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勇者レストラン~魔王討伐して、やることないのでレストランを開きました~  作者: 鏡石錬
1章グフィーラ王国・古都

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34食目、ポテサラと王様

 まぁヘタレな王様の事は置いといて、本心では嫌々だがアテナは俺の事を取り敢えず認めてくれたという事で一件落着だ。


「まぁ認めてくれたという事で、お食事の続きでもどうですか?こちらの皿はまだでしょう?」


 底が深い丸皿には、ポテトサラダが盛り付けてあり、まだ誰も手をつけてない。芋類は庶民が食すものであり、王族が食べる物ではけしてない。

 所謂、食べず嫌いということか。因みにアテナは別の理由で、森妖精族エルフがベジタリアンのせいで逆に食べ過ぎて嫌いになったみたいだ。


「芋は庶民の食べ物というイメージに捕らわれているのです。芋はどんな調理法にも合う万能食材ですよ。

 騙されたと思って食べた方が後悔しません。食べたら今までの世界観がガラッと変わります」


「そ、そこまで言うなら食べるが、不味いと思ったら………儂専属の護衛となって頂こう」


「えぇ、構いません」


 アテナの次は王様がカズトに勝負を挑んだ。王様はカズトの料理人の腕前を否応にも知ってるはず………なのだが、手元に置けるチャンスと見るや挑むにはいられなかった。

 カズトの隣にいるレイラだけは、やる前からこの勝負は目に見えてると心底思ってる。ただ、席に座ってる三人は"芋"が美味とは到底思えないのだ。


「では、頂こう」


 王様は食べやすい様にスプーンで食べる。二人も王様に習いスプーンで掬い口の中に入れた。数回、咀嚼しゴクンと飲み込むと数秒間三人とも微動だにしない。


「う、旨い!これが芋だというのか!コクがあり、まろやかで、このクセになる様な味は一体何なのだ。これが芋だとどうも信じられない」


「えぇ、植物の扱いに長けてる森妖精族エルフでさえ、こんな美味な芋は作れない。いえ、森妖精族エルフのより三段階上はいってるわよ。

 こんなに美味なら私は嫌いにならずに済んだわ。これに早く出会っていれば………」


「本当に美味しいわ。こんなに美味しいなら城でも食べたいわね。ねぇ、勇者様お願いがあります。お城の専属コックになってくれないかしら」


 カズトの料理を食べた貴族なら誰しもが思う事『どうにかして"専属コック"に出来やしないか』と。

 だが、到底それは無理な話だ。武力行使で無理矢理にでも言う事を聞かせようとも無理だ。この世界どこを探してもカズトより強い者など存在しない。


「それはお断りします。私には、この店がありますので」


「そう、残念だわ。いつか暇な時にまた来ようかしらね」


 カズトに断られると直ぐに身を引いた。無理矢理にでも連れて行こうとした者の末路は有名だ。まるで、悪魔のようだったと口を揃えて言うのだ。貴族なら誰でも耳にした事がある話だ。

 まぁ本当かどうか不明で、ただ単に噂に尾ひれがついただけかもしれない。

 しかし、人間は本当でも嘘でも噂を信じる生き物だ。よって、貴族達はこの噂を信じ恐れてる。だが、機会があれば食べたいと思ってるのも事実で、たまにお忍びでレストラン"カズト"に通ってる者もいるって話だ。


「あぁ、もう無いわ。お代わりをちょうだい」

「儂にも頼む。いやぁ~、食べず嫌いは良くないな」


「調理の仕方で美味しくも不味くもなるという事です。お義姉さんが婚姻された森妖精族エルフは、あんまり料理には感心ないと聞きます」


「そうなのよ、同じもので厭きてくるわ」


 森妖精族エルフは、人間と比べると長寿であり300年は生きるとされている。その上で100歳を越えた当たりから周囲の事には感心が無くなっていくという。そこには食事ももちろん入っている。

 だからなのか、シャルウイッド国には100歳を越えた森妖精族エルフしかいない。100歳以下、つまり若い森妖精族エルフは国の外へと出て行き多種族の国で生きている。

 たまにだが、この古都でも若い森妖精族エルフを見る事がある。


「お待たせしました。ポテトサラダでございます」


「「おぉ、待っておった」」


 ポテトサラダの器を受け取るやいなや貪り食う勢いでスプーンで掬い口の中に放り込んでいる。口の周りには、見事にマヨネーズが髭みたくついている。

 うわぁ、王族とは思えない食べ方だ。でも、ここなら礼儀作法なんて気にせずに自分のペースで食べれるしな。

 この後、王様とアテナは二杯ポテトサラダをお代わりをして満足したようだ。

 アテナは護衛と共にシャルウイッド国へ名残惜しそうに帰って行った。帰る際にとある物を渡したので、近い将来にまた会うかもしれない。

 因みに王様というと王妃様と一緒に一晩だけ宿泊する事になった。それを聞いたアテナは至極残念そうな顔で帰り際、殺意を王様に向けた。

 それに気付く事が出来たのは王様を除いてカズトだけで、王様本人はというと汗だらだらと流し足が産まれ立ての小鹿の様にガクガクブルブルと震えていた。

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