SS1-55、帝国の三勇者〜朱雀隊、任務テスト〜
朱雀隊の隊舎はレストラン”カズト“と同じ古都にある。赤薔薇隊と同じ赤い鎧に身を包み、炎属性の技術や魔法を得意とする輩が集まっている。
隊長は、赤薔薇隊を除くと唯一の女性なのだ。実力は申し分なし。華蓮でボクっ娘なのが受けて朱雀隊の志望者が後を絶たない。
「ここが朱雀隊の隊舎なのか?」
「えぇ、そのようです」
「真っ赤」
隊舎の外壁が見事に血のように赤い。これは目立つ。迷わない事は利点だが、こう目立っては恥ずかしくないのだろうかと3人の素直な気持ち。
入るのに躊躇してると、扉が勢い良く開いて誰かが出て来た。どうやら入隊希望者で、試験を受けたけど、コテンパンにやられたと見える。
「チクショー、もう二度と来るか!」
泣き叫びながら走り去って行く男の顔や腕には生々しい痣が、くっきりと見て取れる。
「さてと行くか」
「楽しみ」
「何も起こらければ良いのですけど」
不安を残しつつ、扉を開いた。冒険者ギルドと同じく真正面に受付がある。
「入隊希望者ですか?」
「いえ、これを」
「あぁ任務参加の冒険者の方達ですね。テスト場所は、そこの奥にある扉から中庭に出られますので、そこでお願い致します」
「ギルドカードは良いのか?」
「低くても実力がある者達はいます。なので、いちいち確認致しません。冒険者も実力主義でしょ?」
「それはちげぇね」
受付嬢が教えてくれた扉から外に出る。そこには既に任務参加者が大勢いてテストを受けてる最中だ。
どうやら模擬戦で実力を判断してるようで、木製の武器にてお互い戦っている。
「ハァハァ、まだまだ」
「ふむ、根性はあるようです。スタミナもまぁまぁ。荒削りですが、剣さばきも申し分なし。合格とします」
「………!ありがとうございます」
次から次へ模擬戦によるテストが進む。試験官は1人で熟しており、汗1つ掻いてない様子。それも女性だ。赤薔薇隊程じゃないにしろ、露出がある鎧を着用している。
「合格者は、2割程でしょうか?」
「あの試験官強いね」
「クックククク、面白くなってきた」
「次どうぞ」
残りは、リンカ・ココア・メグミの3人のみとなった。
「オレから行くぜ」
先陣はメグミ。勇者の技術によるそれぞれに合った武器ならどんな物でも100%以上の能力を引き出し発揮出来る。
だから、そうそう負ける事はなさそうだが…………。
「次はアナタ?」
「おぅ、オレが相手だぜ」
「うん、アナタが相手なら少しは本気を出しても良いかも」
「あぁん?」
女の試験官が何もないはずの空間に腕を突っ込んだ。
「あれはアイテムボックス?何かを出すみたいですわ」
アイテムボックスから取り出したのは2mは越えるであろう長い槍であった。柄の尻から刃の先端まで見事に真っ赤に染まっており芸術的にも武器的にも目を奪われてしまう。
「あれは魔槍ですわね」
「どれくらいのレベル?」
「そうですわね。おそらく炎属性のみなら聖槍と引けを取らないでしょう」
魔槍を含む魔武器は、ピンからキリまで様々だ。一回きりの使用で壊れる物もあれば、国宝級になる物まである。
試験官の持つ魔槍は後者だ。
「おい隊長が炎槍クレナイを取り出したぞ」
「それ程の相手なのか?」
「ただの冒険者崩れにしか見えん」
メグミは、傍から見ると粗暴で冒険者というより盗賊の頭と名乗っていた方が似合う。そう思うとリンカとココアは、笑いを堪えるのに必死だ。
「アナタも武器を出したら?」
「チッ、バレてるか」
メグミは聖槍ゲイ・ボルグを取り出す。同じ槍使いとして負けられない。
「へぇー、アナタも槍を使うんだ。しかもタダの槍じゃないね」
「ふん、もうオレらの正体分かってるんだろ?」
「確証は無かったけどね」
勇者の証である聖武器を見せたら、よっぽど鈍感でない限り本能的に勇者と理解してしまう。
「おい、あれ!」
「まさか!あれは勇者様が持つという聖武器の1つ」
「今の聖槍の持ち主って確か」
ザワザワ…………ザワザワ…………
「正体が分かってもオレに挑む気なのか?」
「朱雀隊を任されてる長として、誂まないという選択肢はない。ボクの力がどれだけ通じるのか試してみたい。戦ってみたい」
「とんだじゃじゃ馬じゃねぇか」
お互い槍を構える。
「そういえば、名前を聞いて無かった」
「ボクの名前は、ルージュ。ルージュ・フランソワ。朱雀隊隊長を仰せつわせてもらっている」
「オレの名前は、メグミ。槍の勇者だ」
「「勝負!」」




