SS11-3、ルーシーのグルメレポート〜隠し子?〜
僕、ルーシーを抱えた兄ちゃんこと、剣の勇者カズトは屋根から屋根へぴょんぴょんと飛び越えていく。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!勇者様ぁぁぁぁ(怒)急に飛び降りるなんて………怖、怖かったんですからね!びぇぇぇぇん」
「会った時と同じで良いよ。兄ちゃんの方がしっくりくる」
流石に、屋根から飛び降りたら怖い。兄ちゃんの事を少し嫌いになった。やっと、地面に足を付けてもガクガクと振るえる。
僕の泣き声が響き渡ったからか、少し人の目が、こちらに向いて注目の的になってる。
だけど、腰が抜けたのか足が動かない。そんな中で、兄ちゃんが僕の手を引っ張り、客が入らない店員専用の扉から二人は入った。
入った矢先で、ちょうど着替えてるレイラがいた。パチパチとお互い見詰め合い、数秒後にレイラの悲鳴が部屋の壁に反響する。
バタバタ
「レイラ、大丈夫?何があったの」
ミミが何事かと部屋に入って来た。だけど、兄ちゃんと僕は近くにあるロッカーへと隠れた。
ロッカーの中は狭くて薄暗いが、僕が小柄なのか二人でも多少余裕がある。
「ほら、行ったわよ」
「た、助かったぁ~。レイラ、ありがとう」
「でも、どういう事か説明してくれるわよね?その子は誰なの?ニコッ」
僕に向けられてる訳ではないのに、レイラと呼ばれたお姉さんの笑顔が、何か怖い。笑顔なのに笑顔じゃないような気がする。
「………カズトの隠し子?」
ビクッと二人して後ろを振り返った。声からして、先程部屋に入って来たお姉さんみたい。
「えっ!僕って、兄ちゃんの子供なの?」
僕は兄ちゃんにお返しとして、態と驚いた風に爆弾発言をした。僕が怖がってるのに、屋根伝いでピョンピョンと駆けて行くわ、飛び降りるわで、めちゃくちゃ怖かったから、そのお返しだ。
僕の発言は効果覿面で、レイラと呼ばれたお姉さんからドス黒いオーラが見えた気がした。
「か、かかかか隠し子!カズトどういう事か説明して説明しろ説明しなさいぃぃぃぃ」
いや、気のせいだったみたい。動揺してるレイラと呼ばれたお姉さんは、兄ちゃんの肩を持って揺らし始めた。
もしかして、このお姉さんは兄ちゃんの事好きなのかな?明らかに動揺しまくり。
「止めれぇぇぇぇ。話すから話すから止めて」
兄ちゃんの顔が青く変色し始めた。今にでも吐きそうな表情になったところで止まった。
近くにあったバケツを兄ちゃんが即座に取り、その中に見ちゃいけないモノをリバースしていた。
全部吐き出し終えると、スッキリした顔で顔色は戻っている。心配だったけど、元気になって良かった。
「この娘この名前はルーシーだ。明日からここで働いて貰おうと俺がスカウトした訳だけど、レイラは賛成かな?」
「………はぁ、出逢い当初から獣人好きなもんね。それに………こんな可愛い娘こなら賛成わよ」
諦めた様子でレイラと呼ばれてるお姉さんは、僕を雇う事に賛成らしい。なんとなく察していたけど、兄ちゃんは獣人好きなのか。
たまに人間の中には無性に獣人好きな者がいるらしいと聞いた事がある。僕は今まで出会った事はないけれど。
「………ミミはカズトの指示に従います」
そして、ミミと呼ばれてるお姉さんは、なんというか無表情で感情が読み取れない。だけど、何処か不思議なオーラを纏ってるというか何かを隠してるような雰囲気を感じる。
「僕はルーシー・ファン・レントシーです。レイラ姉さんにミミ姉さん、よろしくお願いします」
「姉さん!ルーちゃん可愛い!ねぇ、本当に私の妹にならない。ハァハァ」
姉さん呼びで、レイラはすっかりとルーシーに骨抜きだ。ここはスタッフしか入れない部屋だから良いものの、人様には見せ付けられない程に過激なスキンシップをしている。
「ルーちゃん!ちゃん付けは止めて下さい。それに………あっそこは気持ち良いです。ふにゃん」
ルーシーもレイラの撫で撫でテクニックに、瞳がトロンと蕩けて足腰が立たない程に物理的2骨抜きにされた。
「………レントシー………レントシー………何処かで聞いた覚えがあるような無いような………」
ブツブツとミミが呟きながら部屋を歩き回ってる。だけど、どうしても思い出せないようで、諦めたようだ。
「ルーシーには、実は生き別れの妹がいるみたいなんだ。その妹さんを探してあげる事がここで働く条件なんだ」
「ルーシーの妹、絶対見つけてやるわよ。こんなに可愛いルーシーなんだもの。絶対に妹さんも可愛いわよね」
スリスリとルーシーの頬に頬擦りをするレイラ。ルーシーも満更でもない様子で、抵抗せずにレイラに身を任せている。
「………ミミも魔法研究所のツテで探す事にします」
ミミが探すとなれば、高確率で見つかるはずだ。だが、思いの外早く見つかるのだが、それは別の話。




