SS10-6、ジョルの仕事〜支店の排除〜
ジョルがブローレ商会本店を潰してから翌日。
「失礼致します。ジェラール殿下」
「何だ、朝から騒々しい。余は、まだ食べてるのだぞ」
衛兵の1人が息を切らしながら、ジェラール王子の部屋に入って来た。
「そ、それが…………一夜にしてブローレ商会本店が消え失せました」
ポロッとジェラール王子の手からフォークとナイフを落ちてしまう。
「一晩でか?!」
「はっ!跡形もなく、更地へとなっております」
それは、王城……………グフィーラ王国の一大事だ。王国一の商会が一夜にして潰れたとなる、様々な物品の流通に影響が出るのは明らかである。
それに王城にある調度品や嗜好品、美術品ら全てブローレ商会から回って来た物だ。
「捜査はどうなっておる?」
「既に衛兵数人が向かっております」
「支店はどうなっておる?」
「今、確認中であります」
まだ支店が無事なら、その内に立ち直せる可能性は残ってる。残ってるが、かなり厳しいのが現状だ。
本店があっての支店だ。本店からの指揮がなけりゃぁ潰れる可能性すらある。
「そうだ、ブランはどうした?!」
「ブランと言いますとブローレ商会会長のブランでしょうか?」
バン
「他に誰がいるのだ。早く確認を取れ」
「はっ!直ちに」
ブローレ商会本店が一夜にして消滅したとなれば、そこの主であるブランもタダじゃないとジェラール王子は考えてる。
もし、生きてるのであれば、ブローレ商会を立ち直せば良い。アイツ程に商人にコネがある奴はそうはいまい。
ブローレ商会の調査を開始してから3日が経った。
「どうなっておる!犯人らしき者の目撃情報があって、何で捕まらない」
調査開始してから直ぐにブローレ商会本店があった更地から立ち去る黒いローブを深く被った者達が見掛けられている。
目撃証言があるにも関わらず捕まらないイライラにジェラール王子は唇を噛み締め、近くに飾ってある花瓶をパリーンと割る。
「ハァハァ、ブランも生きておるまい。おい、誰かおらぬか!」
「はっ!お呼びでございますか?」
「緊急会議を開始する。宰相とブローレ商会と関係する大臣を今直ぐに呼んで参れ」
「はっ!ただいま」
これ以上は待ってられない。早く手を打たねば、グフィーラ王国は滅亡してしまう。
それに…………
「銃とやらが、どうなったか気になる」
銃という兵器に投資してきた身であれば、銃の行方が気になる。父であるグフィーラ王にも内緒にしている事業だ。
「誰よりも先に見つけなければ」
もし、誰かに見つかる事があれば、自分は滅亡だ。それだけは阻止しなければならない。
「ジェラール王子殿下!」
「何だ!余は忙しい」
「み、皆様がお着きでございます」
「直ぐに行くと伝えて参れ」
ジェラール王子が無駄な捜査と会議をしてる間に、ジョル率いるアゲハ隊は次から次へとブローレ商会支店を襲撃していた。
本店よりは運気は少ないが、それでも数百人分の一生分の運気は溜め込んでいる。今までは悪運が強いという事だったのだろう。
「これで5件目です」
「順調だな」
警備は厳重になってはいるが、ワタクシの技術【確率変動】を駆使すれば消して見つからないルートを進む事が出来る。
「隊長、足の準備が出来やした」
「ご苦労。さぁ次に行こう」
次のブローレ商会支店へと向かう。本当に怖いくらいに順調だ。道中、魔物や盗賊には一切会わず、暇を持て余す程に。
そして、支店を襲撃してから3日が経った。
「グフィーラ王国にある支店はあらかた片付いたか」
「はっ!グフィーラ王国にある支店は残り3店舗となります」
グフィーラ王国内だけで、本店を含めブローレ商会が持つ店舗は114軒。3日の内に111軒を潰して回っていた。
本店と比べると支店を潰す時間は1/100と短く済む。運気の量に比例するのか定かでないが、3日で100以上潰せてるのは大きい。
凡そ1時間後
「ここが112軒目」
「警備が更に厳重になっております」
王城だけではなく冒険者ギルドと商人ギルドもブローレ商会本店と支店が次々へ襲撃され消滅してる事を重く見てるらしく、徐々に名の知れた冒険者達や王族直属の騎士隊も警備に就いてるまでに至っている。
「あれは《狂槍》メグミ」
「あそこには《戦う歌姫》ココア」
「《武神》リンカ、帝国の三勇者が揃ってるとは」
Sランク以上が3人も揃ってる。それも勇者、明らかにこちらの方が分が悪い。だけど、ワタクシには教祖様に与えられた力がある。
それに戦ってやる必要はない。ワタクシの技術によりブローレ商会支店を消滅すれば良いのだ。




