SS1-51帝国の三勇者〜古都の冒険者ギルド〜
レストラン〝カズト〟にて朝御飯を食べた後、リンカ達一行はグフィーラ王国・古都にある冒険者ギルドに来ていた。
働かず者食うべからずと言うようにリンカの実の兄が経営するレストランを拠点をするとしても飲食代やら滞在費やらを払わないといけない。
カズトなら無償で面倒見てくれると長年妹をやっているとカズトの性格は十二分に理解してる。でも、それだと自分をダメにしてしまう。
「リンカ、もうちょっと休んでも良かったんじゃねぇのか?」
「体が鈍る」
「リンカらしいですね」
「まぁ確かにな」
「リンカの姉御、冒険者ギルドはこちらです」
「ジャックは来た事あるの?」
「へい、Aランク以上になると国から国を跨ぐものでさ」
度々忘れてしまうがジャックはAランク冒険者だという事に。今はリンカに付き従ってるが、こう見ても一流な冒険者なのだ。
「アクアも冒険者登録しないとな」
「ご主人様、その冒険者登録するとどうなる?」
「一種の身分証明みたいなものだ。街の出入りに金が掛からない」
それが一番の理由で身分証明出来ないと街に入る時に銀貨3枚程取られる。だけど、何らかのギルドカードを所持してると免除される。
「そうなんですね。ご主人様は物知りです」
「いやぁー、照れるな」
「常識な事で照れられたら、こっちまで恥ずかしくなるから止めなさい」
「良いじゃねぇかよ」
「リンカの姉御着きました。ここが冒険者ギルド古都支部です」
「おぉ、大きい」
リンカ達が所属していた帝国ブレインズと比較しても遜色ない。それを考えると王都の冒険者ギルドは、どんだけ立派なのかと考えてしまう。
「さてと入るか」
「俺は、ここで別れるとしよう」
「ゴン、行っちゃうの?」
「あぁ、俺は冒険者を引退しようと考えてるんだ」
ゴンの引退宣言に一同の目が点になる。カズトのパーティメンバーであったため、おそらく知られれば大ニュースとなるはずだ。
「理由を聞いても」
「もう限界を感じてな。もうAランク相当の働きが出来なくなってると俺自身思ってるんだ」
ランクが上がって行くに連れ重圧も増して行く。ゴンは、それにもう耐えられないらしい。それに前は楽に倒せていた魔物も今では苦労する始末。
「兄さんならきっと悲しむ」
「実はカズトには、もう話してある。残念がってたが、心良く了承してくれた」
それなら仕方ない。ゴンが一緒のパーティにいたなら頼もしいと思えたが、諦めるしかない。
「アタシもここで別れるよ」
「ルカも?!」
「アタシは元々カズトが持つ聖剣を超える剣を打つためにこごで来たんだ。ここにある鍛冶師ギルドに行く積りだ。なーに、古都には当分いる積りだ。会いたい時に何時でも会えるさ」
そう告げるとルカールカは、踵を返し手をヒラヒラと振って去って行った。
「じゃぁな。頑張れよ」
ルカールカとは反対方向へと歩みをゴンは進める。
「リンカの姉御、ここは見送るべきです。男二人が決めた道、俺達には止められねぇです」
シュルシュルと何かが回ってジャックの頭にクリーンヒットする。落ちた物を見ると、それは金槌であった。
「痛っ!誰だ、こんな物を投げるヤツは!」
(((これを投げたのはルカだ)))
土精族の種族技術に槌限定で、森精族の弓顔負けの命中精度である程度の距離ならば命中する技術がある。
このメンバーでそれを知らないのは、【鑑定】が使えないジャックとアクアの二人だけだ。
「きっと悪い事をしたから」
「リンカの姉御!悪い事ってなんですか?!俺、何かしました!」
「それは秘密」
スキップしながら先に冒険者ギルドの扉を誰よりも早く開けて入るリンカ。
リンカに続いて入る面々。それらを品定めするかのように注目を浴びる。その中で注目を浴びてるのはリンカだ。
なんてたって、一番背丈が低く子供のようにしか見えない。まぁ簡単に言えば、一番弱く見えている訳だ。
「冒険者ギルド古都支部にようこそ。クエストの依頼ですか?それとも受注ですか?」
「そのどちらでもない。冒険者登録をしに来た」
リンカが、そう告げた途端この場にいる誰もが勘違いをした。リンカが今から冒険者登録する初心者なのだと。




