表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/530

SS2-3 アリスのレストラン暮らし~寿司~

まだ体調は万全ではありませんが、どうにか更新出来そうなので更新致します

 カズトは転生前の時は頼んだ事ないが、シェフを家に呼んで料理を作って貰う━━━━出張シェフサービスだったり、ホテルでのサービスで部屋まで料理を運んでくれるルームサービス等々の仕事は、こちらの世界には存在しない。

 だが、爵位の高い貴族は住み込みで料理人を雇ってると聞いた事がある。なんとも贅沢な金の使い道である。


 そこでレストラン〝カズト〟でも試してみた。

 ルームサービスと出張シェフサービスを足して2で割ったような━━━名付けるならルーム出張サービスってところか。お客様の部屋まで赴き、目の前で料理を作って提供するサービスだ。

 でもまぁ、カズトが知らないだけで地球でも似たようなサービスがあるかもしれない。

 今回は試験的にシェールから来てる宿泊客のアリス様に試して貰ってる。


「客の部屋で料理人が調理するとは、まるで貴族になった気分じゃのぅ」

 アリス様は、貴女もシェールでは貴族ではないのですか?!と、突っ込みたい。


「シェールでは、お部屋で料理を作って貰う事は」

「ないのぅ。聞いた事もない。シャルはどうじゃ?」

「他の国では存知致しませんが、シャールではやりません」


 ふむ、この世界ではレストラン〝カズト〟が初めてなのか。頻繁には出来ないが、予約を取れば出来なくもない。


「今回のメニューは〝お寿司〟を握らせて頂きます」

 カズトの目の前には本格的な回らない寿司の調理台が設置されている。ガラスケース内には様々なネタが鎮座しており、宝石みたく輝いている。


「オスシとな?シャルは聞いた事あるかのぅ?」

「はい、シェールの古い文献に記してあるのを覚えてます。ご飯にお酢を入れかき混ぜ、適当な大きさに握り、その上に生の魚の切り身を乗せた料理だと記憶しております」

 うん、だいたい合ってる。ただ、魚だけではなく、貝や魚卵もネタとして使う事は書かれてないようだ。それに、そうそう素人では簡単には作れる品物ではない。


「ふむ、聞いた限り一見簡単そうに見える料理じゃな。何故、幻となっておるのじゃ?」

「はい、それは簡単そうに見えますが、一人前のスシ職人になるには修行10年以上掛かるとされてます。それに、幻の調味料の一つショウユを付けて食べるからだとも」

 あぁ~、これはまた説教になる予感がする。

 この二人は幻の料理や調味料に敏感で、積極的に使うカズトに対して最初の内は説教三昧であった。でもまぁ、最近は慣れからか緩和された感がある。


「な、なんじゃと!これを作るのに10年!しかも、またもやショウユを使ってるのか!」

「いえ、姫様。修行が10年です、作るのが10年ではありません」

「た、ただの言い間違えじゃ。それでも、修行が10年も掛かっては職人がいなくなって当然じゃ!しかもショウユを使っていてはのぅ。ギロリ」

「えぇ、仰る通りで………ギロリ」


 カズトは二人からとんでもない威圧感を感じた。冷や汗が止まらず、二人の視線が怖くて思わずソッポを向いてしまった。それでも、美味なものを出せば機嫌は直るだろう。

 だから、二人から視線を外し握る事に集中する。

 寿司ってもんは、ただ握っただけでは寿司とは呼べない。口の中に含んだ瞬間にご飯が解れネタととろけ合うかのようなハーモニーが企てるものだ。


「へい、お待ち。マグロの〝赤身〟だ。箸で食べても良いけど、寿司は手掴みで食べるもんだ」

「はしたないと思うが、それが食べ方と言うのなら従おうぞ。え~と、何て言うたかのぅ?」

「郷に入れば郷に従えですか?姫様」

「そうじゃ、それじゃ!では、頂くのぅ」


 アリスとシェルは両手を合わせ『いただきます』とお辞儀をした。カズトが教えた作法の一つてあるが、健気に守ってる。シャルが言ってたように『郷に入れば郷に従え』というやつだろう。


「これは!!前に食したオサシミテイショクとやらより美味やもしれぬ。シェールでも、ここまで美味な生魚は食べれぬ」

「えぇ、ホロリとご飯が崩れ………口に入れた途端に溶けたような」

「気に入ってくれまして、幸いです。では、次々といきましょう」


 マグロの〝赤身〟の次といったら〝中トロ〟や〝大トロ〟を味わって貰いたいが、冒険者時に貝や魚卵を食した事ないと思い出した。そこで寿司ネタの貝で定番の一つ〝ホタテ〟を提供する事に思い至った。

 ホタテを半分になるギリギリまで切り込みを入れたうえで広げる。こうする事で上手い具合にシャリに乗り、口に入れた直後も程好い弾力で旨いのだ。


「〝ホタテ〟でございます」

「これは………魚なのかや?」

「取り敢えず食べてみましょう」


 カズトの作る料理は、宿泊してから不味いものはなかったと知ってる二人は何の迷いもなく〝ホタテ〟を醤油を付け口に放り込んだ。

 日本人にとってありふれた食材の一つだが、魚以外の海洋生物を食材として見ないこちらの世界の住人では分からんだろう。相当変わり者でない限り食した事はまずない。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ