表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/530

29食目、ワィヴァーンの黒幕を捕まえる

 少し時間は遡り、ワイヴァーン全部討伐されたところ街道沿いの森の中。


「クソっクソ!何でドラゴンが殺られるんだよ。この役立だずがぁぁぁぁ」


 一見三十半ばに見える男はローブを深く被り顔を隠しワイヴァーンに対して悪態をついている。

 この男は無知で知らない。ワイヴァーンはドラゴンの中でも下級の事を………。


「クソっ!金に糸目をつけずに買ったのに、折角の計画が台無しだ。チクショォ………あれは勇者だったか………許さぬ許さぬぞ」


 叫んだお陰で少し冷静になったのかキビスを返し、ここは逃げる選択をしたのだが遅かったようだ。

 男の周囲の地面が盛り上がり一瞬にして土のドームが出来上がり、男を閉じ込めたのである。


「うぎゃぁぁぁぁぁぁ」


 男の悲鳴にカズトは駆けつけ"ヤマタノオロチ"で土を操作しドーム内にいる男を両手両足を手錠の様に拘束する。

 これで下手に逃げられないだろう。そう判断したカズトはドームを解除し男を外に出す。


「ぐっ!お、お前は勇者か!」


 男は目の前にいる者がカズトだと知り、血の気が引き顔色が蒼白くなる。まるでこの世に絶望したかのようだ。まぁ常識的に考えて勇者に勝てると思うのは愚か者がする事だ。


「本当は今直ぐに尋問に掛けたいところだが………それは騎士隊に任せるとしよう」


「ヒィィィ!ゆ、許してくれ。お、俺は頼まれただけなんだ」


「ウソつけ、ならこれは何だろうな?」


 カズトが手に持っているのは、一見ただの木の筒しか見えないが魔道具の一種だ。それも禁忌とされる類いのものだ。

 この魔道具の正式名称は隸属の吹き矢、筒と矢がワンセットの魔道具で矢に刺さったモンスターは使用者の命令を何でも聞くとされているらしい。

 らしいと言うのは、遺跡から発見された遺物アーティファクトの一つであり、その用途が不明な物が多いのだ。

 それに加え、遺物全般が禁忌扱いとされ発見された物は厳重に保管又は封印されている。なので、一般人が手に入れるのは、まず不可能である。

 その事からカズトに拘束された男は間違いなく裏の人間という事になる。遺物を持ってるだけで死刑になる事さえある程、遺物は危険過ぎる代物なのだ。


「し、知らん!そんな物は知らん」


 往生際が悪いな。後は騎士隊に渡せば何処の組織の者かは判明する事だろう。でも、今は討伐したワイヴァーンの素材もとい肉を回収するのが大切だ。


「勇者様、探しましたぞ。ほとんどのワイヴァーンを勇者様が倒したので、このワイヴァーンはどうするか決めそこねてるのです」


 ふむ、そうだな。このまま何も報酬出ないと、ここに集結した冒険者は骨折り損のくたびれ儲けになってしまう。ケガした者もいるし、武器防具が壊れた者等完璧な赤字になるのが目に見えている。

 そこでカズトはとある提案をする。


「肉は貰うが、このワイヴァーンの素材は全てここに集まった冒険者に与えよう。換金するなり武器防具の素材するなり好きにするが良い」


「「「「「「うおおぉぉぉぉぉぉぉ」」」」」」


 カズトの宣言に冒険者達は大喝采、雄叫びを上げる。ただし、余りの歓喜で一人を除けば、1つ大問題がある事に気づかない。

 その問題とは、この量のワイヴァーンを誰が捌き、誰が運ぶのか?常識的に考えて物理的に時間が掛かり過ぎる。

 馬車はワイヴァーンに壊され、素材を捌き専門の職人がいない。運搬にもお金が掛かり、むしろ赤字になってしまう。それゆえに、あまりにも割りに合わない。


「あっ!これどうやって運ぶんだ!」


 冒険者の一人がようやく気付いたようだ。このままでは、赤字━━借金をするのに変わりない。

 もし、素材を持ち帰られなければ依頼失敗と見なされて違約金が発生してしまう。


「大丈夫ですよ。俺、アイテムボックス持ちなんで、全ての運搬任せて下さい。古都のギルドで大丈夫ですか?」


「おぉ、助かる。流石は勇者様だ!こんな大容量のアイテムボックスを持ってるなんて」


「後は素材に分けて捌くんで、お任せを。代わりにこいつを見張って貰えませんか?こいつが今回の犯人、ワイヴァーンを操ってました」


「何!本当か!それは任せろ」


 ワイヴァーンの討伐に出る位だ。こんな大所帯の群れじゃなかったら勝っていただろうしな。任せても大丈夫だろ。


 ワイヴァーンの素材は次の通りである。

 ・爪や牙:防具や武器に加工

 ・目玉:ポーションや強心剤に加工

 ・皮膚や翼の皮膜:皮鎧に加工

 の以上である。


「さてとやるか。形態変化モードチェンジ料理の聖剣"包丁エックス"」


 いつもカズトが厨房で使う包丁へと変化した。見た目は何の代わり映えもしない包丁だが、その性能は聖剣だけあって段違いなのだ。


「一気に捌くか。いっせぇぇぇのせ、【瞬間捌き】」


 ザッシュ

 無駄がない繊細な動きで適格に捌き切る。この現場にいるベテランな冒険者達でもカズトの動きが見えない。もし、カズトの動きを目で追えるのは同じ勇者だけであろう。


「ふぅ、さてと次は血抜きか。とりゃとりゃとりゃ【一瞬血抜き】」


 空中へと飛び上がり残像が残る速さで、それぞれワイヴァーンの肉体に一刺しする。刺した箇所から赤い液体が噴き出す。

 噴き出した血をアイテムボックスから取り出した空き瓶に一滴も地面に落とさず回収した。

 この世界アギドでも日本でも血自体を食材にするという事に馴染みはないが、この世界アギドでは魔法の媒体として、フランスやドイツでブラッドソーセージというソーセージに使われる。


 ワイヴァーン五十体分の肉、素材、血液をアイテムボックスに仕舞うとカズトは冒険者達にワイヴァーンの肉を簡単に調理してご馳走する事にする。


「勇者様!良いんですか?俺達何もしてないのに………」


「そんな事ないですよ。ここで足止めしてくれたお陰で古都や王都を犠牲にしなくて済んだんですから」


 カズトが作るのは、ワイヴァーンの肉に加えピーマン、トウモロコシ、玉ねぎ等の野菜を向後に串へ刺し焼く。つまり、バーベキューとして定番の串焼きだ。

 それらを冒険者達に大盤振る舞いで全員に行き渡る様に配っていき、いつの間にか宴会になってしまう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ