144食目、カレー作り
具材を投入した鍋に水を入れ煮詰めていく。
一番硬いジャガイモが竹串が簡単に刺さる程度まで柔らかくなったら、色を出す香辛料であるターメリック(ウコン)と味の決め手の香辛料であるカイエンペッパー、ジンジャーを粉状のパウダースパイスで加える。
ターメリック(ウコン)を加えた瞬間、一気にカレー色となった。カレーといったら、この色だ。
辛味は、カイエンペッパーで調整してみれば良い。好みで好きな辛さも違うだろう。よって、辛さを星1~5までの5段階で分ける事にした。
その分、使用する鍋が多くなるが構わないだろう。それに加え種族によって食べれない具材がある。だから、具材によって数種類のカレーを作る事にする。
野菜オンリーのベジタブルグリーンカレー、バターのマイルドな風味がするバターチキンカレー、水分を飛ばしたキーマカレー等々を作ろうと思う。
こんなに鍋が並ぶと爽快だ。20台は軽く越えてると思う。こんなに香辛料の香りが漂うと腹が減ってくる。
「おい、少し味見をしてみるか?」
もう少し煮込んだ方が良いが、お玉ですくい取り小皿に数滴垂らし、ボーロに渡す。うん、久し振りのカレーの匂いで俺の頬も緩んでしまう。
カレーが嫌いな者なんていないはずだ。子供から大人までこよなく愛される料理だ。
「い、良いのですかな?」
「まだ煮込むつもりだが、今の段階でこれだ。味を覚えるために舐めてくれ」
ペロッ
ボーロがカレーを舐めた瞬間、ビリビリに衣服が破れ弾け飛んだ。表情なんかだらしなく天国に行って来たと言わしめるかのような笑顔だ。眩しすぎる。
と、感じたが、どうやら錯覚のようだ。いや、衣服が弾け飛んだのは錯覚だ。笑顔は事実で、だいの男がやる笑顔ではない。言っちゃ悪いが………………気持ち悪い。
「これは………………辛味の奥底に複雑な旨味を感じる。うん、まことに旨いですな」
「みなさんもどうぞ」
「「「「………………!!ありがとうございます」」」」
味見した中には、美味過ぎて意識を失い掛けた者もいた。カレーで大袈裟だと言いたいが、比喩でも何でもない。
自分も味見した。うん、慣れ親しんだ懐かしいカレーの味だ。今となっては日本に帰るつもりは更々ない。ないが、何処か故郷のことを思い出し自然と涙がこぼれた。
「"剣の勇者"殿、どうかされたのか?」
「あっ、いえ。昔の………………故郷の事を思い出していまして」
「………………今でも帰りたいと思ってるのですかな?」
ボーロに聞かれるまでは、帰るつもりはないと思っていたが…………………実際のところどうなんだろうか?
自分の心の内にある事なのに、良く分からない。もしも帰る方法が発見されたら、勝手には帰らない。
もし、帰るとしたら俺の嫁達と一緒に行くつもりだ。俺一人のみなら帰らない。
「どうなんでしょうか?カレーで懐かしいと感じましたが、分かりません。もし帰るとしても一人だけなら帰りません」
「そうですか。このカレーとやらが"剣の勇者"殿の故郷の味……………なのですね」
「他にもありますが、そうですね」
他にも故郷の味はあるが、カレー程簡単に作れ歴史があり子供から大人まで根強く人気のあるメニューは中々ない。
「後は、これですね。こちら〝福神漬け〟になります。カレーの添え物として、私の故郷ではカレーには欠かせないものです」
「赤み掛かった野菜?ですかな。どれどれ、お前達も試しなさい」
カズトが前もって浸けておいた福神漬けは、程好い塩加減で味も染み渡ってる。
ポリポリと良い音が厨房で響き合ってる。これぞ、福神漬けっていう味で、益々カレーが美味しくなること間違いなしだ。
国が違えば、同じ料理でも付け合わせは違ってくる。日本では、福神漬けだが、本場のインドでは、インド万能調味料チャツネを付け合わせる。
もちろん材料も違う。福神漬けは、大根・ナス・鉈豆・レンコン・キュウリ・シソの実・椎茸又は白ゴマの7種類の野菜で作るのに対してチャツネは、野菜だけでなく果物でも作られる。甘いのから辛いものまで様々だ。
有名なチャツネだと、マンゴーで作られるマンゴーチャツネだとカズトは思う。マンゴーの甘味にお酢の酸味に加え、遠くに香辛料の辛味がくる感じだ。
見た目は、まさにジャムといった感じでパンにも、おそらく合う。ただ、甘味だけではないので、やっぱりジャムとは違う。
それにカレーだけでなく様々な料理に使われる事も大きな違いだろう。でもまぁ、福神漬けもカレー以外にも使えるのだが、カレー=福神漬けというイメージが強すぎて、カズトも福神漬けはカレー以外に使ってる場面を見た事がないし、自分も使用した事がない。
シャキシャキパリポリ
「これは………………酸味の中から甘味が後から追い掛けてくるような………………カレーをお願い出来ますか?」




