183食目、《戦車》vs剣
少し時間を遡り、闇の聖剣ジャックザリッパーの技術により《吊るされた男》から《戦車》を引き離す事に成功したカズト。
「剣の勇者カズト……………カズト。うん、覚えた。じゃぁ、カズト戦う?」
ぶつぶつと俺の名前を呟く《戦車》。呟き終えると、戦闘のスイッチみたいなものがあるのか切り替わるように殺気を解き放つ。
「ぐっ!来い」
「じゃぁ、行くよ」
速い!戦闘慣れしている動きだ。あっという間にカズトとの距離を詰めた。
いつの間にか手元に剣が握られており、剣先がカズトの首元を捉えてる。
「そう簡単に首を取れると思うなよ」
ガキン
聖剣エクスカリバーを鞘から引き抜き防御する。だが、《戦車》の細身の腕から考えられない程の力強さによりカズトの腕が痺れる。
どうにか軌道をずらせる事に成功した。あのまま刃を交わしていたら、カズトの方が力負けして胴体から頭が落ちていた。
「今ので殺したと思ったのに」
ハッキリ言って《戦車》は強い。魔神教会の幹部に所属してるだけあって身体能力が、ずば抜けて高い。
だが、《戦車》の剣が聖剣エクスカリバーよりも弱かったのか?ボロボロとなっていた。
「剣が壊れちゃった」
「もう武器がないんだ。大人しく投降してくれないかな?」
「ん?クルミは戦えるよ?」
瞬きをする暇もない程に《戦車》の手元に別の剣が握られていた。
「それは【武器創造】?いや、それにしては速過ぎる。もしや【武器召喚】か?」
【武器創造】は、イメージ力が必要でいくらかタイムラグがある。【武器召喚】なら【転移】と同じで一瞬だ。
「ハズレ。正解は、【武器庫】。そんな雑魚能力じゃない」
【武器庫】だと?!持ってる奴、初めて見た。
【武器庫】は、簡単に言えば【武器創造】と【武器召喚】を足したような技術だ。
【武器創造】は、時間は掛かるが無限に生み出せるのに対して【武器召喚】は、時間は一瞬だが武器に限りがある。
その欠点を失くし良い所取りをしたのが、【武器庫】という技術だ。
過去にこの技術を持った奴がいたらしいが、そいつは一国を滅ぼしたそうだ。
「正直に話しても良いのか?」
「別に知られたところで、クルミには勝てない」
手数の多さでは確かに勝てない。だが、こっちは量より質だ。聖剣に限らず聖武器は、様々な形態を取る事が出来る。
「俺も本気を出すか。雷の聖剣タケノミカヅチ【疾風迅雷】」
「バチバチしてる」
「行くぞ」
一気に勝負を決める。無限に武器を時間掛けないで生み出せるって事は時間を掛けると、こっちが不利になる一方だ。
「速いけど、クルミより遅い」
「ふん、そっちこそ武器が柔いな」
電気により熱を持った刃は相手の剣をバターのように切り落とす。刃が欠けたとか砕けたじゃない。
文字通りに《戦車》の剣を切り落とした。その断面は熱で溶け、まるで炉にでも入れたかのように溶けた鋼は固まってる。
「なら、クルミはもっと強い武器を出すまで」
「それなら、俺はもっと速く切りつける」
刃先が失くなった剣を投げ捨て新たに剣を召喚し握る。前よりも頑強のようで壊れるまでの切り付ける回数が増えている。
「硬いな」
「もうカズトの強さを覚えた」
またも《戦車》の剣を壊すがキリがない。壊す端から剣を召喚し強くなっていく。
カズト自身も早く倒そうとするが決め手が見つからないでいる。だが、勇者としてここは引けない。
「名前はないけど、これがカズトを殺す剣」
今まで召喚し壊した剣と一線を画してる。刃先から禍々しいオーラが見え、何か呪われそうな雰囲気を持つ。
「もっと速く強く【鬼出雷動】」
【疾風迅雷】よりも激しい電気がカズトに包み込んだ瞬間、《戦車》の目の前から消えた。
「そこ」
「ハズレ。それ残像だ」
カズトを切り付けたと確信するが手応えがなく、くうを切った。《戦車》が切ったカズトは幻のように消えてしまった。
「今度こそ」
「それもハズレ」
またもや残像だ。《戦車》の動体視力は随一だが、それでも見分けがつかない。
それに普通、残像には気配がないものだが、カズトが作り出す残像には気配があり、切り付けるまで本物と分からないでいる。




