SS1-41、帝国の三勇者~アクア、獣人になる~
メグミとリンカの肌がツヤツヤと輝いている。満足一杯に蕩けており、薄暗いはずの森の中のはずなのに、ここだけ太陽の如く照らしている。
「「……………もう死んでも良い」」
「はいはい、ふざけてないで先に進みますよ」
新しい仲間、水熊騎士族のアクアが入り賑やかとなる。
森の中を進む度に魔物が出現するが、ほぼアクアが倒してしまう。
「楽チンだのぉ。これ程、森の中をスムーズに進める事は中々ない」
「アクア様々だな」
「本当に楽チンだぜ」
ゴンが言う楽チンとメグミが言う楽チンの意味合いが違う。メグミは、獣化したアクアの背中に寝そべっている。
「いくら何でもグウタラ過ぎないか?」
「当分はメグミ戦えない」
「強欲の反動ですね。使用した分だけ戦闘出来なくなるペナルティを受けてしまうのです」
それがどいう事か、いまいちピンときていないゴンとルカールカ。
ただ単に武器が使えないと思いきや、戦闘そのものが出来ない。素手でパンチやキックも禁止。
無理矢理にでも行おうとするなら身体が硬直し、動けなくなる。
「アクア、ひんやりして気持ち良いぜ」
『ご主人様にお褒め頂き光栄です』
アクアは水属性の身体で、体温が低くヒンヤリと冷たく気持ち良い。抱き枕にちょうど良いかもしれない。
「メグミ、リンカに変わって」
「イヤだぜ。アクアは、オレの従魔だからよ」
「むぅ…………なら、後ろに乗せろです」
メグミが寝そべっていても余裕で、メグミをいれて後一人は後ろへ乗れる程に獣化したアクアは大きい。
「アクアが居れば、雑魚は出て来なくて楽チンだよな」
アクアの強さにびびって木々の影に隠れてるCランク以下の魔物が周囲にいるのが見て取れる。
「ふわぁ、気持ち良い」
「だから、乗るなって言っただろ!」
リンカがジャンプで乗った衝撃によりアクアの身体が揺れる。が、水属性の身体のため柔軟性が高く多少揺れても衝撃に合わせ乗り心地は変わらない。
まるで最高級のベッドやリクライニングシートのようで、一家にアクアを一匹と言いたくなる。
「アクア、リンカ重くないです?」
「重いよな。アクア」
「……………お二人さん、軽いでございます」
どちらかを取るのではなく、敢えて真ん中を取った。二人の殺気に流石のアクアでもビビる。今、逆らったら殺される。
「今日は、ここら辺で野宿しよう」
「そこまで進んでないような?」
「いや、アクアのお陰で余計な戦闘をせずに済んでるからな。その分、進んでる」
アクアが仲間に加わってから歩みの速さが2~3倍程に距離を詰めてる。
「アクア、やるヤツだぜ」
『ご主人様に褒められた』
ズシンズシンと猛獣染みた足腰が、ルンルンと嬉しそうなステップへと変わってる。
それでも背中に乗せてるリンカとメグミを落とさないよう揺れは最小限に抑えてる。
「よし、良い広場があった。ここでキャンプを張ろう」
「アクアも手伝って」
「ご主人様、了解した」
慣れた手つき野宿をする事、三回程で森を抜ける事が出来た。
本来一週間は掛かるであろう道程をアクアが仲間に加わってから3日ちょいで抜けられた。
「やっと森の外だぁぁぁぁぁ」
「もう少しで兄さんに会える」
「私は風呂に入りたいですわ」
森を抜けた直後で日の光が眩しい。それにジメジメとしてた森よりも空気が美味しく感じる。
「さてと、この道を進めばグフィーラ王国の古都に着くはずだ」
「既にここはグフィーラ王国内だからな」
「急ぐ。早く兄さんに会いたい」
「リンカの姉御待ってくだせい」
「アクア、オレらも行くぞ」
「ご主人様、お任せを。しっかりお捕まりください」
「おい、お前らそんなに急いでも店は逃げねぇぞ」
一人が駆け出すと、みんなが駆け出した。森の入り口から古都まで普通は馬車で1日、2日は掛かる。
だけど、リンカ達だと半日で着きそうな程の速度で息が切れない。余裕でお喋りが出来る程にタフな体力の持ち主ばかりだ。
「メグミ、ズルい。アクアから降りて」
「何を言ってやがる。アクアは、オレの従魔だ。オレを背負っても何も問題にならねぇぜ」
「リンカの姉御、俺の背中に」
「キモい」
「ぐはっ!」
ジャックがリンカの一言に倒れた。だけど、みんなスルーしてる。直ぐに立ち上がり、もう追い付いて来てる。




