185食目、《戦車》vs剣その3
《戦車》が寝る前に倒したいが、攻める隙が中々見当たらない。本当に妹と戦ってる気分になる。
「【飛雷閃】」
「【飛影閃】」
同じ力・速度・角度どれを取っても同じく返して来る。これでは、いくら打ち合っても決着が着かない。
「ならば【電光石火】」
《戦車》の背後に瞬間移動し刃を振り下ろすが、それを読めていたのかカズトを見なずに難なく防がれてまう。
「この楽しい気分は、姉さんと教祖様以来」
「これも防ぐか」
《戦車》の言い分通りだと、あのくノ一装束の女も俺と同等かそれ以上という事になる。
本の勇者であるリンが心配だが、今は目の前の敵に手一杯だ。
「えーっと、こうだったかな?【影分身】」
「なに?!」
《戦車》が、カズトの【雷分身】を真似たのだろう。
何人もの《戦車》が辺り一面に出現した。ただし、やはり見様見真似である。カズトの技術よりは稚拙だ。
影という特性状、色が黒くなってしまうらしい。それに所々形が歪で直ぐに偽物だと分かってしまう。
「難しい。お前らなんかいらない」
自分で作った分身を自分で全部切り捨て胴体と首が別れ落ちた。血は出ずに分身は霧散した。
「折角、作ったのに勿体無い」
「クルミは、あんな不細工じゃない」
職人は細かい所まで拘ると言うが、今戦闘中に言う言葉ではない。隙だらけになると言うものだ。
「これで決める。タケミカヅチ奥義【紫電一閃】」
雷の聖剣タケミカヅチの中で最速の業にして最高威力の業だ。これから逃れた者はいないし、立ち上がった者は皆無だ。
一旦、鞘に納め抜刀するのだが、その抜刀する速度が速過ぎて相手から抜いてないように見える。
気付いた頃には、もう斬られて倒れている。回避不可能な必殺の剣。
ドサッ
「グハッ!何が起きた?血が出てる?」
《戦車》を冠する事だけはある。その体は硬く胴体切断には至らなかった。
ただし、ダメージは相当なもので体に力が入らず地面に這いずり理解出来ていないようだ。
「ハァハァ、奥義を使っても死なないとは頑丈なヤツだ」
カズトも奥義を使った反動で、その場から動けないでいる。今、この場を襲われたりしたら太刀打ち出来るか分からない。
だから、本当なら使いたくなかった。足腰が立たず、まともに歩けない。最早、いつ気絶してもおかしくない。
「クルミ死ぬの?死ぬの嫌。【武器庫】解放」
倒れたまま何かやる気か?!
《戦車》の背後から次元が揺れてるような不思議な空間が十数mに渡り出現した。
「あれが【武器庫】なのか?」
空間が歪んで良く見えはしないが、空間の中に様々な武器が収納されてるのが遠目で見える。
あそこから武器を一気に射出されたら、ここら辺は一瞬で更地になる様子が容易に想像出来てしまう。
「クルミを【修理】」
【武器庫】から機械仕掛けの腕が何本か伸び《戦車》を掴み、まるで工場で車を修理してるように治療してる。
見た目的には全然治療してる風には見えない。が、《戦車》の体が治っていく。
本来なら、この時を見逃すカズトではないが【紫電一閃】の反動で体が動かない。
機械仕掛けの腕の他にもドリルやら溶接に使うトーチ等が次々と伸び治療という名の修理で傷口は完璧に塞がり、ものの数分で無傷な状態へと戻った。
「チクショウ、動けよ。早くとどめを刺さないと」
「時間切れ。クルミ、眠る」
《戦車》が瞼をユックリと閉じた。その間、時間が遅くなったと錯覚したような変な感覚に陥る。
ドクンドクン
「ぷはぁー、久々のシャバだぜ」
《戦車》が瞼を開けると外見は変わらないが、魔力量がグゥゥゥゥゥンと上昇し、見る人が見れば別人となっていた。
動けないカズトから自然と汗が滲み落ちる。あれはヤバイと、戦ったらダメだと本能が訴え掛けて来る。
「おめぇか?クルミを倒したのは?」
「それがどうした?」
無言を貫いても殺られるだけだ。なら、少しでも時間を稼ぎ体を癒す。それが最善の策だろう。
「なに、感謝してるんだぜ。オレが外に出られたのは、おめぇのお陰だからよ」
「そうか、それは良かったな」
「だからよ、お詫びと言って何だが……………今直ぐに殺してやるよ」
黒刀・影花を手にすると、動けない俺に対して容赦なく襲い掛かって来た。




