SS9-2、ミスティーナの修行~擬似世界~
ミスティーナと《世界》の模擬戦が始まってからどれくらい時間が経ったのだろうか?
そして、何回ミスティーナは死んだのだろうか?《世界》が作り出した【疑似世界】の効果の一つにより死んだら死んだ事だけが無かった事に出来る。
ただし、死ぬ感触や経験はそのままにして。折角、訓練してるのだから経験が無になったら意味がない。
「ハァハァ、ワタシ何回死んだのかしら?」
「564回だな」
「もう死ぬ事にも慣れたわ」
「どうだ?少しは強くなれたか?」
「えぇそうね」
強くなる方法には、いくつか方法がある。
一つ目、魔法や技術を往復的に使用する事。同じ魔法や技術を使用続けると、レベルが上昇し、たまに派生を覚える事がある。だが、これには寿命という限界がある。
二つ目、薬によって強くなる方法。つまりは、ドーピングである。一時的には強くなるが、副作用があり、軽くて廃人、重くて魔物ぽい何かに変貌を遂げる。
三つ目、今現在ミスティーナがやってる方法。死を経験する事。転生もこれに入る。勇者が強いのは転生したからである。
「今なら初代様にも勝てるかもね」
「ほぉ、殺ってみるか?」
修行前と比べると、ミスティーナのステータスは全体的に5~6倍まで跳ね上がってる。
この中なら死んでも甦り、パワーアップ出来る。それに《世界》は、【疑似世界】を展開してる事もあり、全力を出せない状態だ。
カチャ
「さぁ殺るか」
二丁拳銃を構える《世界》。変装を解いた後でも男装をしてるからか、二丁拳銃が様になっている。
「今度こそ、見抜いてやるわよ」
ここまで500回以上殺されたのは、あの二丁の拳銃で全て風穴を開けられたのが原因。
そんな何百回と殺られて見抜けぬ程、ミスティーナもバカじゃない。バカだったら盗賊の頭目なんかやれてない。
だけど、いつも気付いた時には殺られている。どんなカラクリなのか今度こそ見抜いてやる。
バンバン
普通にミスティーナへ向けて撃って来た。狙いは正確で常人なら弾速に反応すら出来ないだろう。
だが、死に続けたミスティーナなら弾速を目で追え回避出来る程までステータスは上がってる。
だけど、決まって死ぬ時の弾だけは見抜けないでいる。でも、もう少しで見抜けるような感覚がある。
「ほぉ、これを避けるか」
「もう何回も避けてるのよ。その鈍い弾」
「なら、もう少し速度を上げるか」
カチッ
バンッと先程避けた弾よりも速度が速い。魔法を扱う暇もない。使えるとしたら強化魔法のみ。
「くっ!」
太腿にかすった。血は出てないが、赤くミミズ腫れを起こしてる。普通なら悶絶するような痛みだが、500回以上も死んでる身であるからして、もう慣れた。
バンバン
「どうしました?動きが遅くなってますよ」
「五月蝿い。闇魔法【遅延】」
《世界》の遅いという言葉での思いつきで、前方に灰色の霧を発生させた。
その霧に触れた弾丸は、まるで停止したかのように遅く、ゆっくりと進んでいる。
「これなら速度は関係ないわ」
「これ程の効果があるとは驚きです」
本来の【遅延】は、ここまで効果範囲は広くないし、効果時間や効果密度が段違い高い。
もっと速く進むし、解除される時間が速いはずだ。ここまで停止に近い程、遅くなるなんて有り得ない。死に続けて強くなった結果だろう。
「火と土を合成して溶岩魔法【溶岩竜巻】」
「二重合成魔法を無詠唱でだと!」
二重合成魔法を使える時点で宮廷魔導師になれる。ただし、詠唱ありきだ。
それを無詠唱で使用したとなると、それは最早化物と呼ばれる領域にいるという事になる。
「化物か」
「お褒め下さり光栄です」
化物で結構。だって、ワタシ《悪魔》ですから。
「雷と土を合成。磁気魔法【砂鉄の機関銃】」
いつの間にかミスティーナの手元にガトリングガンに似た機関銃が握られており、そこから無数の黒い弾丸が空間一杯に発射される。
「ワタクシに銃で勝負しようなんて一千万年早い事だ」




