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勇者レストラン~魔王討伐して、やることないのでレストランを開きました~  作者: 鏡石錬
4章マーリン戦争

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SS10-16、ジョルの仕事〜《愚者》vs帝国の三勇者その4〜

 速度スピードが遅くなってもリンカと《愚者ザ・フール》の距離が近いからほぼ関係ない。


「喰らぇぇぇぇ」


 距離を取るために放った蹴りが、まさか逆に自分を追い詰めるとは夢にも思っていなかった。

 避ける時間がなく、咄嗟に【超短距離転移ジャンプ】を使う暇さえなかった。


 メキメキ


「ぐぉっ」


 《武神》の拳が《愚者ザ・フール》の脇腹に命中し、嫌な音が鳴り響く。今度は逆に《愚者ザ・フール》が吹き飛ばされた。


「ふぅー、どう少しは効いた?」

「…………こんなものかね?」


 見栄を張るが、あれは生身で受け止めるべきものじゃない。まるでドラゴンに突進されたような気分だ。これは肋骨は折れて、いくつか内蔵も損傷している。


「ゲホッ」


 口の中も血で鉄の味がしてる。本来なら重傷で立ち上がる事すら困難な状態だ。少しでも気が緩めば気絶してしまう。


「…………足元がガタガタと震えてるのに?」

「何の事かね」


 これは背は腹に変えられない。勿体無いが、【自由気儘な発想力(イノセント)】で想像出来る残り1つを決めた。


「ふぅ、これで元気になりました」

「何をやった?」

「敵のあなたに言うはずないでしょ」


 《愚者ザ・フール》が想像したのは【超再生】…………どんな傷を負っても忽ち癒やしてしまう。

 腕や足が千切れても千切れた箇所から生えて来るように再生する。まるでトカゲの尻尾のように。

 ただし、頭が吹き飛べば、どうなるかは不明だ。


「では、仕切り直しです」


 《武神》の距離を【超短距離転移ジャンプ】で詰める。まだ十数mは離れてるところで拳を前へ突き出した。

 遠目から見たら何をしてるのか首を傾げるが、《愚者ザ・フール》の拳が《武神》の腹へヒットした。


「ゲフッ…………これは、拳だけ転移させた?」

「当たりです。これなら避けられないでしょ?」


 確かに普通なら何も出来ずにタコ殴りにされ終わりだ。ただし、《愚者ザ・フール》が相手してるのは勇者の中でも武道に精通してる《武神》だ。


 スカっスカっ


「何故当たらん」


 しっかりと狙いをつけて拳を転移させてるのに当たる瞬間に《武神》が身体を捻ったりして回避している。


「ルンッルンッ」


 それも鼻歌を歌いながら避けてる。


「いくつか、それらしい事は出来ても体術は素人?」

「なに?!」

「だって、視線を攻撃するところに合わせたら、それはバレバレ」


 《愚者ザ・フール》の視線の動きによって拳が来る場所が丸分かりであった。

 武道家の世界において、相手の視線を読むなんて朝飯前。それを出来ないようじゃ一生一人前になれやしない。

 腕力や脚力を鍛える事とそれぞれの技を覚えるだけが、武道じゃない。視線や筋肉の動き等を観察するのも武道の内。そうすれば、相手の次の動きが分かって来る。


「こんな事があってたまるか」

「あの確率を変える男を見てて、何の学習もしてない」

「なにを!グハッ」

「あなたも隙が多い」


 メキメキ


【陽炎】にて《愚者ザ・フール》の無意識に滑り込み、【加重岩拳メテオストライク】と【重弾】のコンボにより、またもや内蔵破裂と肋骨数カ所の骨折で吹き飛ばした。

 しかし、【超再生】により瞬時に回復。だが、回復した瞬間に内蔵破裂と肋骨の骨折の繰り返し。

 これを何回繰り返したか分からない。普通なら精神ズタボロで廃人になってもおかしくない。

【超再生】は、身体を元通りに再生させても精神はそういかない。これは最早、一種の拷問に近い。


「まだ殺る?」

「……………」


 いくら名を馳せた騎士でも目が虚ろになってくる。表情には生気は宿っておらず、いくらか老けたような印象を受ける。


「…………!ですが、それは」

「…………?」


 《愚者ザ・フール》が突然と大声を挙げた。まるで誰かと話してる様に。


「分かりました。ここは立ち去る事にしましょう」

「逃がすとでも?」


 《愚者ザ・フール》の今の体調ではリンカから逃げ切る事は不可能に近いと誰もが思う。


「いいえ、残りの施設も解体終了したようでして」

「まさか、隊長は陽動役?」

「オレらも手伝うぜ」

「えぇ、逃がす訳には行きません」


 《愚者ザ・フール》をグルっと囲むように陣形を取った。これで何処に逃げようとも直ぐに取り押さえられる位置にそれぞれ着いた。


「おい側に来い」

「はい」

「では、ごきげんよう。また、お会い出来る事を心の底から思っております」

「ま、待て」


 《愚者ザ・フール》が、お辞儀するとその場から《運命の輪(ホイールフォーチュン)》と共に姿を消した。



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