162食目、アイスを箱買い
パンッ
リリシーが手を胸前で叩き、何かを閃いたようだ。キラキラと瞳が輝いている。
「そうです。ここにいらっしゃる皆様で、買えば良いのではありませんか?皆様、アイテムボックスをお持ちでしょうし、それが一番良いのではありませんか?」
リリシーが、みんなの前でそう提案する。
確かにアイテムボックス内に入れたままなら時間経過はしないからアイスクリームは溶けない。オレンジジュースは冷えたままで、保存出来る。
だけど、ここにいる全員がアイテムボックスを持ってる事にカズトは驚きを隠せない。
アイテムボックスって希少な魔法ではなかったのか。まぁそういう俺も持ってるのだけれど。
「意義なし」
「それは良い考えね」
「わぁぁぁ、これでまた食べれる」
「小娘、良い事を言うじゃないか」
「小娘ではないです。リリシーという素敵な名前があるのです」
「済まなかった。リリシーよ」
リリシーの提案に誰も反対の意見はなく、またアイスクリームを食べれる事に歓喜の声が部屋に木霊する。
だけど、その一方でカズトに負担がのし掛かる。ただ、【異世界通販】にて取り寄せれば良いだけと思いきや、この中で【異世界通販】の存在を知ってるのはレイラしかいない。
バレないようアイテムボックスから取り出したと演技をしなければならない。
「それでカズちゃん、どうなのだ?タマモ達に売ってくれぬか」
「カズト兄さん、お願いします。リリシーにもお売りください」
「キュイキュイ」
ハクももっと食べたいと言ってるみたいだ。
「ハクちゃんももっと食べたいって申しておるわよ。ハクちゃんもアイテムボックス持ちだから大丈夫のはずなのよ」
「ちょっと待ってください。何でハクが、アイテムボックスを持ってるって分かるのですか?」
「えっだって━━━━」
獣人とその上位種族である獣妖族は、あらゆる動物と意志疎通が出来るらしい。
まだ幼い種族の子供で言葉を話せなくても意志疎通が出来るだとか。
「ハクちゃんは、まだ【人化】を使える年齢になってないだけで、立派な龍人族なのよ。アイテムボックスなんか相当な量が入るそうよ」
凄いな。もちろん、ハクがアイテムボックス持ちという事に驚いたが、タマモがハクの言葉を理解出来る事の方が、俺にとって驚愕である。
驚愕してる俺に、ここにいる全員の視線が集中され、みんなの瞳から『早く出せ』と訴え掛けてきてる。
「わ、分かりました。ただし、ここにいる人達と今会議にご出席中の王様達以外には漏らす事を禁止します」
もしも他の貴族達にアイスクリームの存在を知られたなら店に押し寄せて来る可能性が安易に想像出来る。
甘味が少ない世界では、アイスクリームは極上品の一つとなり得る。冷たく口に含んだ瞬間、舌の上で蕩ける。俺が貴族なら大枚を果たして求めるからだ。
「それでみなさん、アイスクリームの味が二種類あるのですが、どちらに致しますか?」
カズトが用意するアイスクリームの味として考えたのが、バニラとチョコレートだ。先ずは、この2つで様子見をし、ご希望があれば徐々にフレーバーを増やしていくつもりだ。
「他にもあるのか?」
「えぇ、僕らの世界では様々なアイスクリームが開発されてましたね」
変わり種としては、醤油・唐辛子・温泉卵とか食べた事はないが、その地方の名物がアイスにした感じだ。
他には、カキフライ・シラス・もんじゃ焼き等々、オカズをアイスに乗っけたのもある。
料理人として味は気になるが、お店では出さない方が良いだろう。というより、どうして現地の人達は、これらをアイスと合体させたのか疑問だ。
「まぁ取り敢えず、この二種類から選びください」
俺は、【異世界通販】からアイス屋のガラスケースの中に並んでいるような業務用を2つ買った。
もちろん掬うためのディッシャーも一緒に買い、実演してみる。
「こちらが、皆さんが最初に食べたバニラという味です。で、こちらがチョコレート……………味見してみます?」
「「「「「もちろん」」」」」
チョコレートアイスを一掬いずつ取り分け振る舞った。バニラと同じく一口掬ったチョコレートアイスは口の中で溶けて消えた。
バニラとは違う味わいに、口に運ぶ手が止まらないでいる。俺も久し振りに味わったが美味しく感じる。
今さらだが、どちらかを一つ選べるのかと考えてしまう。俺的にはチョコレート味が好きだ。




