170食目、剣と本、宝物庫へ向かう
「後の二人は……………常に移動しています。この方角は……………どうやら宝物庫に向かってるようです」
魔物達が暴れてる箇所から離れ何処かに向かってるであろう黄色の点が2つ確認出来る。
それも凄い速度であり、後ものの数分で宝物庫に到着するであろうと推測できる。
「なにっ!宝物庫じゃと!あそこには国宝級の宝石や宝剣等が保管されてるはずだ」
「それと…………もう一つ【魔神の右手】が眠っておられます」
【魔神の右手】は、かつてアグドを壊滅的に破壊しようとした魔神の成れの果て。七つに分割され封印されている一つだ。
シロを含めたアグドにいた七柱の神の内、五柱で封印した。神であるからして完璧に死を能える事は、他の神の力を持ってしても出来なかった。
だが、その封印も数百年前に弱まり、封印してあった道具が壊れ、封印してあった魔神の一部分全てが各地へ飛んだ。
ただし、その当時の勇者が魔神の各パーツを見つけ出し再び封印し、各国の王へと預けた。
その一つが、魔法大国マーリンにある訳だ。そして、魔神教会の狙いが【魔神の右手】なら盗られるのだけは阻止しないとならない。
「マーリン女王陛下、こちらには僕とカズトで向かいましょう。この銃使いは、弓の勇者アシュリーと銃の勇者ケンゴにお任せしよう。同じ遠中距離型なら牽制になるだろう」
「「「了解した」」」
「後の者は、魔物を倒しつつ国民の避難と魔神教会の幹部の確保だ。さぁ行くぞ」
「陛下、我々も向かいたいと思います」
青龍隊の面々も魔法大国マーリンの危機にかってでた。数が数だから人手は猫の手を借りたい程に足りない。
「よかろう。グフィーラ王の名の元に出陣せよ」
「はっ!グフィーラ王陛下の仰せのままに」
青龍隊隊長ビィトが、グフィーラ王に片膝をつき頭を垂れる。数秒後、顔を挙げ部下を引き連れVIPルームを後にする。
「お父様、私も出陣します」
「それはならん」
「お父様!」
「お前は勇者パーティーの実績があろうが、今は王族としてここに来てるのだ。お前に何かあっては困るのだ」
グフィーラ王陛下の正論にレイラは言葉が出て来ない。本当はカズトと一緒に出陣したい気持ちが高いが、どうにかその気持ちをグッと抑え付けた。
「グスっ分かりました。カズト、無事で帰って来てね」
「あぁ俺は誰にも負けないさ」
一国の姫なのに大胆にカズトへ抱き付き頬へキスをする。その様子を見ている各国の王・女王からヤジが飛ぶ。
「クスッ、カズト準備は良いかい?」
「あぁ何時でも良いぜ」
本の勇者リンが聖書ブリーズ・アメンのページ一枚をビリッと破り投げ捨てた。
投げ捨てたページが、まるで意思があるように動き出し壁際に扉を作り出した。
これは一回見た事がある。リンの研究所へ移動する時に使用した技術に良く似ている。
「【転移の頁目】さ。宝物庫へ繋いである。これで先回りをしよう」
「分かった。それじゃぁ、行ってくる。みんなも気を付けてな」
【転移の項目】に入ったリンとカズトは、薄暗い場所に出た。背後にあった扉は消え、薄暗さが一層際立つ。
「ここより先は、例の【魔神の右手】が厳重に封印されてるところだ。だから、宝物庫の中でも薄暗い訳だ。普段誰も入らないからな」
「お喋りもここまでなようだ。どうやら、お客さんが来たようだぜ」
カズトとリンの数m手前にこの薄暗さでも目立つ黒く平面な物体が現れる。
『なぁーんだ、先客が来てるじゃない』
目の前の黒い平面な物体から声が聞こえ反響する。どう考えても敵で間違いないだろう。俺とリンは、それぞれ聖武器を構える。
「よっと、この先にあるのよね?ほら、あんたも出て来なさい」
「ふはぁー、もう着いたの?」
「そうよ、ここから歩いて行くわよ」
「ふぁーい」
黒いくノ一装束の少女とタンクトップと短パンの眠たそうにしてる少女が、カズトとリンを無視して先に進もうとしている。
「おっと、ここから先は立ち入り禁止だ」
「やっぱり邪魔する気なの?」
「ふぁー、眠いから早くして」
険悪な雰囲気にも関わらず、敵であるはずの眠たそうにしてる少女が欠伸をしながら瞼を擦ってる様が、この雰囲気を和やかにしてる。
「一応聞いておこうかな?この先に何があるのか知ってると受け取っても良いのかな?」
「【魔神の右手】でしょ?それが何?感じ悪いんですけど」
くノ一装束の少女からけして素人が放つ事が出来ない程の殺気を飛ばして来る。明らかにコイツは強いと肌で感じる事が出来てしまう。




