SS1-54、帝国の三勇者〜アクア、試験に合格する〜
「それで横になってるのか?」
冒険者ギルド登録試験に挑んだアクアが中々戻って来ないと思ったらギルド内にある医務室へ運ばれていた。
「オレは負けたのか?」
「Aランク冒険者と引き分け」
「えぇ随分と頑張ったじゃない」
「オレは誇らしいと思うぜ。これからも頑張ろうな」
目を覚ましたアクアにメグミは、ポンポンと頭を撫でた。メグミよりも背が高い男を撫でてる光景はシュールに見えてしまい、リンカとココアは笑いを堪えて肩が震えている。
「ほら、立てるか」
「ご主人様、ご迷惑を掛けて申し訳ない」
試験で受けたはずの傷が既に塞がって良く見ないと分からない。回復魔法や回復薬でもここまで早く治らない。
流石は元Bランクの魔物が獣人になっただけはある。
「おっ、もう起きてるのか」
「アナタがアクアと戦ったの?」
「おぅ、そうだ」
医務室の扉を開けて入って来たのは、アクアと引き分けたAランク冒険者であるロマンだ。
「ねぇ筋肉触って良い?」
「おっ良いぞ」
「…………硬い。これならアクアと引き分けたのも納得」
まるで鋼鉄と言っても過言ではない。これなら余計な鎧を着けなくても相手の攻撃を防げる。むしろ、鎧は邪魔でしかない。
「うむ、筋肉はウソをつかないからな。このオレ様と引き分けたアクアとやらも相当な強者と見える」
ロマンに褒められアクアが照れてる。元の姿ならもっと可愛いに違いない。
「コイツの主人は、オレだからよ。オレと戦おうぜ」
「オレ様も戦いたいのは山々だが今は遠慮しとこう」
「なんでだよ?!」
「こう見えて立っているのが、やっとなのだ。気を抜くと倒れかねん」
あっ、良く見てみるとロマンの両足が産まれたての子鹿のようにガクガクと震えてる。これは、やせ我慢してる。
「…………ツンツン」
「ギャッハッ」
不意打ちにリンカがロマンの足元を人差し指で突っついた。面白いくらいに後ろへと倒れ込んだ。
「な、何をするんだ」
「…………つい、面白いと思って?」
触っていけないと思う程、触ってみたくなる。ツンツン、触る度にロマンが寄声を挙げて面白い。
廊下にも響き渡っており、誰か駆け付けて来るかと思いきや誰も来ない。それもそのはず、ココアが無音にしてるからである。
だから、実際は「…………!!」と口をパクパクしてるだけに見える。
「あぁ面白かった」
「お前らオレ様を虐めて楽しいか!」
「「面白い」」
「二人共それくらいにしなさい。アクアを傷付けた報いだとしても試験だったのよ」
そう、いくらアクアが倒れたとしても試験だったのだ。これで仕返しされたらロマンが可哀想になる。
「チッ、わぁったよ。悪かったね。これでも可愛いオレの相棒なんだ」
「リンカもゴメン」
「オレ様も試験という範疇を超えて暑くなった面もありやしたから」
お辞儀をしてロマンは医務室から出て行った。ここに来る前よりも足がカクカクとヒドい状態となりながら。
「さてと、アクア動けるか?」
「動けます。あんな傷、どうって事はありません」
「よし、さっそくだがジャックと二人で任務を受けて貰う」
アクアが寝てる時に4人で話して決めた事だ。ティムした魔物は、通常なら主人とは一時も離れない方が理想。
だが、獣人となったアクアなら別だ。これからパーティーを組む以上、他のメンバーと行動を共にする事もこの先多々あるはずだ。
そのために馴れさせるために今回の任務の班割りにした。任務は近くに出現したというブラッディーボアの討伐だ。イノシシ型の魔物で、Bランクなだけはあって肉は旨いらしい。
「今日は肉パーティーだな」
「ジャック、アクアをよろしく」
「へい、リンカの姉御行ってきやす」
「気を付けて、行って来るのよ」
「オレ、頑張ってくる」
よっぽどな事がない限り、あの二人が負ける事はないだろう。ドラゴンとかのSランク魔物に出会わなければ。
「それでオレらはどうするよ?」
「そうですね」
「リンカ達も何か任務を受ける」
Bランクよりも高ランクが貼られてる掲示板に行くと大抵失敗続きのドブクエストしかない。
だから、リンカは他のところから任務の紙をもぎ取って来た。
「これなんか面白ろそう」
「えー、なになに」
・全ランク対象
調査任務
最近、ブローレ商会の関連施設が破壊されるという事件が起こっております。
その調査及び犯人を生死不明で捉える事を任務とします。なお、この任務に参加される冒険者には試験が御座いますので、朱雀隊まで足を運んで来てください。
「調査任務は、オレらがやる事じゃないだろ。それに王国直属の騎士団もいるじゃないか」
「えぇー、でも面白そうだよ」
「リンカの直感はバカには出来ないですね」
メグミは嫌がったが、多数決により受注する事にした。




