214食目、斧&槌vs《教皇》再びその3
『こ、これは?!』
この辺りが暗くなった原因は、細かい砂が大量に浮かんで屋根のように街を守っている。
上空へと放った肉塊を全て弾いてる。それも弾いた肉塊を街へ落とさないよう砂が意思を持つように包み込み吸収してる。
『畜生ぉぉぉぉ』
《教皇》は、肉塊の雨から攻撃方法を変え、前方に十数本の角を生やしエネルギーを溜める。
『これでも喰らいやがれぇぇぇ【闇収束砲】発射ぁぁぁぁ』
あれをまともに喰らったら街もろとも灰燼に帰してしまう。だが、まだ発動中の【風林火山:動かざること山の如し】がある。これは絶対防御に等しい防御力を発揮し、今まで誰にも破られた事はない。
屋根になっていた砂が意思が持つように移動街とショウとサクラの二人を守るよう《教皇》の間を仕切り、砂の盾となっている。
だが、発動中名前の通りこの場から動けない事がネックだ。
「破れるものなら破ってみろ」
『まだこんなものではないわぁぁぁぁ』
更に角を増やし闇のエネルギーの出力を増大する。力業で、どうこう出来るものではないのに、がんばるものだ。
この場を動けないショウは、何事も無かったように涼しい顔をしながら見事に受け切る。
「こんなものなのか?」
『……………ニヤっ』
《教皇》が口角を上げるが化物過ぎて端からだと判別出来ない。ショウとサクラも茫然自失になったのだと油断した。
それから、ほんの数秒後、地面が揺れたと思いきやショウが居た場所には穴が開いており、ショウはいなかった。もう少しで、サクラも巻き込まれるところであった。
『グッアハハハ、奥の手は最後まで取っとくものよ』
「貴様ぁぁぁぁ、ショウを良くもぉぉぉぉ」
何が起こったのか?サクラには分からなかった。地震が起きたと思ったらショウは既にいなく、深さ数十m以上はあると思われる穴が、サクラの隣に開いていた。
「また何かが…………来る。下か!」
地鳴りが近付くと同時に横へ飛んだ。現れたのは、ワーム。それも《教皇》が最初に召喚したものよりも数段太くて長い。それよりも注目べき箇所がヘビや魚みたく鱗が、びっしりと胴体を包んでいる。
ショウは、これに巻き込まれるたのか?!技術の副作用で身動きは出来なかった。避ける術は無かった。
『ぐっふふふふっ、これぞヘル・ワーム。ドラゴンの爪や牙をも弾き返す唯一のドラゴンの天敵となり得る魔物なのです』
「今から助けるから。待っててね、ショウ。雷の聖槌ミョルニル【雷槌】」
ヘル・ワームは図体がデカい代わりに鈍重のようだ。こちらの動きに着いてきてない。ただ的を大きくしただけの木偶の坊だ。
バチバチ
「これでお仕舞いよ」
ヘル・ワームの死角であろう背後に回り込み、渾身の一撃をおみまいさせた。
『ぎゃぉぉぉぉぉ』
ヘル・ワームは雄叫びを挙げるが、ただ鱗をほんのり焦がしただけだ。キズ1つもついてない。
「硬っ!ヒビすら入らないなんて」
『ビビらせやがって。殺れヘル・ワーム』
動くだけで地鳴りが起こる。周辺の建物なんか倒壊している。ショウが守った意味なんかまるで無いような惨状だ。
「これが《国喰い》と恐れられた魔物なのか」
サクラは1つの情報を思い出した。ヘル・ワームの別名だ。《国喰い》の名前の通りに国を丸ごと食べ滅ぼすという事からの二つ名だ。
そんな魔物に、どうやって立ち打ちすれば良いのか検討も付かない。
むしろ、これは国を捨て逃走すべき案だ。普通ならそうする。だが、今ここにいるのは槌の勇者であるサクラだ。
サクラは巨人族。個人差はあるが、種族名の通りに体を巨大に大きくする事が出来る。
そして代々、巨人族の勇者に受け継がれて来た聖武器:聖槌アメノハバツチもその影響を受けており、巨人族の勇者の体の変化に合わせて大きさを変える。
「ニヤッ、面白いわね」
『気でも狂ったのか?』
「おかしくなってないわよ。アタシの種族を忘れてないでしょうね?」
種族と聞かれ《教皇》は首を傾げる。聞くからには人間ではないのか?
槌の勇者の見た目は人間そのもの。斧の勇者は鬼人族であったが、その正体が分からない。




