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勇者レストラン~魔王討伐して、やることないのでレストランを開きました~  作者: 鏡石錬
1章グフィーラ王国・古都

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31食目、レイラの姉とカズトのグルメ対決

 昨日の裁判はカズトがレイラとドロシーの言う事を何でも聞くという形で終了した。カズトが約束を反古しない様にミミは"何でも言う事を聞く券"という短冊型の魔道具を作成しレイラとドロシーに渡した。これで、カズトは逃げの選択を封じられた訳である。



 裁判の件は諦め、カズトは宿泊客の朝食が済み昼営業の仕込みをしてる最中、扉を潜る者がいた。

 常連客なら時間は知ってるだろうし、おそらくこの近くの者ではないのだろう。カズトは仕方なく、厨房から顔を出し対応する。


「すみません、まだ営業前でして━━━」


「おぉ、勇者殿ではないか。我が娘レイラはいるか?」


 店に来たのは、王都にいるはずの王様であった。しかも、妃様まで一緒だ。見たところ二人だけで護衛の者は見当たらない。

 まぁ護衛がいなくても、この店以上に安全な場所なんてアギド中探しても存在しない。


「これはこれは、王様にお妃様ではありませんか。レイラなら奥にいますが、お呼び致しましょうか?」


「いや、忙しいのであれば良い。今日は久しぶりに、勇者殿の料理が食べたくなってのぅ。それに、ちと話したい事と会わせたい者がいるのじゃ」


 会わせたい者?一体誰だろうか?俺の知ってる人か………まぁ会ってみれば分かるか。


「ほれ、入って来い」


「はい、父上」


 父上?声からして女性だと思うが、レイラ以外に娘がいるなんて聞いた事ないぞ!それに、声が何処かレイラに似てるような気がする。

 うん?ちょっと待て!レイラと結婚したということは、俺の義姉になるではないか!いきなり緊張してきた。


「お初にお目にかかります。勇者カズト様………グフィーラ王の長女、アテナ・グフィーラと申します。この度はよろしくお願い致します」


 すぅーーっと手を差し出されカズトも差し出し握手をする。だが、アテナが力任せで握りカズトの手がギシギシと骨が折れる様な擬音が鳴ってるのではないかと微妙に痛い。勇者の称号の効果でステータス補正が掛かってるお陰で、少し痛みを感じる程度ですんでいる。

 俺に何か恨みでもあるのだろうか?今日、初対面のはずだが………うーん、初対面だよな?


「よくもレイラをタブらかして、ウチの愛しのレイラに━━━」


 握手という名の暴力を継続の中、アテナはスゴい形相でカズトに迫った。勇者カズトでさえ、引く程スゴい顔をしてる。

 よっぽど、妹が大事を通り過ぎて大好きなんだな。好きは好きでもライクじゃなくラブの方だろう。ていうか、これは完全にシスコンだな。


「勇者殿、どうしてもアテナが会いたいと連れて来たのだが………その~………すまん」


 娘の代わりに王様が俺に頭を下げる。まだ、営業前だというあってお客はいない。そのお陰で誰にも見られずに済み変な噂を立てられずにすんだ。

 娘の行動に対して父親である王様は謝罪と同時に引いてる。カズトも引いてるが、握手の痛みの方が勝った感じである。


「王様、頭を上げて下さい。その代わりに………これをどうにか出来ませんか」


「これアテナ、勇者殿に迷惑でしょう」


「むぅ、母上が言うなら止めます」


 王様に頼んだはずなのに、王妃様が代わりにアテナを止めさせる。カズトは王様を見るとソッポを向いてる。

 王様ぁぁ~、本当に情けないですよ。これは、完全に尻に引かれ(敷かれ)てるな。

 やはり、どこの世界でも女性が強いのか。ウチの女達も強いからな。人の事を言えない立場である。


「そうだわ、勇者カズト………いえ、この腐れ野郎………ウチ達を満足させられる料理が出せたらウチのレイラを諦める事にします」


一国の姫様が言うようなセリフじゃないだろ!


「もし、出せなかったら?」


「それはもちろん、レイラを連れて帰ります」


 アテナの提案に一瞬考える。ここは男気を見せる時だ。勇者………いや、男カズトその勝負受けようじゃないか。

 アテナは俺の義姉だ。義姉に認められないままでは、この先この店もやってはいけないだろう。


「分かりました。お義姉さん、その勝負受けましょう」


「なっ!まだ、あなたのお義姉さんではありません。このグズ野郎」


「いいのか?勇者殿………アテナはこう見えてグルメじゃぞ」


 望むところだ。俺は料理人だ。そういう者を打ち負かせて美味しいと言わせてこそ料理人冥利に尽きるってもんだ。

 それに、俺達が魔王討伐して王城に行った時やパレードの時も見掛けしなかったが、何処かに出掛けてたのか?レイラからも姉がいるって話聞いた事ないし。


「アテナはな、シャルウィッド国………つまり、森妖精族エルフの国へ嫁いだのじゃよ」


 森妖精族エルフの国へか。森妖精族エルフといえば、ベジタリアンな種族だ。動物を由来とした食材は一切口にしない。

 というか、食べられない。例えば、肉や卵の匂いだけで不快に感じてしまう程だ。


「お義姉さんも野菜主義ベジタリアン?」


「いや、むしろ肉に飢えてると言った方が良いじゃろう。久し振りに帰航した途端、肉料理を頼む位じゃ」


 なら、大体出す料理のイメージは固まってきた。後は、作るのみだ。

 王様達三人を個室へ案内させ、俺はお義姉さんを納得させる料理に取り掛かるのである。

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