SS6-7、赤薔薇隊隊長ライラのスローライフ~久し振りの休日~
お姉様とアリスがいるレストラン〝カズト〟に必ずと言っても良い行けると確約されたと同様な意味を持つ魔道具をシャルロットから手渡された。
だが、その代わりに一週間は倒れない程度働かされた。主に事務作業を。身体を動かしたいが、シャルロットがそれを許さない。
「今から最低でも一週間は机にかぶり付いてください。前隊長なら難なくこなしてました」
と、言っていた。
前隊長であるユニは、他の隊員と一緒に訓練と指導を常に行っていた。だが、それは前提として事務作業も苦もなくこなしていた。
ほとんどの隊員は、それに気が付いてはいない。ライラも気が付いてない一人だった。
気付き初めたのは、自分が副隊長となって少ししてからだ。何か前隊長の様子がおかしい事に気付き、夜中にこっそりと部屋を訪ねて見たところ、黙々と書類整理をしていたという事があった。
「書類仕事をこなしたのだから、それをちょうだい」
早くレストラン〝カズト〟へ行きたい。行って癒されたい。美味しい料理を食べたい。お姉様に会いたい。
「はぁ~、仕方ありませんね」
「よっしゃぁぁぁぁぁぁ」
これで何時でもじゃないが、何時でも行ける!そんな喜びが、シャルロットの手元を見たら崩れ去った。
「アタシも久し振りに羽根を伸ばしますか」
「おい、その手に持ってるのは何だ?!」
「今、渡したばかりじゃないですか?同じ魔道具ですけど、それが何か?」
私が聞きたいのは、そういう事じゃない。
「何故、2つも持ってると聞きたいんだ!」
「今渡したのは隊長専用です。これはワタシ専用です。全員持ってますが、何か問題が?」
えっ?全員持ってるの?こんな凄い魔道具を?!もし売ったら当分働かなくても暮らして行けるんじゃね?
「売るのはダメです。そもそもこれは売れないですけど。個人の血で契約されてますから」
血で契約?いつの間に!最近、血を取られた記憶ないんですけど!
一部の魔道具を除いて他人に使用出来ないよう自分の血を一滴垂らし自分専用とする事が出来る。
だが、一回契約すると解約するまで売れなくなる。他人に使用不可となるため値段が付かないのだ。
解約するためには、それ専用の魔道具が存在するが、めちゃくちゃ高く一回使用で壊れてしまう。先ず割に合わない。
「これで行けるのだな」
「一週間頑張ったご褒美ですので、どうぞ行っても構えません」
「それで、どう使うのだ?」
外見から使用方法が検討付かない。普通は魔力を流すだけで使用出来る物があれば、何か条件があり魔力流すだけでは使用出来ない魔道具があり、千差万別である。
「何処でも良いので、魔力を流しながらドアを開くとレストラン〝カズト〟の扉に繋がります」
「それじゃぁ、行って来る」
早速、シャルロットに言われた通りに使用する。自室のドアをドキドキしながら開いた。
ギィィィィッと開いた先は、王城の廊下ではなく懐かしく思える風景が広がっていた。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
「一人だ。今日から二泊三日する積もりだ。先ずは何か食いたいな」
「畏まりました。こちらへどうぞ」
ライラを出迎えたのは、犬人族の女の子であるルーシーだ。
ルーシーの背後を着いて行く途中、ルーシーの尻尾が左右に揺れ可愛い物好きなライラにとっては歓喜極まる光景だ。
「こちら、お冷やでございます」
普段、ビキニアーマーを装備してるからか?私服を着てると気が付かれていないようだ。
お冷やとして出された水は、温くなく冷えている。細かい氷も入っており、魔道具で転移したので汗は掻いてないが美味しく感じる。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「そうだな、カツ丼をお願いするか」
「カツ丼ですね?畏まりました」
文献では知っていたが、米を食べる事が今日初めてだ。遠目で、他の客が米らしき物体を食べてる姿を何回か拝見してるが、どんな味をするのか想像出来ない。
噂によれば、大抵の勇者の故郷にある主食だとたまに聞く。それに東方にある海を越えた国でも産地として育てられており、物好きな貴族が大枚を叩いて買ってるとかなんとか。
今まで、ここで食べるのは鶏の唐揚げや焼き鳥にビールを片手で食していた。
そこでたまには違う料理に挑戦してみようかと思い、カツ丼を頼んでみた。誰かに聞いたが、カツ丼には〝勝利にカツ〟という願掛けがあるという噂だ。




