196食目、槌&斧vs《教皇》その2
「くっ!」
「なんて、でかさなの?!」
巨大ワームの出現により状況は一変。飲み込まれば、勇者だってひとたまりもない。
生きた年数と大きさで脅威度を変える魔物の一つであるワーム。
《教皇》が召喚したワームは、軽く見積もっても、おそらく100年は生きてる。ランクにしたらAランク、ここが砂漠であったなら気付いた時には、もう遅い。ワームの腹の中だっただろう。
「だが、スピードはそこまでじゃない」
砂漠の砂地なら抵抗もなく、あの巨体で速度が出せるが、ここは砂漠ではない。
ちゃんと整備されてる街道で土の密度が高く、土中を突き進むのに砂漠より抵抗がある分、速度が落ちる。土中に潜られる前に捕まえれば倒せるはずだ。
「拘束出来るか?」
「任せて。土の聖槌アバンダンティア【断崖の楔】。うおりゃぁぁぁぁ」
思いっ切り地面に振り下ろすと、ワームに向かって小さな地割れが発生し、ワームを拘束するように杭が何本も土中から生えてきた。
杭が邪魔でワームは土中に潜れないし、移動も出来ない。タダのデカい的と化した。
「おい!何をやってる。さっさと攻撃せんか」
《教皇》の【命令:攻撃】が自動的に発動した。
ワームのステータスで攻撃が急激に上昇し、それに加え興奮作用があるようで無理矢理にでも杭を壊そうと暴れ始めた。
「くっ、これ以上は抑えられない。早く殺ってぇ」
「おぉ任せろ。土の聖斧アース【兜割り】うおぉぉぉりゃぁぁぁぁ」
ワームの頭上まで跳躍し、聖斧を上段に振り上げ振り下ろした。地面が揺れる衝撃で、既に半壊してる建物は全壊となる。
「うぉぉぉぉぉ、何て事をしやがる。手塩に掛けて育てたのによ。肉塊にしやがって」
見事にワームを真っ二つに裂け絶命した。ワームの身体の中からは過去に食べられたのであろう人骨が何個も発見された。
「何人犠牲にした?」
「あぁん、そんなの一々覚えてないね。そこら辺の村人を食わせただけだからな」
「「なっ!」」
大体想像はしていた最悪な事実に、怒りを隠せないでいる二人。勇者であるから許せないのもあるが、地球にいた頃も困ってる人がいたら見過ごせない二人であった。
その二人だからこそ、カズトとも仲良く後輩としてやっていけるのである。
「何をそんなに怒っておる?自分以外は虫螻なのは当たり前じゃないか。そんな者達が、俺の魔物のエサなして何が悪い?」
「き、貴様ァァァァァ」
「おっと、危ないじゃないか。まだ、取って置きがあるのだから楽しんでいきたまえ。【召喚:マンティコア】」
魔法陣が現れ、そこから体はライオン、顔が人間という伝説上の魔物が出現した。
『ご主人様、呼び出してなんだい?オデ、眠たい』
「やぁ済まないねぇ。今度、生きの良い人間をあげるからさ」
「「し、喋った?!」」
魔物は普通言語は理解出来ず、本能のまま行動している。ただし、一部の魔物は言語を理解出来るとされている。
その代表的な魔物はドラゴンである。種族との違いは、【人化】を修得出来るか否かである。
そして、ドラゴン程ではないが言語を理解する魔物として有名なのがマンティコアである。
「何をそんなに驚いてるんだい?マンティコアが話すなんて有名じゃないか?」
『ご主人様、オデ何をすれば良いのら?』
「あの二人のどちらかを殺せば良いよ」
『オデ、女が良い。女の肉、柔らかくて美味しい』
マンティコアは、本来山深くの秘境にいるとか地底に住んでいるとか言われてるが、Sランク以上とランク付けされてるため出くわした者は少ない。
運が良いのか悪いのか出会ったが最後、生きては帰れない。先ず食べられてしまう。
「分かった分かった。女の――――――槌の勇者を食うと良い」
『食う。女、食う』
「サクラ、ご指名だとよ」
「嫌なご指名ね。シュウ、譲っても良いわよ」
嫌な汗が止まらない。魔神教会の幹部である《教皇》よりもマンティコアという魔物の方がヤバい。
一瞬でも油断したら、こちらが殺られる。




