SS7-29、女婬夢族ジブリールの居場所~国王の謁見をする事になった~
転移門、それは何時どうやって作られたのか不明の古代魔道具の一つである。
各々の冒険者ギルド、商人ギルド、王族が住む王城しか設置されていない。
使用するには、その施設で一番偉い人物、ギルドならそこのギルドマスター、王城なら国王の許可が必要である。
「この度は、ギルドマスター代理として副マスター:フェイが許可を授けます」
「えっ?!良いのですか?一週間なら王都に着く日数ですけど」
「国王様の言い付けです。もし、転移門を使って無事に王城へ送り届けないと、ワタクシのクビが飛んでしまいます」
大袈裟と言いたいが、けして大袈裟ではない。何故なら、目の前のフェイが腕を掴み震えている。
「わ、分かった。それで一週間後にここへ来れば良いんだな?」
「あっはい。そうしてくれると助かります」
だとすると、冒険者ギルドを出てミスティーナと合流するのもアリだ。
「あっ、一週間の間はクエストを極力控えて貰えれば助かります。連絡が出来なくなると困りますので」
それはごもっともな話だ。だけど、冒険者はクエストをしない事には、お金が入ってこない。
魔物の部位や鉱石を掘って売るのもアリっちゃアリだが、クエストを受けた方が効率が良い。
でもまぁ俺には、一生使え切れない程の財産がある。アイテムボックスに腐る程あり、本当ならクエストをやらなくても暮らしていける。
クエストをやるのは、まぁ《正義》の趣味だ。だから、クエストをこなさなくても《正義》には痛手にはならない。
「あい、分かった。《恋人》、行くぞ」
「ふぁーっ、もう話は終わったのよ?」
「今、眠ってたのか?」
「眠ってないのよ。気のせいなのよ」
明らかにアクビをした後に目頭から涙が一粒零れようとしている。
これで寝てないと言うなら何が寝るのか教えて欲しい。
「そんな事より行くぞ」
「ちょっと妾は寝てないのよ。寝てないって言ってるのよ」
俺の背後でジブリールが何か叫んでいるが、それを無視して冒険者ギルドを後にした。
ミスティーナがいる宿屋に着く頃には、ジブリールの機嫌は回復しており俺と腕を組んで横を歩いていた。
「ミスティーナ大丈夫だったか?」
宿屋に着くと、ミスティーナがいる部屋のドアを開ける。Sランク盗賊団を率いたミスティーナがミスを冒すとは、つゆほど思っていないが心配であった。
「ワタシがヘマを打つ訳ないじゃない」
「それは分かってるが、心配なものは心配だ」
「あら、カズヤはワタシの事を心配してくれるのね」
敵から仲間になってから、まだ1日程度しか経っていないのに《正義》に心配された事が意外でミスティーナでも嬉しくなる。
盗賊内では、仲間内でも心から信頼してはいなかった。何故なら、外面ではミスティーナを尊敬されていても内面では恐怖にしか染まっている者しかいなかった。
だけど、《正義》は違う。外面と内面が、ほぼ違いなんて感じられない。
《恋人》もそう。悪態は付くが、自分に正直に接して来てミスティーナにとって眩しく感じる。それが何故か心地よい。
「ミスティーナ、《正義》にくっつき過ぎ」
「あら?良いじゃないの。カズヤは嬉しいわよね」
「妾の方が嬉しいに決まっておる」
二人にして《正義》の腕を掴み、自らの胸を押し付け合う。
ミスティーナは元々胸は大きく、ジブリールは精気を吸った大人バージョンとなってるため下手したらミスティーナよりも大きい。
そんなサンドイッチになってる《正義》の内心では動揺しまくり、その反面で無表情を貫く。
「おい、二人して止めないか。それで一週間後に城へと行くことになった」
「城へ?カズヤ、何か悪い事でもしたの?」
それはお前だろと突っ込みたい。が、《正義》は魔神教会に所属してる身、知ってる人からすると魔神教会も悪の組織という事になる。
「そんな訳ないだろう。Sランクのクエストを達成したんだ。国王自ら俺達の姿を拝見したいんだろうよ。断ったら不敬になるから行くしかない」
「面倒ね」
「褒美も貰えるぞ」
「行くしかないわね」
「現金のやつだのぉ」
態度を180°変えたミスティーナを見てジブリールが陽気に笑っている。




