SS7-35、女婬夢族ジブリール居場所~ジェラール王子とお風呂~
コンコン
「お食事の準備が出来ました」
もうそんな時間か。時計がないと時間が分かり難い。セーヤンの後を追い掛けると、そこは冒険者をやって稼いでもありつけないだろう豪華な料理の数々が並んでいた。
「待っていたぞ。今宵はカズヤとジブリールに出会えた事を祝おうぞ。して、カズヤとジブリールの冒険譚を聞かせてくれぬか」
「冒険譚ですか?」
「余は中々城の外に出れぬ身。自由に冒険する事に憧れがあるのだ」
貴族や王族の子供に有りがちな憧れの一つ。ここで断っては不敬になりかねない。
まぁ目の前にご馳走が広がってるんだ。話の一つや二つ問題ないだろう。
「分かりました。お食事しながら話してあげましょう」
「おぉ引き受けてくれるか!」
年相応の反応で、王族でも子供は子供だ。実に嬉しそうに笑顔を振り撒き、はしゃいでいる。
もしも、王族でなければ、おそらく他の子供と混じって遊んでるに違いない。
「さてと、何から話しましょうか?ジェラール殿下?」
時間は意外にと経つのが早かった。普通は、王族の食事というのは静かなものだが、この時だけは笑い声だったり泣き声だったりと部屋中どころか、近衛兵が待機してる廊下まで響き渡っていた。
「わっはははは、今日は楽しかったぞ」
「それは光栄でございます」
「うむ、明日には扉の封印が解けるゆえ、楽しみに待ってるが良い」
ふぅ疲れた。喋ってるのは俺だけで、ジブリールはずっと隣で食っていた。
俺も食ったが冒険の話をいていた時間の方が長かった気がする。
「お前は、ずっと食っていたな」
「我が話してバレたらどうするのよ?」
「それはそうだが」
二人は表向きは冒険者として活動してるが、裏向きは犯罪組織:魔神教会の幹部である。
それがバレたら問答無用で捕まる。だが、王城にいる近衛兵では実力で捕まる事は出来ないが、四神部隊の隊長達が出てくれば話は違ってくる。
その強さは勇者と引けを取らない程の猛者と聞く。隊長の一人は王様の護衛として他国に行ってると小耳に挟んだ。
残りは三人だが、その誰もが噂に違わぬ強さを持ってるらしい。四神の獣を背負ってる事だけはある。
「お帰りをお待ちしておりました。湯浴みの準備が整いましたので、お入りになりますか?」
「折角だし、入ろうか?」
「我は構わないのよ」
この世界において湯浴みなんて贅沢だ。魔神教会の幹部でもおいそれと入れるものではない。
「湯船に入るなんて何日振りたろうか?」
「そんなに良いものなのか?」
「入れば分かる」
そもそも魔族には体を洗う習慣がない。魔法でキレイにしてしまう。そっちの方が早いし、態々寒い思いをしなくて済む。
「お着きになりました。ここが脱衣場となります」
「……………!」
見覚えがある暖簾が垂れ下がっている。漢字で、男・女と書いてある。まるで日本の温泉を思い出させるようだ。
「ここで一旦別れよう」
「一緒に入らないのか?」
「男と女で別々に入るものなのだ」
「そういうものなのか?」
「そういうものだ」
ジブリールは諦めたように女の暖簾を潜った。それを見送ると、《正義》も男の暖簾を潜り抜け脱衣場へ入る。
脱衣場も日本風で懐かしい気持ちになる。これだけでも心が洗われるかのようだ。
「昔の勇者が伝えたのか?」
そうじゃないと、ここまで日本風な光景にはならない。だとすると、湯船も日本風な露天風呂かもしれない。
そう考えるだけで《正義》は、装備や衣服を脱ぐスピードが自然と早くなる。
ガラガラ
「これは絶景だな」
湯船から湯気が漂い、湯気の向こう側には日本人なら心踊る光景が広がっていた。
周囲に竹が植えられており、その中には水を用いずに岩や砂などで山水を表現した枯山水が描かれている。
それに湯気に人影が2人~3人分写っている。
「カズヤ、やっと来たか」
声からしてジェラール殿下か。まさか先回りされとは思ってもおらず、頭が追い付いてない。
「そこに身を清める場所があるかゆえ、そこで清めてから入れよ」
「はっ、畏まりました」
身を清めると言ってもタダ体を洗うだけだ。シャワーや蛇口を見るとファンタジーじゃないと思ってしまう。
「カズヤ、余のメイドを貸すのもやぶさかではないぞよ」
「いえ、自分で身を清められますので」
「なに、何も遠慮する事はない。今宵の余は気分が良いのだ。おい、お前達カズヤを清めてしんぜよ」
「「殿下のご命令のままに」」
ジェラール殿下の他はメイドだったか。まぁ王族だから当たり前か。
水飛沫の音がした後、こちらに近寄って来るヒタヒタと足音が聞こえる。
つい、振り替えってしまうが逆に安堵をする。メイド二人は全裸ではない。水着を着用していた。




