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勇者レストラン~魔王討伐して、やることないのでレストランを開きました~  作者: 鏡石錬
3章魔法大国マーリン

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138食目、ロリコン

「お待たせ致しました。部屋の準備が整いましたので、お迎えにまいりました」


 龍人族ドラゴノイドの王族の案内が終わったのだろう。執事長が俺と樹精族ドライアドの王族の元へやって来た。

 女王陛下の娘であるリリシー姫殿下は、カズトと別れるのが寂しいのか瞳にウルウルと涙を貯めている。


「リリシー様、まだ直ぐに会えます」

「本当ですか?では、カズト兄様もリリシーの事をリリシーって呼んで下さい。それだけで元気が出ます」

「えっいや……………しかし」


 周囲を見渡し助けを求めようとするが、女王陛下はニコニコと微笑むだけで無言の圧力が伝わって来る……………気がする。

 これは逆らわない方が良いと俺の直感が、そう告げている。逆らったら最後、嫌な予感しかしない。

 ルルシー女王陛下がダメになると、残りは二人だがダナンは、ソッポを向き何も知らぬ存ぜぬを貫き通す姿勢だ。


「随分と懐かれたようです。カズトさんも嬉しそうですし、これはロリコンという事でしょうか?」

「おい、ちょっと待て!俺は、ロリコンでない」

「でも、満更でもない様子ですし、違うのですか?」

「ロリコンとは何ですか?」


 リリシー姫殿下が聞いてきた!何とお答えすれば良いのか?めっちゃ困る。不名誉な事を、態々自分から説明したくない。


「姫殿下、ロリコンとは………………」

「ロリコンとは?」


 サンドラがロリコンを説明しようとするも言葉に詰まる。カズトに振ってはなんだが、失敗したと困った顔をつくる。


「ロリコンとは………………姫殿下が知るにはまだ早いです」

「サンドラ、つまりワタクシが子供だと言いたいのですね」


 幼いながらも王族の威厳は健在だという事なのか!リリシー姫殿下の笑った顔が怖い。

 俺に向けられた表情ではないというのに怖いと感じてしまう。早くここから立ち去りたい。


「リリシー、サンドラを困らせるのではありませんよ。それに尊敬してるカズト様が怯えていらっしゃいますよ」

「はっ!カズト兄様、ごめんなさい。怖かったですか?嫌いにならないでください」


 切り替えは早くサンドラに向けた威厳というよりオーラを引っ込めると、全然怖くなくなった。

 怖くなくなった分、オロオロと俺に嫌われてないかと涙目になり、大粒の涙が今直ぐにでも零れそうだ。


「嫌いになるはずないじゃないか。後で話をしに部屋に行きますから。リリシーは、笑顔が似合いますよ」

「そ、そうですか。部屋で待ってますので、絶対に来てください」


 リリシーの瞳がキラキラと輝いて眩しい。こんな眩しい笑顔を泣かす訳にはいかない。もしも、泣かしてしまったら女王陛下からキツイお仕置きが待ってるに違いない。


「あらあらまぁまぁ、リリシー良かったわね。カズト様、我が娘のためにお時間を割いて頂き感謝しますわ。今度、樹界マトリョーシカに参った時には、我が国の威厳を尽くす限りのオモテナシをしてあげるわ」

「いえいえ、お構い無く。リリシーの笑顔をずっと見ていたいと思った次第です」


 カズトのウソ偽りのない本音だ。リリシーみたいな純粋無垢な美少女の笑顔を何事があっても守りたい。

 けして、サンドラが口に出したようにロリコンではないからな。俺には、もう嫁が四人もいるのだから。絶対に手を出す訳がない。


「もしも、我が娘に手を出したら………………どうなるか?分かってますわよね」


 ルルシー女王陛下は、ニコニコと一見笑顔だが近くで見ると分かる。瞳の奥が全然笑ってない。殺意で殺せるなら楽々殺せる程に俺の掌から冷や汗で、グッショリずぶ濡れになっている。

 やはり、何処の世界、国でも母は強しという事をリアルタイムで実感している。まぁそれが王族なのは、この際些細な違いかもしれない。

 というか、顔が近過ぎて怖いし、両肩に両手を置かれギシギシと力を込められて、何処にこんな華奢な腕に力があるのか理解出来ない程に痛い。


「わ、分かりました。リリシー姫殿下の笑顔を何があろうとも守る事を誓います」

「そう、分かってくれて良かったわ」


 スーっとカズトから離れると、一瞬目を離した隙にルルシー女王陛下の姿はなく執事長以外の気配は、既になかった。

 探知する事には、誰にも負けない自身があると自負してるが、樹精族ドライアドの隠密を目の前にすると自身を失くしてしまう。

 世界最強の種族は、龍人族ドラゴノイドというのが赤子でも知ってる一般常識だが、今日初めて樹精族ドライアドにお会いしてから俺の考えは一新した。

 いくら最強と謳われても誰にも気付かれずに殺す事が出来るのなら、これ程怖い事は滅多にないはずだ。

 俺は、風も吹いてないのに体を抱き締め身震いをしていた。

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