158食目、世界会議メープル開催
各国の王様・女王様は会議が行われる部屋へ案内された。その部屋には、それぞれ顔を見られるように各々のテーブルが円形に置かれている。
そして、何かしら対応出来るようメイド数人部屋の端に待機し、廊下には魔法大国マーリン屈指の魔法騎士が警備に配置されている。
それぞれ王様・女王様は、自分の国名と名前が書かれたネームプレートが置かれてる席に着席した。
「今回の司会は誰だ?」
「妾ね」
「獣人国家クルセイナ女王:フォルス・フェニックスか。これは順調に会議が進みますな」
「皆の衆、良しなに頼むのよぉ」
会議の司会は当番制で、今回はフォルス女王が当番となっている。
そして、議題は社会問題から未加入である他国を加入させるかどうか等々多義に渡る。
「最初の議題は、やはり最近勢力を上げてきよる〝魔神教会〟よねぇ」
「だが、危険薬物や見た事のない武器を蔓延させておる証拠が出てない。儂の国にも支部である教会はあるが、表向きは魔神を奉る宗教に過ぎない」
「余の国でもあの森を外部が無断で通り抜けるとは思えないのだが、いつの間にかに支部の教会が建てられ、魔神教会に入る者が増えていったのだ」
森精族の国である神樹の森フリーヘイムは、森事態を一種の結界とし許可がない者が森へ入れば、たちまち迷い出入り口へと戻される。
ただし、侵入ルートがない訳ではない。正しい道順を辿れば神樹の森フリーヘイムへと行き着く。
しかし、その道順は複雑で森精族以外の種族だと容易に通れる代物ではない。
「可能性として考えられるのは、魔神教会側に森精族がいるという事でしょうな」
「そんなバカな!森精族が、森の民を裏切る事なぞ断じてない」
「そうは言うが、森精族の王よ。他種族不可侵なソナタの国で、教会が建てられ魔神教会の背信者が増えとるのは事実なのじゃ。他にも原因が考えろうが、森精族が手招きしてる可能性が一番現実的だと思わんか?」
握り拳を震わせ、フォルス女王の言葉に異論を唱えられないフレイ王。一旦、席を立とうと少し腰を浮かせたところで、なんとか落ち着き腰を下ろした。
「神樹の森フリーヘイムだけの問題でもあるまい。だが、少しだけだが進展があった。魔法大国マーリンへ来る途中で、魔神教会とおもしき輩に襲撃を受けた」
「それは誠か!」
「良くぞ、ご無事で」
「なーに、儂の国が誇る勇者が守ってくれたから安心でしたわい」
人間の国であるグフィーラ王国、そこの勇者である剣の勇者カズト。そのカズトの料理の味を思い出してか少しの間、無言となる。
「はっ!それはそうと、姿は確認出来たのかのぉ?」
「いや、それは出来ておらん。用心深い連中じゃ。そう簡単には姿を表さんじゃろう」
「ならなぜ、魔神教会の連中だと?」
グフィーラ王も馬車の中で直接見ていないが、カズトが説明した文言を思い出しながら、各国の王達に説明した。
「ふむ、成る程よのぉ。マーリン女王よ、ソナタはどう思う?」
「ふぅ~、そうさな。死の人形は、死者の魂を人形に封じ込め操りし禁忌の魔道具の一つだ。使用する際には必ず契約が結ばれる」
マーリン女王が煙管を一旦吸い煙を吐く。その間、数秒間が空く。
「その契約とは、2つあるのよ。その人形どもに使用者の名前が刻まれる事。ただし、【鑑定】なしでは見れないのよね」
「して、もう1つは?」
「問題はそこよ」
メイドが用意した紅茶に口を付け一呼吸を空ける。ふぅ~と息を吐き、これから戦場でも行くような気迫で答える。
「もしも破壊されたら、死者の怨念というべき呪いが使用者に降り掛かるらしいのよ。通常なら死ぬレベルのね」
「なら、死の人形とやらが壊された時点で相手は、もう死んでると」
「普通はね。だけど、相手が相手なのよね」
はぁ~っと、テーブルに両肘を付きマーリン女王がため息を吐く。
カズトが【鑑定】したという死の人形に記されていた使用者の名前は、リザ・テミスだったらしい。
リザ・テミスという名は、知る人が知るSランク相当の大犯罪者だ。ただし、それは凡そ200年前の話。普通ならもう死んでると思ってしまう。
だけど、リザ・テミスはとある種族のためまだ生きていると言う者も少なからずいる。
「リザ・テミスの種族は人形族。ある意味、不老不死と言われる種族の一つなのよ」




