SS6-16、赤薔薇隊隊長ライラのスローライフ〜ウオッカ〜
ゴボゴボゴボゴボぷはぁー
「うぃー、あれ?アリスが三人いる」
生ビールを瓶丸々一本飲み干してしまったライラの瞳は、焦点が合っておらず顔面真っ赤て完璧に酔っ払ってる様子だ。
「ひっく……………あれぇー、アリスが回ってる」
ぐてぇーっと、テーブルに突っ伏してしまった。それから動かず、グゥグゥスゥスゥと寝息が聞こえてくる。
クンクン
「あれっ?これはビールじゃない?」
ライラが飲んだ酒瓶の匂いを嗅ぐカズト。ビールからするはずのポップの香りがしてこない。
それよりも消毒に使うエタノールぽい匂いがする。体に無害だが、これはアルコール濃度が高い。
ペロッ
「もしかして、ウォッカか?」
ウォッカならライラが酔い潰れるのも納得出来る。なにせ、ウォッカは40度以上とアルコール濃度が高い。
でも、店にウォッカってあったかな?俺は、ビール瓶にウォッカなんて入れた覚えはない。
「あら?もう、ライラはお眠なのかや?」
「えぇ、そのようです。仕方ないので、ベッドへ運びましょう」
シャルがライラをお姫様抱っこをし、アリスのベッドへ運んだ。
パクパクゴクゴク
「勿体ないのぉ。寝ちゃうとは」
それは、あんたのせいだろとツッコみたいが口にしたら不敬になりそうだ。
そんなこんなで、ライラが寝た後もウナギとお酒を堪能しつつ、結局解散したのは、およそ2時間後だ。
「んっ、もう朝?」
窓から日の光が挿し込み、朝が来た事を知らせてくれる。何時寝てしまったのか?ライラの記憶は曖昧だ。
ヌメヌメヘビを食べている所までは覚えているが、そこから先の記憶が思い出せない。
「うっ、頭が痛っ!」
「むにゃむにゃ」
上半身を起こそうとした結果、ズキンズキンと頭が響く。それに少し気持ち悪い。吐き気まではなくとも胸焼けもする。
「アリス?では、ここはアリスの部屋?」
自分の隣にアリスが気持ち良さそうに寝ている。どうしても思い出せないが、あのまま寝てしまったと無理矢理にでも納得する。
ベッドから降りようと体を動かした時、毛布が上半身からハラリと捲れた。
「えっ!」
なんと服は着ておらず、全裸であった。
「き、きゃぁぁぁぁぁぁ」
「な、なんじゃ?!敵襲か!」
「な、なななな何で服が!」
毛布が捲れた事により自分が全裸だと気付いた。気付いてしまった。騎士じゃなく、女ぽい悲鳴が部屋中に響き渡る。
「何を騒いでおる?」
「あ、アリスあなたも服を着ていないじゃない」
「妾は寝る時は全裸じゃぞ。寝ている時に服は邪魔で仕方無い。湯船と同じじゃ」
全然同じじゃない。お風呂は、服が濡れるから脱ぐのだ。だが、睡眠時は濡れる心配はない。それどころか、病気になる恐れがある。
「まさか、アリスが脱がしたの?」
今まで酒により酔っ払った事はあれど、その場て服を脱ぎ捨て寝た事はない。それをやったら街を歩けなくなる。
「ムフフフフ、さてどうじゃろうな?」
「ちょっ、ちょっと教えなさい。お願いだから教えて」
酔っ払ってカズトの目の前で脱いでいたら、カズトと顔を合わせなくなる。むしろ、ここに来れなくなる事態だ。
「分かった分かった。お主の服を剥いだのは妾じゃ。つい、クセでのぉ。添い寝する者の服を剥いで抱き枕にしてしまうのじゃ」
何それ!その傍迷惑なクセは!やられた方は溜まったものじゃない。
「もちろん男子にはやらんよ?」
「何で疑問系なんですか?!ハッキリしてください」
アリスならやってそうで怖い。アリスの毒牙に掛かった男がいたらご愁傷様だ。
「冗談じゃ。やっておらん」
「ほっ」
きっぱりと否定した。取り敢えず安心した。
「それで、お主の柔肌は気持ち良かったのぉ。今宵も抱かせてくれぬか?」
「い、イヤです。アリス、変なところを触ってないでしょうね?」
「変なところって何処かのぉ?妾、分からん。ライラ、教えてくれぬか?」
質問を質問で返すアリスの口元がニヤニヤと口角を上げている。明らかに誂われているようだ。
ズキンズキン
「うっ」
「んっ?どうした?」
「頭がズキズキする」
「それは二日酔いじゃと、妾は推測するのじゃ」
アリスの悪癖の衝撃から頭の痛みを忘れていた。
これが二日酔い?初めての経験である。今まで酔っ払った子供はあるが、翌日にはアルコールは完璧に抜けていた。
ヤバい、吐き気がする。気持ち悪くなってきた。このままでは、色々と失うものがあるかもしれない。




