SS7-33、女婬夢族ジブリールの居場所~王都に向かう~
「ここを潜れば王都に着きますのです」
「世話になった」
フェイの言う通りに潜ると、一見何も変わってない部屋だが、《正義》にとって見知った顔がいた。
「久し振りだな。カズヤ殿」
「あんたがいるという事は、本当に王都なのか?!」
《正義》とジブリールを出迎えたのは、冒険者ギルド王都支部ギルドマスターであるクイナ・ティールヤである。
クイナは、人間ではなく森精族であり元Aランク冒険者でもある。
普段、人前には出ないためクイナがギルドマスターである事を知る者はAランク以上と王都支部の職員位である。
「そうよ。ここに居ても仕方ないからアタシの部屋に行かないカズヤ殿。そちらの可愛いお嬢さんも」
ギルドの3階にあるクイナの部屋へ移動した。ここに来るのも久し振りに感じている《正義》。
カズヤとして冒険者活動してからAランクに上がった時が最初に訪れた。それから使命依頼を受注した時とかに訪れた位か。
「好きなところに座ってちょうだい」
「お、お邪魔します」
緊張してるらしくジブリールの体がガチガチだ。そこまで緊張しなくてもと《正義》は思うのだが、それは無理というものだ。
(ちょっと、《ジャ》カズヤあれ一体何者なの?!化物なのよ)
特に殺気を飛ばされてはいないのだが、魔法を十分に使える者からしたらクイナは化物に見える。
クイナの魔力量は、魔王と言われても納得出来る程に多い。一気に魔力を放出すれば、ジブリールは気絶する。
(俺もそう思っている。何せ先先代の森精族女王なのだから)
(ホワッツ?!)
森精族は、元々魔力量が他の種族よりも桁外れに高い。魔法の扱いに長けてる魔族や魔術師族と比べても互角かそれ以上だ。
ただ、魔法の扱いに関しては魔族や魔術師族の方が上だが、女王ともなると魔力量と魔法の扱いも桁外れに高い。
「聞こえてるわよ」
この地獄耳め。かなり小声で話していたはずだが、聞こえてしまったようだ。
「そう身構えないでちょうだい。国王様…………いえ、国王代理が、あなた達を丁重に出迎えと仰せつかってるから」
国王代理?代理という事は、今国王は不在なのか?それでなければ、代理を立てる必要は全くない。
「さぁ行きましょうか。既に馬車は用意しているわ」
ギルドの地下からクイナの部屋へ直行したので、外の事なんか分かるはずがない。
「うん?クイナも来るのか?」
《正義》に向かい合うようにクイナも馬車に乗り込んで来た。ジブリールは、俺の隣に座っている。
一般的な馬車とは違い、流石は王族仕様だ。外観は、これでもかって位に装飾が施されており、内観に関しては椅子が材木ではなくソファーみたいに柔らかい。
「あなた達の案内を頼まれたのだから当たり前でしょう?」
おそらく俺達の監視も含まれるのだろう?冒険者は高ランクになる程に比例して変人や自己中な者が多くなってくる。
それ故に着いて来る。でも、ギルドマスターが態々監視役を買って出るなんて冒険者ギルドが人手不足か、はたまたクイナ自身も変人のどちらかだろう?
「あら?もしかして、アタシが変人だと思ってる?」
「……………?!」
心の中を覗かれた?!いや、ただの勘か?それか、俺は顔に出やすいのか?
「アタシも変人だと自覚あるからね。だって、森精族が冒険者がやるなんて変人でしょ?ましてやギルドマスターになってるアタシなんて、とても変人だと思わない?」
森精族は基本的に森精族が住む森や国から出ない。
出て行こうとする者は、同族から変人扱いされ嫌悪されがちになる。
クイナもその一人で、その当時女王でありながら外に興味を持ち、ある日に国から姿を消した。そして変装・偽名で冒険者となり今に至る。
「いや思ってない。自由で良いじゃないか」
「うふふふふ、ありがと」
「ふへー、ギルドマスターも大変なんですね」
「ジブリールちゃんも大変よね。この唐変木の側にいると」
「えぇ、大変ですね」
「おい、一体何の話をしてるんだ?!」
いつの間にかクイナとジブリールは女同士で仲良くなっていた。
雑談してる内に馬車は王城の門を潜り抜け到着した。




