SS7-38、女婬夢族ジブリールの居場所~封印の門~
設定やSSを含めてですけど、300話を突破しました。
ここまでやってこれたのは、読者の皆様のお陰です。何処まで行けるか分かりませんが、ぜひ読んでくれれば嬉しいです。
「この奥に魔王の身体の一部が」
封印の門が開いただけでは中の様子は分からない。ドス黒いオーラで阻まれているからというのもあるが、何せ明かりが全くないのだ。
「暗くて見れないのだが?」
「明かりを点けますと、襲われるのです」
「襲われる?」
「はい」
近衛兵の話によると、明かりを点けた途端に影みたいなもので襲われるのだそうだ。
魔王の角に一部は現在、封印具と呼ばれる魔道具の布で厳重に巻かれ台座に鎮座されている状態だ。
本来なら魔力はもちろんの事、それに類する力は漏れないはずだ。それ程に魔王の力は予想以上という事になる。
「明かりを点けても?」
「いや、しかし」
「構いません。カズヤ様の仰有る通りしなさい」
「はっ!畏まりました」
魔法が苦手な《正義》には聞き取れないが、近衛兵の一人が明かりを灯す魔法を詠唱する。
詠唱が終わると暗闇だった部屋は忽ち明るくなり、中の様子が廊下からでもハッキリと見えるまでとなる。
「あれが魔王の?」
「禍々しいのよ。早く逃げたい」
俺の背中でガタガタ震えてるジブリール。魔族だから魔王に恐怖するのは当たり前か。
今回は、どんな物か拝見するために来たのだが、魔王はどうやら俺達を逃がす積もりはないらしい。
「か、影が出たぁぁぁぁぁ」
近衛兵の一人が叫ぶと、魔王の角から黒い帯状の何かが、こちらに伸びて来てる。
床を這うように迫って来てる。確かに、これなら影と呼ばれる事に納得だ。
だけど、封印の門の境界線から出て来れないようで、まるで見えない壁があるかのように弾き返されてる。
これなら部屋の中に入らなければ安全だ。
「あれが影ですか?」
「えぇ、封印の門のお陰で、こちら側には来ないのですが。その代わりに中にも入れない状況です」
ふむ、魔王の角の場所が分かれば任務完了なのだが長年の間、冒険者をやっていると強者に挑みたくなる。
「中に入ってみても?」
「いけません。死にたいのですか?」
「俺は冒険者なのでね。冒険者は常日頃から強者と戦いたくてウズウズしてるものなのですよ」
廊下越しで見ただけでは、あの影の正体は正確に分からない。ならば、突撃して確かめるしかない。
「大丈夫です。俺はSSランク冒険者なんですから。滅多な事では遅れはとりません」
「……………良いでしょう」
「セーヤン様!」
「あの影を知るチャンスです。いくら封印の門が強固でも破れてしまう日が来るやもしれません」
破られた時に備えて、あの影の正体を掴み対抗策を考えるべきだと。
もしも、破れたら王都が壊滅してしまうしれない。
「お願いします。カズヤ様、どうか」
「いえいえ、ただ自分が戦いたいだけですから。行ってきます」
《正義》は封印の門を潜る前にアイテムボックスから取り出す振りをして【聖武器創造:光の聖剣エクスカリバー】を密かに使った。
「さて、楽しもうじゃないか」
部屋へ足を踏み入れた瞬間に案の定、影は《正義》に襲い掛かって来た。
床を這うだけではなく、立体的に黒い布が舞ってるように四方八方と向かって来る。
《正義》的に速度は消して早くないが、封印の門を警備してた近衛兵二人だと苦労するというレベルだ。
消して早くはないが、影と呼ばれる事もあり数が多い。常に移動してないと捕まる。
「流石に数が多いな。なら、こっちも増やすまで。【光分身】」
光その物が《正義》の容姿を形作り、数体分身が出現する。
これで幾らか楽になった。取り敢えず、回避しつつ影を切り付ける。
感触的には鋼を切り付けたみたいに硬いけど、伸縮性があり硬いのか柔らかいのか二分律のようだ。
「うおっと」
影が平べったい単調な攻撃だけかと思いきや、螺旋状に回転させ、ドリルみたいに貫通力を上げてきた。
部屋の壁に穴が開き、その威力は想像以上だ。もしも、喰らったら風穴が空くのは必須。
「攻撃後に隙が生じるのは有り難い。【光刃一閃】」
光輝く刀身で影の腹に叩き切った。見事に一閃し、切る事に成功した影は霧散し、倒す事が出来ると証明する形となった。
「ふぅ、これで一体目」
分身達も続けて影を討伐出来ている。正体としては何となく掴めて来てるが確証がない。




