150食目、ハクの友達
「ほら、ハクこちらに来なさい」
プイ
「キュイ」
ハクがソッポを向き俺の頭上から離れようとしない。頑なに俺の頭をがっしりとホールドしており、下手に引き離そうとしたら俺の頭と胴体が離れてしまう。
「カズトからも言ってください」
「まぁまぁ、俺は嫌じゃないのでこのままでも」
仮にハクが不機嫌になったら後々大変な目に合うかとしれないとカズトの直感が働く。
まだ子供の龍人族と甘くみたら痛い目に見る。
おそらく隊長クラスでなければ、マーリンの近衛兵をいくら束になろうともハクには勝てない。
「カズトがそう言うのであれば…………………うぅ、ハクが羨ましいです」
「うん?何と言いました?」
「何でもありません」
キューティーの頬が何故か赤く染まってる風に見えたのはカズトの気のせいだろうか?
まぁおそらく気のせいだろう。それよりも頭にいるハクだ。一番落ち着くらしく、大きなアクビをし今にでも眠りそうだ。
「これはこれはお久し振りでございます。キューティー女王陛下」
「あら?レイラ様、いらしたのね?」
バチバチ
レイラとキューティーの間に火花が散ってる風に見える。俺は既視感を覚える。いや、ほんの数分前にあったばかりでないか。
「おーほほほほほ、実の妹にも嫌われたものですね」
「あら、レイラ様こそ。旦那様に相手されてはなくて?」
「はぁ~!そちらこそカズトに相手されてないように見えますけど?」
「「おっほほほほほほ」」
ヤバい、直ぐここから立ち去りたい。だけど、この二人を置いてきぼりにした暁には、後日説教という拷問を受ける羽目になる。
「カズト兄様、そのドラゴンは?」
気付いてないのか又は大物なのか、リリシーはレイラとキューティーの睨み合いに逃げなかった。
今の癒しはリリシーだけだ。俺は何となくリリシーの頭をナデナデと優しく撫でた。
「カズト兄様の手……………気持ちいいです」
「この子はハク、ドラゴンではなくて龍人族の王女殿下になるのか?まぁまだ未熟で【人化】を使えないから龍の姿のままなんだ」
「失礼致しました。魔物と間違えるなんて」
「キュイ」
「許してくれるってさ」
ハクが俺の頭上で不機嫌になったら髪を引っ張ってマジで痛い。一部がハゲになる程に引っ張られる。
でも、カズトが勇者であるから髪の毛だけで済む。他の者がやられたら、おそらく首から胴体が別れる事になると思われる。
それ位に子供であっても龍人族の腕力は凄まじい。腕力だけではない。魔法もそうだが、様々な耐性を取得しており、龍人族の皮膚こそ鉄壁の盾となる。
魔族領から魔族を抑え込めるのも納得のステータスなのだ。次期国王ならぬ龍王となるハクが将来どれだけ強くなるのか楽しみだ。
「キューキュイ」
「うわぁ~」
カズトからリリシーの頭上に乗り移ったハク。まるで帽子のようにスッポリと収まってる。
どうやらハクはリリシーを気に入った様子。当のリリシーはニコニコ笑顔でハクが頭に乗ってくれた事に上機嫌だ。
「キューイキュイ」
「友達になろうってさ」
「リリシーとですか?わぁー、嬉しいです」
おそらくハクとリリシーはお互いに同年代の友達になった。ハクが、これで【人化】を取得すれば、言葉を話せるようになりコミュニケーションを楽に取れるようになるはずだ。
「ハク様、親しいご友人が出来ようございました。このブラディー、嬉しゅうございます」
ハクに年が近い友達が出来、ブラディーが嬉し涙を流してる。
森精族の次に長命種とされる龍人族には、子供が出来にくい。これは長命種ならではの問題だ。
だからなのか、龍人族中でハクを祝福され大事にされている。因みに龍人族に子供が生まれたのは400年振りとなる。
「では、席にご案内致します。リリシーとハクは一緒のテーブルでよろしいでしょうか?」
「キュイ」
「まぁ、ハク様と同じテーブルだなんて嬉しいです。お母さま、よろしいですか?」
「えぇ、良いわよ。将来の龍皇様だもの。断る理由なんてないわ」
ハクのために用意した脚が高くなってる子供用の椅子を急遽リリシーの隣に設置した。
その一方で寂しそうな瞳でハクを見詰めるキューティーにはお構い無しにリリシーの隣に座るハク。
「龍姫様、ハク様に友達が出来嬉しゅうございます」
「えぇ、分かってる。分かってるのだけれど、こうモヤモヤとするモノが心の奥底から沸き上がって来る気持ちがあるのよ」
「それはブラコンではないかと」
「カズト様、何かバカにされた気分だわ。そうだわ、カズト様はワタクシの隣で座ること。良いわね」
「……………わ、分かりました。ただし、今は仕事中にて全員が席にお着席になるまでお待ちください」
「えぇ、それで良いわよ」
現龍皇の命令には、流石のカズトも逆らえない。逆らったら、おそらく魔法大国マーリンが火の海へと様変わりする事になる。




