菓子を作るパティシエを目指していたはずなのに、何処かで甘味に苦手意識を持つようになり、今の俺がいる。
これからは、自分でも甘味を味わおうとするか。こんなに美味しいものを避けていたなんて人生を損してしまう。
『もっと無いのか』
「はいはい、今度はチョコレートパフェにします」
シロがフルーツパフェを食べ終わり、お代わりを要求の声。カズトは、シロの声で切り替え次のパフェを作り出した。
パフェは、グラスに入れるフルーツやアイスによって様々な形や味に変貌を遂げる。
フレークと生クリームを入れるところまでは同じ。チョコレートに合わせるフルーツはバナナに決めた。
チョコバナナがあるようにバナナはチョコレートとめちゃくちゃ合う。
生クリームの上に薄く切ったバナナを並べ、その上からチョコソースを回し掛ける。また、生クリームを乗せるの繰り返しで、最後にチョコアイスとチョコブラウニーを刺し出来上がりだ。
『これもまた芸術的に美しい。どれ食べるか』
チョコブラウニーを口に含んだ瞬間、声にならない奇声が響き渡る。チョコレートを嫌いな人なんて少数派だろう。
シロも例外なく、チョコレートの美味しさに歓喜を表してる。まぁシロのは特別に砂糖の割合を増やした物を使っている。




