168食目、魔物召喚
「それじゃぁ、ワタシは《戦車》と行くよ」
「忘れてるんじゃあるまい?いいな、例の物を探し出せ」
「ふん、ワタシを誰だと思ってるのよ?《隠者》だよ?貴様よりも強いのよ?」
と、《教皇》に宣言してから自らの影に飛び込んでこの場を後にした。
《隠者》の言動に拳を握り締め、わなわなと肩を震わせる。だが、それは真実で逆立ちしても《隠者》には勝てない。
「ムフフフフ、僕も行くかな。では、ご武運を」
「貴様も分かってるな?失敗は許されないぞ」
「分かってるさ」
《星》は、自分の技術を応用し、空中に透明な足場を作る。そこに飛び移りながら移動し、去っていく。
「たくよー、《教皇》早くしねぇか。オレらから始めねぇと何も始まらないじゃないかよ」
「《吊るされた男》そんな事を言うのは良くないよ。《教皇》も苦労してるんだから。あっ、儂らよりも弱いから仕方ないのか?」
「それは言えるな。たまには《死神》も良い事を言うじゃないか」
「「も」は余計ですよ」
《吊るされた男》と《死神》にも言われ《教皇》の怒りがワナワナと湧き上がり額に血管が浮き出るが、今逆らったら死ぬので自分に技術【命令】を応用し落ち着かせる。
「さぁやりますよ」
「よっしゃぁぁぁぁぁ」
「やりますか」
それぞれ掌を前に突き出すと三人の手元に魔方陣が表れた。数秒後、それぞれの足元に先程の魔方陣よりも比率10倍はあろう魔方陣が表れる。
「【召喚:骸骨騎士】」
「【召喚:人形兵】」
「【召喚:魔物兵】」
剣や盾を装備した骸骨、死の人形と似た風貌だが剣と盾を装備してる違う人形、二足歩行が出来る魔物の中で上位を冠する化物数種を、それぞれ数百単位で召喚する。
普通なら人間の魔導師数十人分の魔力が必要だが、これを成し遂げた三人にとって雀の涙程度の魔力しか使ってない。
「さぁ進めぇぇぇぇぇぇ。暴れろぉぉぉぉぉ」
「キャハハハハハ、久々に血が見れるぜ」
「さてと研究材料なれる奴はいるかな」
三人が召喚した魔物達は、街の建物を壊し闘技場へ行けなかった人達を襲い始めた。
直ぐに異変に気付いた衛兵が対処するが、あまりの実力差で殺られるばかりだ。
「ここからは自由行動か?」
「あぁ自分の手で倒したい輩がおろう。欲しい物を奪うのも良かろう」
「オイちゃんは、どちらでも良いけどね」
「キャハハハハハ、あの風の隊長さんはオレの獲物だからな」
三人が解散した後、闘技場のVIPルームにも騒ぎの伝達があった。
だけど、国民の過半数は闘技場にいる事が救いだろうか。この闘技場は、緊急事態が発生した時の避難場所として防衛機能が備わっている。
その一つが、敵の侵入を防ぐための何重へと展開する障壁がある。この障壁は、勇者が持つ聖武器でも突破は困難を極める。
「それで急に魔物が現れたと申すのか?」
「はっ!おそらく召喚魔法だと思われます。ただし、あの大量に出現した魔物を見るに1人の仕業ではないだろうと」
「マーリン女王陛下発現よろしいですか?」
手を挙げたのは魔法大国マーリンに召喚された本の勇者である須藤凛だ。
「リンか。発現を許す」
「はっ!おそらくは、かの有名な魔神教会の仕業だと進言します。これを見て下さい」
リンは、聖書ブリーズ・アメンの技術【世界地図】を、ここにいる全員に見えるようホログラムとして展開した。
魔法大国マーリンの地図上に赤い点々が無数に点灯している。おそらく、これが召喚されたという魔物達だろう。
「魔物とは違う異質な反応が、ここに見られます」
魔物とは違う黄色の点が3つ点灯している。その点をリンがタッチすると、詳細な容姿と大雑把なステータスが掲示された。
「この三人が魔神教会」
「……………!!」
鎖の勇者サンドラ・ミッチェルが、掲示された三人の内の1人、骸骨のお面を被ってる男に睨むように目を向けていた。




