155食目、巨人と鬼にもカレーは大好評です
キューティーから逃げるように仕事に集中する。他の席へご要望がないか聞きながら回ってる。
キューティーに悪いが、俺には答えられない。もしも違う立場で出会っていたならと考えるが、もしもの事を考えてもしょうがない。
「シャルラ女王陛下、シャルロット姫、お楽しみ頂けてますでしょうか?」
「カズト様、大変美味しく頂いていますわ。これが噂に聞く香辛料の味なんですね」
「もしも辛いと感じましたら、次にお代わりする時に辛さを調整出来ますので、気軽にお声をお掛けくださいませ」
「丁度良い辛さですわ」
俺と話してる内にも食べ続け、あっという間に完食し皿を空にした。
流石は巨人族という事か。外見は俺と同じ人間だが、それは魔法により外見上人間のサイズになっているだけだ。
巨人族にのみ許された魔法【体積変化】がある。これは中身は、そのままで外見上の大きさを変化させるというもの。
他の種族と共存するために巨人族の祖先が作り出したと言われている。
「次は辛さは、そのままでキーマカレーをお願いするわ」
「はい、畏まりました。おい、キーマで中辛だ」
「直ちにお持ち致します」
「妾のもお願いね。ねぇ、妾の娘ばっかりとイチャイチャしてないで、妾とも話をするがよい」
「お、お母様!べ、別にカズト様とイチャついてなんかありません」
バンとテーブルを叩きながら否定するシャルロットだが、顔をそんなに真っ赤に染めては説得力が皆無だ。
シャルロットの場合は、俺を主人公にした英雄譚を愛読してるからアイドルみたく尊敬の念を持ってるのだろう。
俺の嫁であるレイラや店にいるミミとドロシーにユニと違い、ラブじゃなくライクの方だと思う。
「まぁまぁ落ち着いて。お代わりのカレーが届きました」
「……………パクパク」
シャルロットは無言となり、カレーを無心に頬張り続ける。娘と同様シャルラ女王も無言でカレーを頬張り続けるのである。
巨人族と知らなければ、何処にそんな量が入るのか気になっていたところだ。
「カズト、これ美味しいな。手が止まらねぇぜ」
鬼人族であるガリュウも清々しい程に良く食べる。まるで体育会系の男どもに料理を提供してるような感覚を感じる。
おそらく目の前にいるシャルロットを意識してか負け時と次々にお代わりをご所望している。積み上げられた皿を数えてみると、20枚以上あることがわかる。
シャルロットもほぼ同数と言って良い程に積み上げられてる。その光景は一言で言えば圧巻と言うしかない。
「ガッハハハハ、流石は我が息子だ。良く食べおる」
「そんなシドニス王は、そんなにお食べになられてないようですが、お口に合わなかったですか?」
「いや、そんな事ないぞ」
聞いてアレだが、一般的な人間と比べると全然食べてる。だが、種族間で比べると食べていないような気がしてならない。
ガリュウと比べて半分位だ。ガリュウを先に見ちゃうと逆に心配になってくる。
「最近食欲が落ちてな。我輩も年だと最近考えるようになった」
「何を言っているんだ父上!まだまだ現役でやってもらわないと困るんだ。それに年を召されたと言ってるが、我が騎士達の訓練に度々混ざってるではないか」
国王自ら進んで自国の兵士の訓練に付き合うとか普通は何処の国でも考えられない所業だ。
他にもシャルロットという例外が目の前にいるから、そこまで珍しい事ではないのか?
「あれは彼奴らが不甲斐ないからであろう。あんな扱きで根を上げるとは、同じ鬼人族として恥ずかしいと思うぞ」
「それは父上の価値観だ。誰が鬼人族の英雄と呼ばれた父上の扱きについてこれないよな?オレなら大丈夫だが、普通は無理だな。無理難題もいいとこだ」
ガリュウの話が本当ならシドニス国王が、何処かのブラック企業に勤めるパワハラ上司のように思えてきた。
「そんなにシドニス国王陛下は凄いのか?」
「正に鬼教官と思えるぜ」
鬼人族だから鬼教官てか、この世界でギャグが通じるか知らないが、もし通じるなら寒くて滑ると思ってしまう。
ガリュウ本人はオヤジギャグを言ってる自覚がないらしく平然としてる表情を見て俺は、どんな顔をしていたのか?自分でも分からない。
もしも鏡があったら見てみたい。
「例えば、どんな事をするんだ?」
「そうだな、城の周りを100週とか腕立て伏せ1000回とかスクワット1万回とか後は━━━━」
「いや、もういい」
それはもう漫画の世界だ。いや、ここは魔法や技術がある世界で、この世界も俺らがいた地球では、漫画やアニメの世界だ。
それを考えるとシドニス国王の扱きが普通に見えてくるから不思議だ。




