SS11-4、ルーシーのグルメレポート〜始めてのお風呂〜
僕が兄ちゃんの店で働く事が正式に決まり、僕の教育係はレイラ姉さんに決まった。妹の捜索は、兄ちゃんとミミ姉さんのコネで探してくれる。
これ程に頼れるところは他にあるだろうか?今日初対面なのに、なんだか昔から親しくしてくれてる本当の兄姉のようだと感じていた。
「レイラ大尉に任せたい任務がある」
「何でありましょうか?隊長」
兄ちゃんとレイラ姉さんが、変な口調とポーズをしてる様を見てルーシーは首を傾げる。でも、なんだか格好良いと思ってしまう。
何故、そう思ったのか上手く言葉には言い表わせられないが、なんかこう……………本能からそう語り掛けて来るような感じだ。
「ルーシー隊員の体をキレイにしておいてくれ。これは重要な任務である」
「イエッサーであります」
えっ?僕?
兄ちゃんは、レイラ姉さんに僕を何をするって言った?レイラ姉さんは、兄ちゃんから僕に向き直りニコニコ笑顔で、僕を脇に抱きかかえた。
何か既視感を覚えるが、声を挙げる前に目的地に着いたらしく降ろされると、目の前の光景が信じられなかった。
「ルーちゃん、さぁ着きましたわよ」
そこには、お湯を零れる程に張られた湯船に、硬い石のようなタイルを貼り合わせた床と壁の空間は、この世界の住人にとって、まるで異世界そのもの。
王族・貴族でもここまで広い大浴場は持ってない。あっても、猫脚が付いたバスタブに半分程お湯を張る位だろう。
「レイラ姉さん、これは一体何!煙がモワモワとしてて、何か知らないけどスゴく入りたい気分」
犬人族の本能として水浴びは好きだが、明らかに目の前に張られてるのは水じゃない。
北の寒い地域に住むとされる犬人族の亜種、氷狼族なら温泉を知ってるが、犬人族であるルーシーは知らない。
「これは温泉って言うのよ。それにモワモワとしてるのは煙じゃなくて湯気って言うらしいわ。さぁ服を脱ぎ脱ぎして入りましょうね」
えっ?!これに入れるの!夢じゃないよね!
ルーシーは目の前の光景に茫然となりながらレイラ姉さんに服を脱がされてる。
普通なら羞恥心を持つところだが、犬人族を含む獣人のほとんどは露出が激しい衣服を好み、平気で森の中にある泉などの水で水浴びをする。
でも、やはり本能からか?目の前の光景を見ると水浴びよりもお湯に浸かる方が気持ち良いと直感で分かってしまう。
レイラ姉さんが脱がしてくれたお陰で、スッポンポンとなつた僕は、早速お湯が張られた湯船へダイブしようとする僕を止めようとレイラ姉さんの手が伸びるが、僕はスルリと躱し湯船へドボンとダイブした。
「わふぅ、何だこれはぁ~………こんな気持ち良いのがあるなんて………ふにゃぁ~」
水浴びよりも断然、お湯に浸かる方が気持ち良い。フニャーンと身体がとろける。今までの汚れや疲れが、お湯に滲み出る如く、ここから出たくない。
「ルーちゃん、入る前に身体を洗わないとダメですよ」
「でも、これ気持ち良すぎて出られないよ」
「もう、しょうがないですね」
兄ちゃんと同じくレイラ姉さんも僕の事を軽々しく持ち上げ壁際に並んでる椅子に座らされた。
そして、レイラ姉さんに白くてアワアワな物体で体中を包まれ洗われていく。
だけど、たまにレイラ姉さんの指先が変なところに触れ、思わず今まで出した事のない声を出してしまう。
「わふぅ、広いしスイスイと泳げちゃう」
「お風呂では泳いではいけませんよって聞いていませんね」
泡を流し終わりレイラ姉さんの手から逃れたルーシーは、再度湯船へダイブした。
これで十二分にお風呂を堪能する事が出来る。それにしても広いお風呂だ。もしかしたら、森の中にある泉よりも広いかもしれない。
「わふぅ、広いしスイスイと泳げちゃう」
「お風呂では泳いではいけませんよって聞いていませんね」
レイラ姉さんが何か言ってる気がするけど、そんなの関係ない。僕はスイスイと泳ぐ。こんだけ広いと、泳ぐなと言われても無理な話だ。
「レイラ姉さん、ここ広くていっぱい泳げるよ」
泳ぎながら満面な笑顔で、ちょこんと座り僕を眺めてるレイラ姉さんに伝える。
「キュン!えぇそうね(そんなに可愛いとダメって言えないじゃない)」
何故かレイラ姉さんの鼻から鼻血がポタポタと、一部のお湯が赤く染まっていた。




