SS7-40、女婬夢族ジブリールの居場所~魔王の角を封印~
黒い分身は捕縛され動けない。影も十二分に倒し魔力を消耗させたはずだ。
「さてと、影が襲って来ない内に封印を強固にしますか」
魔王の角に巻かれてる封印具の布の上から更に封印を重ね掛けすれば、あの影をきっと消える。
「【聖武器創造:聖書マニュアル】」
封印として一番適してる聖武器は聖書となる。相手の情報を書き換え、思いのままに操る。それが聖書の真骨頂。
それ故、封印に関して聖書の右に出る聖武器はない。その代わりに相手の技術や魔法を理解しなくてはならない。
だから、一度戦って見る必要があった。まぁ魔力量が多過ぎなのも一つだが、魔王の角を理解する必要があったからだ。
「聖書マニュアル【封印の書第90番:ステータスブレイク】」
聖書マニュアルからページが次々と飛び出し宙を舞う。その風景は、まるで桜の花吹雪の如く一見美しい。
ページ一枚一枚が意思を持つように魔王の角へと張り付いていく。
相手の強さによって、使用するページ数が決まって来るが、やはり魔王は角だけになっても相当脅威らしい。
ほぼ9割のページが聖書マニュアルから飛び去り、役割が終えたように《正義》の手元から消えた。
これで当分の間は、聖書を創造出来なくなってしまった。まぁ聖書が必要な程の封印が必要な時なんて、そうそうあるはずがない。
もし連日あるなら、それはもう世界が終わる前兆だと言っても過言ではない。
「ハァハァ、流石に疲れました」
「おかえり」
「ただいま」
封印の門を潜り、みんながいる廊下へたどり着いた瞬間に座り込んだ。魔力を半分以上使ったのだから仕方ない。
魔力が空になると、その場で気絶してしまう。命にも関わる事だから、みんなも気を付けようね。
「まさか本当に解決してしまうとは!」
「いいえ、問題は解決してません」
「と、言いますと」
「ただ問題を長引かせただけです。ですが、ここ50年は大丈夫でしょう」
それほどに強固な封印を施した。だから、魔力が半分以上持っていかれた訳だ。
「おぉ、ありがとうございます。褒美をご用意致しますので、しばしお待ちを」
ただ魔王の角を見たかっただけなのに臨時報酬が得られた。盗賊討伐の報酬に加え貰えるとは自然と笑みが溢れてしまう。
まぁ場所が分かった事だし、次回は盗みに来させて頂くとしよう。実際盗む時に封印する時間が惜しいと考え、今回封印した訳である。
「ご用意が出来ました。こちらへどうぞ」
また玉座の間に案内された。中にはジェラール王子と護衛のための騎士と従者が待機してるのみだ。
ジェラール王子が座る玉座前の階段下まで進み床に片膝を付き頭を垂れる。
「この度は良くやってくれた。褒美を取らそう」
「はっ、光栄でございます」
褒美の金貨が乗ったトレーを従者が持って来る。これだけでも数年は遊んで暮らせるお金を稼いだ事になる。
「今宵も泊まっていっても構わぬぞ」
「畏れ多い事です。我々、冒険者は根なし草。常に冒険し続けないとダメになってしまいます」
「そうか、残念じゃがせめて見送ろうではないか」
「ありたがき幸せ」
王城の門まで見送るという事で、ジェラール王子も一緒に門まで来ている。
既に門外に馬車が用意されており、そこに乗るだけとなっている。
「セーヤン二人を頼んだぞ」
「お任せ下さいませ。お二人を無事にお届けさせて頂きます」
冒険者ギルドまで送って貰うだけなのだが、何かに襲われる可能性があるみたいな雰囲気を醸し出してる。
「カズヤ、ジブリールまた王都に来たら城に寄って来れ。その時には父上と母上もご在宅だろう。歓迎致すゆえな」
「はい、必ず寄らせて貰います」
「またねぇ」
姿が見えなくなるまで馬車の窓から手を振り続けた。あんまり後に敵となる者に情を持つ事は宜しくないが、まぁ少しの間でも楽しむとしますか。
まだ魔神復活に必要な各々の魔神の身体のパーツが集まるまでは。




