135食目、龍姫と銃の勇者
上空からバサバサと羽音が聞こえ、上空の方へ向いて見ると、この世のモノとは思えない程に美しい羽根が生えた女性がカズトの目の前へ降りて来ていた。
「カズト様、お久し振りでございますわ」
カーテーシーでお辞儀をする絶世の美小女は、ハクの実姉である龍姫こと、キューティー・ドラグニクルだ。
龍人族の特徴として両腕と両足が鱗で覆われている。キューティーは、白龍人族の名前の通り、透き通るような白い鱗だ。
人化したキューティーは、カズトより頭一つ分低く見た目17歳に見えるが、龍人族は長命で外見と年齢は合致しない。
「姫様、お久し振りでございます。お元気のようで、このカズト嬉しく感慨無量でございます」
「もう、カズト様そんな話し方嫌いですわ」
「しかし、龍皇になられましたので」
初めて会った時は、ハクを誘拐されたと勘違いされ戦闘になった。相手は、当時王女であったキューティーとその親衛隊。
まだ勇者として成長仕切ってないカズトにとって最強種と名高い龍人族と戦うには荷が重すぎたが、戦いの途中でどうにか誤解が解け和解に成功した。
それから何故かキューティーは、俺の事を様付けで呼ぶようになり、たまに会う度に距離が近い気がするのは気のせいか?
「ワタクシとカズト様の仲でないですの」
「ち、近過ぎじゃないかな?」
カズトの胸元に顔を埋めて来るキューティー。引き剥がそうにも腕の力が強すぎて剥がれない。
「ふぉっほほほほ、龍姫様も喜んで御座いますな。ご迷惑でありますが、龍姫様のお好きな様にされると助かります」
ブラディーは、助ける素振りは一切見せずニコヤカな微笑みでキューティーを見守ってる。
キューティーの妹であるハクは、俺の頭で寝ている。頭を傾けても落ちる気配はしない。
「ハァハァ、ブラディーさんとお嬢早過ぎ……………ゲホゲホ」
もう一人、龍人族が到着した。その顔には、カズトは見覚えがある。
「ゲホゲホ………………そこにいるのは、カズトじゃないか!久し振りだな」
「もしかして健吾なのか?!」
「あぁそうだ。ゲホゲホ……………ちょっと息を整えさせてくれ」
よっぽど速く飛んで来たのだろう。今にでも吐きそうな程に咳込んでる。この場でリバースをしなければ、それで良い。
カズトは、咳き込んでる健吾の背中を擦ってあげた。
「全くもう、もう少しゆっくりと来たら良かったのに」
「そんなお嬢!それはあんまりです」
「ワタクシを何時までお嬢と呼ぶつもり?ここでは陛下と呼んでと、あれほど口をすっぱく言いましたわよね?」
キューティーは健吾に対してプンプンとご立腹だ。怒られてる健吾は、可哀想に見えるがカズトは敢えて口を出さない。
こちらまで火の粉がとんでくるかもしれないからな。こういうのは、あくまで傍観してるのに限る。
「本当にケンゴとカズトは知り合いですのね」
「えぇ、お嬢━━━━━陛下、カズトとは昔からの親友です」
俺と健吾は、中学生からの付き合いだから10年そこらの付き合いになる。もちろん、俺の妹は知ってるし、既に到着した勇者達とこれから来るであろう勇者達とも知り合いだ。
学校とクラスが常に同じで、一番の親友と呼べる存在であった。今日再開するまで、転生してると聞いても何処か否定していた。何故なら、それは一回死んでると認識してしまうからだ。
「いゃぁ、陛下とカズトが、まさか恋仲とは思いもしなかったです」
「ケンゴ、良い事言ってくれました。後で褒美を取らせます」
「いやいや、健吾違うからなって、ハク痛い……………痛いって髪を引っ張らないで」
何処か不機嫌になったのか?頭に乗ってるハクが俺の髪を抜く勢いで引っ張ってる。
「きゅーきゅー」と何か訴えてるようだが、何を言ってるのか分からない。
だけど、何を伝えようとしてるのか何となく分かる。おそらく、健吾が言った俺とキューティーが恋仲というワードに機嫌を悪くしたらしい。
「ほらほら、アメちゃんあげるから」
「きゅー………………パクっ!」
真ん丸のあめ玉をハクの口へと放り込んだ。
あめ玉を美味しそうにコロコロペロペロと口の中で転がしながら、ハクは大人しくなった。
龍の渓谷ドライアーはもちろんの事、この異世界には甘味が少ない。その影響で、あめ玉だけでもハクが大人しくなる程に感動的な代物に早変わりする。
「ハクは何を食べたのですの?」
「これです。あめ玉です。食べてみます?噛まないで、舌の上で転がすように舐めてください」
手に渡そうとしたが、口をアーンと開けて来た。そこに放り込んだ途端に頬が落ちそうな美味しいらしく、今一番の笑顔を見せてくれた。
でも、何かあめ玉に負けたみたいで釈然としないが、まぁ骨を折られる事と比べたら、あめ玉に感謝するしかない。




