SS11-5、ルーシーのグルメレポート〜お披露目〜
水浴びよりもお風呂を堪能しまくった僕は、レイラ姉さんに拭き拭きされ、真新しい見た事のない素材で出来た衣服に着替えさせられる。
何時測ったのか?サイズがピッタリであり体にフィットして動きやすい。やすいが、露出がある普段の衣服よりも何だか恥ずかしい気がするのは何故だろうか?
「うぅ、これ下がスースーするよ」
スカートなんて履いた事ないからルーシーは知らないが、始めての感覚に慣れない。スースーして落ち着かない。
ボトムス部分が前後に分かれるようにスリットが入っており、少し動けば見えてしまいそうになる。
「その内慣れるわよ。それに━━━」
レイラ姉さんに椅子へ座らされ、ブラッシングをさせられた。お風呂とは違う気持ち良さにフニャンと身体が蕩けてしまいそうだ。
これはヤバい!こんなの味わった事ない。ただ、髪と尻尾を梳かしてるだけなのに変な声が出てしまう。
「わふぅ、何だこれは!温泉とは違う気持ち良さなのだ」
「うふふふふっ、ルーちゃんはせっかくの美人さんですからキレイにしないと勿体ないですわよ」
「ぼ、ぼぼぼぼ僕が美人!美人なのか!」
う、ウソだぁ!
「えぇ、きっとカズトも驚くはずですわ」
何故、ここでレイラ姉さんは兄ちゃんの名前を言うのか理解出来ない。出来ないが、思わず兄ちゃんの顔を浮かべてしまったではないか。
「そうか、兄ちゃんの驚く顔見てみたいな」
兄ちゃんに見られる羞恥心よりも喜ぶ顔を見たい方が勝り、尻尾をブンブンと自然に振ってしまう。
それに、これからここで働くのだ。兄ちゃんのために一生懸命に頑張るぞ。
「カズトぉぉぉ、ルーちゃんを隅々まで洗って来たわよ」
レイラ姉さんに連れられ、早速兄ちゃんに僕をお披露目する時間がやってきてしまった。
兄ちゃんの驚く顔を見てみたいと口に出てしまったが、やはり羞恥心もいくらかある。
喜んでるくれるのか?ドキドキと僕の心臓の音が甲高く響いているのではと、周囲をキョロキョロと見渡すが誰も気づいいない様子。
レイラ姉さんの声で、こちらを振り向く兄ちゃん。その瞬間、握っていた包丁を落としそうになるのを僕は見逃さなかった。
何処か変なのかなと、自分の身体を確認するが、その仕草に益々兄ちゃんの視線が釘付けになってるような気がした。
その視線とは別に兄ちゃんの背後から二人分の殺気と似たオーラを僕は感じ取っていた。ヤバい、あれは怒ってるよね?
「そうなの、事情は分かったわ。これからよろしくね、ルーちゃん」
「んっ、凄い変わりぷりなの。カズトが惚れ直すのも無理はない」
兄ちゃんの背後から現れたのは、ミミ姉さんと別のナイスボディで綺麗なお姉さんだ。
兄ちゃんが二人に説明すると、先程までの殺気はウソのように消えており、優しい笑みが僕に注がれる。
「このまま引き続きレイラにルーシーの教育担当を命ずる。ルーシーは失敗を恐れるな。そこから何を学ぶかが大切なんだ。
後、1番大切な事を教えよう。それは………笑顔だ。ルーシーの笑顔がみんなを幸せの気持ちにしてくれるはずだ」
「「イエッサー」」
レイラ姉さんを真似して敬礼する。
今は、レイラ姉さんの後ろを着いて行くのが精一杯だ。スラム暮らしが長かったからか、文字は読めず計算も出来ないが、そこは休憩時間でレイラ姉さんに教えて貰う。
元々、獣人の中で頭が良いと言われる犬人族。ルーシーもその例外には漏れず短い期間で文字や簡単な計算は覚えていった。
「お、お待たせしました。カレーライスで御座います」
「おっ!待ってましたって随分と可愛いお嬢ちゃんじゃねぇか。新人なのか、頑張れよ。ガッハハハハ」
「カウルさん、今日から働く事になったルーちゃんよ。多少失敗するかもされないからそこは大目に見てくれると嬉しいわ」
「よ、よろしくお願いします」
まだまだ緊張してレイラ姉さんと一緒に卓を回り、常連客の顔見せをすると共に接客に慣らせていく。
まだ、レイラ姉さんのようにテキパキと受け答えは出来ないが、常連さんはみんな良い人ばかりで失敗しても優しく許してくれる。
「おぉ、任せとけ。何か言ったヤツがいたら俺がぶっ飛ばすからよ。ガッハハハハ」
このカウルさんというオジサン、手がゴツいけど何だか落ち着く。僕のお父さんもこんな手をしていたな。
ルーシーは、懐かしく感じるも面には出さずにカウルが撫でる手を受け入れていた。




