179食目、銃の助っ人
「大丈夫でしたか?」
ケンゴの周辺に植物を生やし傘にした。これで植物が屋根となり重力を防げる。
「ムフフフフ、生きていただと!いや、それよりも何で立っていられる?!」
「そんな無意味な質問をしていて良いのですか?」
アシュリーが上を指す。無数の隕石が《星》に向かって落ちて来る。
その余波でアシュリーとケンゴまでも襲い掛かると思いきや、アシュリーは更に自分らの周辺に木々を覆い隠すように生やし盾にする。
「【花盾】、これで大丈夫なはずです」
「ムフフフフ、こちらも切り札を持ってるのですよ」
そうでもなきゃ、冷静でいられる訳がない。
「ムフフフフ、受け切れないなら何処かへ飛ばせば良いだけの事ですよ。座標を設定【転移星】」
無数の隕石を転移させ、他の被害出そうな箇所へ落とそうとした。だが、その考えは間違いだと気付く。
パリン
「なっ!【転移星】が割れただと?!」
「ゲホゲホ。ふん、そんなチンケな技で俺の奥義の一つを敗れるかよ」
「喋らないで。全身の骨が折れてるのよ。【回復】」
淡い光がケンゴを包み込む。本来勇者が苦手とする魔法をアシュリーが使った。それも攻撃魔法よりも上位にある回復魔法をだ。
「ムフフフフ、ならこれです。【何でも吸い込む黒星】」
《星》は余裕そうに真っ黒いビー玉程の球体を上空へ発射した。
一見、ただの黒い玉だが、その周辺は強風が渦巻いている。ケンゴが落とした隕石も吸い込まれ黒い玉と共に消滅した。
「ハァハァ、くそ!」
「ケンゴは、ワタシが守ります」
「ムフフフフ、守れますかねぇ?瀕死の仲間なんか置いて逃げれば良いじゃないですか?」
「仲間ならココにいるぜ」
棒らしき物体が声がする方向から《星》に投げられ向かって来る。
いや、伸びて来てるのか?投げた訳ではなく、自重で折れずにグングンと伸びて迫って来てる。
「くっ、声を掛けては奇襲の意味はありませんねぇ」
「でも、驚いたろ?攻撃をしようとする手を止めれば御の字だ」
あのまま駆けていれば、おそらくタケヒコの援護は間に合わなかった。
それならばと、タケヒコの聖武器である聖棍ニョイボウを伸ばした方が早い。
「よっ、待たせたな」
「タケヒコ」
「タケちゃん」
「ここは下がれ。オレが相手してやる」
「しかし━━━━」
タケヒコからの殺気によりケイゴは、ゴクンと言葉を噤む。アシュリーもゴクンとノドを鳴らし、ケイゴを担ぎ上げ後退する。
「ムフフフフ、今度は棍の勇者ですか?」
「よくもケンゴをやってくれたな」
棍の勇者は、獣人の国アルカイナで召喚された勇者だが、その容姿は尻尾を覗けば人間と大差がない風に見える。
「ムフフフフ、あの虫の息で生きていられますかな?」
「うん?もしかして地雷を仕込んでた?」
ギクッ
「な、何故それを」
そもそも見えないはずだが、それなのに今来たばかりの棍の勇者が知ってるんだ?!
「これだろ?」
グシャグシャに握り込まれた物体を見せ付けられる。それが地雷なのか仕掛けた本人でさえ、面影がなく分からない。
「ちょっと待て!地雷だぞ。下手に触ったら爆発するだろ?」
「獣妖族の【恐】って知ってるか?」
「あぁ噂程度なら」
話に付き合う振りをして、新たな地雷を作る。【空気地雷】、空中に漂い無色透明無臭であるため見付けるのは不可能に近い。ただし、作った本人には見えている。
当たれば木っ端微塵で頑丈な勇者でもタダでは済まない。腕の一つや二つは吹き飛ぶはずだ。
「はぁ~、だからさ。話してるのに余計な真似をするんじゃねぇよ」
ドカァーン
わざとタケヒコは、空中に漂う【空気地雷】の一つをニョイボウを伸ばし突っついた。
爆発するが爆風は、タケヒコに届いておらず【空気地雷】の残骸が地面に落ちる。
「なっ!」
意味が分からない。もしかして、【空気地雷】が見えてるのか?!
「オレも獣妖族の一人でさ。【恐】が使える訳でね。その【恐】で、お前のチャチなトラップなんざ、お見通しな訳よ」
「!!」
それじゃぁ、仕組んだ地雷は全てコイツに撤去されたと言うのか?!そういえば、地雷の爆発音がしないと思っていた。
コイツの仕業だったのか!
「ムフフフフ、折角の芸術を台無しにしやがって」
「芸術?」
「そうだ、地雷による爆発と響き渡る悲鳴。そして、その辺りに吹き飛ぶ肉片が芸術と言わないで何と言う」
「狂ってるな」
何処かの誰かさんが芸術は爆発だと言っていたような気がするが、それよりも狂ってるとタケヒコは引く。




