SS1-52、帝国の三勇者〜拳に因縁をつける〜
「お嬢ちゃん、ここは遊びの場ではないんだ。遊びたいなら外で、オママゴトでもするんだな」
「んっ?リンカに言ってるの?」
リンカ以外のメンバーは、やっぱりこうなったかと呆れている。相手は一番弱そうなリンカに因縁を付けてストレス発散しようという腹積もりなのだろうが、それが一番の間違いだとこの場に冒険者や受付嬢は気が付かない。
「おい、後ろのお前らも大変だな。こんなお嬢ちゃんのお守りをしなきゃならないんだからな」
「「「「キャッハハハハハ」」」」
明らかに挑発しているような物言いと仲間であろうと思われる男共がバカにした笑い方が五月蝿い。
リンカをバカにされ、いち早く動こうとしたのはジャックだが、ココアが手を出し静止させる。
「ココアさん、何で止めるんですか?」
「リンカの獲物を取る気があるのなら止めませんよ?後でリンカにボコボコされるのがオチですけど」
ココアに言われて初めて気付いた。リンカから殺気が漏れ出てる事に。ゆっくりと川が流れるように静かな殺気だ。よっぽど観察しないと気付かないレベル。
「オジサンの名前は?」
「んっ?オレか?オレはな、ランバルトだ。Bランク冒険者で、ここら辺では有名なのだが知らねぇのか?よっぽど田舎から来たんだな」
「ランバルトさんを知らねぇとは失礼なヤツだな」
「田舎者だから仕方ねぇよ。こんなガキが冒険者になるくらいだからな」
「違いねぇ」
「「「「ギャッハハハハ」」」」
更にリンカの殺気が一段と膨れ上がる。ここまで来ると気付く者も出て来てもおかしくないはずだが、リンカのパーティメンバー以外誰もまだ気付かない。
ニッコリ
「ねぇ、リンカに戦い方を教えてよ」
「おぉ良いぜ。表に出な」
ランバルトに着いていくリンカ。それを見送るメンバーの面々。楽しそうだと、酒を飲んでくれてたランバルトの仲間らしき男共が数人外に出て行った。
「あのぉ、止めなくて良いんですか?」
受付嬢が聞いて来るが、誰も動こうとしない。
「行く必要あるか?オレはないと思うな」
「私もそう思います」
「リンカの姉御なら心配いらねぇぜ」
「ご主人様が言うならそうなんだろう」
仲間ではないのか?明らかに小さな女の子がケガをするかもしれないのに、追い掛けもしない。
そんな態度に受付嬢は憤慨してる。その様子にココアは気付いて一言申した。
「この中でリンカが一番強いから安心して。それと見ず知らずのリンカを心配して怒ってるのよね。ありがとう」
「えっ?!」
「なんだ、そうだったのか?認めたくないが、オレよりも強い」
「えっえっ?」
受付嬢には理解不能であった。怒りは霧散したが、その代わりに頭上にハテナがいっぱい浮かんでいる。
「それで、この子の冒険者登録したいけど、良いか?」
「えっ?あの女の子では?」
「やっぱり勘違いしていたか」
「仕方ないです。これ私のギルドカードです」
「確認致します。えっ?エ―――――」
「シィィィィ、ここではナイショでお願いします。要らぬイザコザが起こりそうなので」
ココアのギルドカードを提示した後、他の面々もギルドカードを提示した。
「し、失礼致しました」
「因みにさっき出て行った女の子は、こにょこにょ」
「えっ!ほ、本当なのですか?!」
「あぁマジの大マジだ。だから、オレらが心配してない理由は分かったかな?」
メグミの話が本当なら心配をする必要はない。だが、その代わりにランバルトの方が大怪我しないか逆に心配になってくる。
まぁ自業自得な上、冒険者のイザコザにはギルドはよっぽどの事がない限り関与しないのが常識だ。
関与する場合は、犯罪紛いの行為が認められた場合。
「それでこの子の登録良いかな?」
「あっはい。畏まりました。では、試験がありますので少々お待ち下さい」
冒険者の登録にはニ種類ある。一つ目は、実技試験を行い適当な強さがある事を認められる事。
もう一つは、国や重要機関に推薦される事。後者は勇者や国等で仕えてないと先ず貰えないので、ほとんど前者となる。
「こちらの紙に記入をお願い致します。代筆はどうしますか?」
「オレが代わりに書こう」
「ご主人様、すみません」
魔物から獣人となったアクアは、文字なんか書けるはずはなかった。
まぁ大抵、アクアは主であるメグミと離れる事はないだろうから文字の読み書きは出来なくても不便じゃない。




