197食目、槌&斧vs《教皇》その3
『久し振りの女、食べるぅぅぅぅ』
「おい、来たぞ」
「分かってるわよ」
Sランク以上の伝説上の魔物であるマンティコア。サクラに向かって走り出し―――――いや、前へ跳躍してきた。
その勢いを殺さずにサクラへ突っ込んで来る。爪を突き立てサクラに突き刺そうとするが、聖槌:雨羽槌を盾にする形で、どうにか刺されずに済んでいる。
ガチガチ
「早くて重い」
『女の肉、食わせろ』
やはりSランク以上と言われる魔物だ。防御する体制を取るだけで、マンティコアの速度に瞳が追い付けていなかった。
「サクラ!」
「バカ!前を向け」
『キシャァァァァ』
「うおっ!」
「余所見はいけませんねぇ」
うへぇ、気持ち悪い。
巨大ムカデが襲い掛かって来た。反射で聖斧マリアで叩き切ってしまったものだから、ムカデの体液がベットリと相棒の聖斧マリアに付着してしまった。
「こっちは任せて。だから、そいつを捕まえるのよ」
「それは叶わぬ願いです。何故なら、まだ取って置きがあるのですから」
再び魔物を召喚しようとしてる。魔法陣を組むのに多少インターバルがあり、その隙に捕らえようとするが、他の魔物が壁となり辿り着けない。
「邪魔だぁぁぁぁぁ退けぇぇぇぇぇ」
「完成です。【召喚:合成獣】」
魔法陣が光り輝き、そこに立っていたのは腕や足全てを覆い隠す程に長い袖があるフリフリの衣服を纏った妖艶な女性であった。
「なんだい?旦那様、こんなところに呼び出して」
「ララ悪いが、あそこの勇者を倒してくれないか?」
「勇者だって?」
ララと呼ばれた妖艶な女性は、こちらを目を細めて見詰めてくる。ネットリとした視線にショウキの背中が、ブルブルと悪寒が走る。
ペロリ
「旦那様、あの勇者をアチキのコレクションにしても良いかい?」
「あぁもちろん」
ララという女性は、ここで倒さないと種族が撲滅されかねない。勇者の勘が、そう告げている。
「うぉぉぉぉぉ、炎の聖斧ヘルメス【爆弾斧回転投】」
業火を身に纏った両刃斧を、勢い良くぶん投げた。相手が動かなければ、当たっていた。
「クフっ、そんな分かりやすい攻撃が当たると思って?」
「おい、ララ後ろだ」
「えっ?」
「遅い」
ザクッドカァァァァン
回避したと思われた業火を纏った両刃斧は、弧を描くように返って来ると、ララの胴体を真っ二つにし爆発した。
爆発したと同時刻、もう一つの戦いは中々これといったダメージをお互いに与えられないまま硬直状態が続いている。
「いい加減にしなさいよ。風の聖槌フブキ【大気共鳴:斬】」
マンティコアがいる方向とは全く違うところを、宙を叩いた。まるで、そこに壁があるかのように甲高い音が鳴り響く。
この音がマンティコアの元へ近付いて行き、マンティコアの側にある岩が切れた。まるで鋭利な刃物で切断されたかのようにキレイな断面をしている。
「何で避けられるのよ」
『オデ、大気の変化、分かる。だから、避けられる』
「なら、【大気共鳴:爆】でどう?」
マンティコアが察知し回避しようとした。だが、もっと大きく回避すべきであった。
爆風に巻き込まれ、多少なりに火傷を負った。やはり点より線、線より面の方が攻撃は当て安い。
「どんどん行くわよ」
ドンドンドンドン
『うるさい。【猫爪】』
名前は可愛いが、3本の斬撃が飛んで来た。タダ真っ直ぐに飛んで来るだけではなく、いくらか操作可能のようで、ギリギリに回避した方向へ来た時には焦った。
「危なっ!」
斬撃が当たった建物は崩壊していた。いくらステータスが高い勇者でも悶絶する事だろう。
『早くオデに食われろ。【火炎玉】』
「なっ!魔法を使った!」
口元から炎の玉をクシャミをするように飛ばす。普通に魔法使いが使う【火炎玉】よりも速度が早く連射も可能らしい。
魔法が苦手な勇者からしたら羨ましい。
ガキンガキン
「そうだ、打ち返せば良いなよ。そぉれ」
野球のバットを持つポーティングで構え、打ち返した。本来の【火炎玉】よりも速度があると言っても所詮は【火炎玉】だ。
ソフトボールをやっていたサクラにとって、ほぼ止まって見える。打ち返すなんて造作無い。




