SS6-10、赤薔薇隊隊長ライラのスローライフ~ランニングマシーン~
「これ位、楽勝よ」
普段から城の外周を十数周を走る事を日課にしてるライラにとって、今現在の速度では物足りない。
これでは何時間も走っていられる。もっと速度を上げないと逆に遅くて疲れてしまう位だ。
「ほぉそうかのぉ。それじゃぁ、これならどうだ?」
ポチポチとアリスがボタンを押すと、ベルトの速度が速くなって。体感的に1~2km程速くなったのだろうか?
「余裕ね。もっと上げても良いわよ」
「そうか、上げるぞ。スピードアップじゃ」
ボチポチとアリスが操作しベルトが更に速くなった。体感的に10km程だろうか?
だが、まだ余裕である。これなら前隊長と訓練という名のランニングの方が断然キツかった。
あの時と比べると、まだ早歩き程度だ。あの時は本当にキツかった。翌日、全身が筋肉痛になったの覚えてる。
「ハァハァ」
「キツいようなら止めますが」
「まだ行けます」
また速度を上げてもらって、今現在ランニングマシーンの最高速度である16kmに達していた。
坂道を転がる自転車よりも速い。それでも息遣いが荒くなってるが、これがちょうど良い。
久々に気持ち良い走りが出来て、最高な気分になってくる。
「ハァハァ、これ欲しい」
走るだけでも場所を取るけど、これなら場所を取らない。自分の部屋だけでもトレーニングがやれるなんて、これ程に素晴らしい事は中々ないとライラは思ってる。
「カズトに頼めば、売って貰えるんじゃないかのぉ?」
「ハァハァ、そうか。その手があった!」
パンと良い案だと両手を叩きながらも走り続ける。常人ならランニングマシーンの最高速度に達した時点でギブアップする者が続出するだろう。
「ふぅ、良い運動になった」
かれこれ最高速度に達してから一時間は走っていた。あの地獄のランニングと比べたら楽勝である。
「ほれ、スポーツドリンクという飲み物じゃ。水分補給に最適じゃぞ」
アリスに手渡されたソレは、何とも不思議な容器に入ってる。ガラスではないのに透明で、しかも幾らかの柔軟さを用いてる中で丈夫な素材で出来ている。
もちろん、ライラは初めて見た。中の飲み物よりも気になってしまう。
「これは一体なに?!」
アリスも初めて見た時は同じ反応であった。アリスも欲しいと最初考えた。だが、無理であった。どういう訳か、飲み終えると光の粒となって消える。
ゴミになる心配はないが、自分が欲しいというか、興味深いと思っている。
「その容器はペットボトルと言うそうじゃ」
「ゴクゴク、プハァ。生き返るっ!」
余裕と思っていてもノドは渇いていたようだ。一気に飲み干しペットボトルは光の粒となって消える。
「ねぇ、さっきのペットボトル?は何処にあるの?」
「カズトに言えば、一本銅貨二枚で売ってくれる」
破格だと頭の脳裏に過った。冗談じゃないかと笑う積もりであったが、ウソを付いてないとアリスの目が物語ってる。
マジで、その値段なのだと信じられない。中身は冷たくて美味しいがそれでも、この容器だけで最低でも金貨一枚はいく。
「ハァハァ、姫様、私にもくれませんか?」
シャルが倒れ込むようにアリスの側に来た。汗でタンクトップが張り付き、トレーニングする前と比べても胸の形状がハッキリと分かる。
「何じゃ?その重そうな物を妾に見せつけておるのか?」
「ひ、姫様?」
「そういう奴にはお仕置きじゃ」
汗でベタついたタンクトップ上から鷲掴みをする。トレーニングする前よりも艶やかに見える。
「あっ!ひ、姫様それ以上は」
「それ以上は、何じゃ?」
トレーニングするよりも息が荒くなってる。女であるライラからみても妖艶に映り、こちらまで恥ずかしくなってくる。
「アリス、それまでしたら?シャルさんも目が虚ろになってるし」
「ライラがそう言うのであれば仕方ないのぉ。ライラに免じて止めてあげるか」
「ライラ様ありがとうございます」
別に感謝される事ではない。あのまま見てたら、こちらまで変な気分になって来るから止めただけだ。
まぁそれは置いといて…………だ。
「素晴らしい一時でした。体験したのは、アレ一つだけですが、私も一つ部屋に欲しいです」
「うむ、妾も帰った暁には取り入れようと考えておる。カズトが言うには、金貨5枚から金貨20枚程と言っておったのぉ」
やはり、そこそこ良い値段はする。赤薔薇隊隊長の給料でなら一月~二月程趣味を我慢すれば、どうにか用意出来る金額だ。
城に戻る際に検討してみよう。




