SS7-25、女婬夢族ジブリールの居場所~悪魔、かつての仲間の記憶を弄くる~
「まっ、冗談はさておき……………お前の精神魔法で、あの黒森精族の記憶を弄るか」
「えぇ、最初からその積もりでしてよ」
「もしも、記憶が戻ったら…………どうなるかゾクゾクしてしまいます」
ジブリールが自分の事ではないのに、想像━━━いや、妄想しただけでウットリと瞳を蕩けて、ビクンビクンと震えてる。
「《恋人》よ、お前そんなにMだったのか」
「???何の事だか解りませんが、何か素敵な言葉のような気がします」
他の男どもなら今のジブリールを襲っていた事だろう。それ位にジブリールからエロいオーラというか、妖艶さが滲み出ている。
流石は、女婬夢族兼《恋人》の能力を合わせ持ってるだけはある。
俺も《正義》の能力を持っていなかったら迷いもなくジブリールを襲っていた自信があると心の奥底から囁いて来るような感覚がある。
それでも耐性があるにも関わらず、《正義》の頬が、初めてジブリールが精気を吸った時と比べると色合いが落ち着いてるが、それでもピンク色に染まってしまう。
「そんなバカな!ワタシが、見惚れるなんてあり得ない」
ミスティーナが狼狽している。同じ女であるジブリールの妖艶な雰囲気に呑まれた。
《正義》から見てもミスティーナがジブリールを見てはキュンキュンとときめいているのが解る。
「ぷっくくくくくっ、《悪魔》よ、それは仕方ない事だ。《恋人》は、女婬夢族でもあるのだ」
女婬夢族の【魅了】は、普通異性である男にしか能力は効かないはずだが、《恋人》と相まって同性にも効力が発揮したようだ。
ただし、それには条件があるらしくジブリール自身にも良く解っていないらしい。
「カズヤも人の事を言えないわよ。そんなに大きくしちゃって」
何処とは言わないが、《正義》はミスティーナに指摘され、グゥの音も出ないでいる。
どうやら異性としての効力も上昇しているようだ。これは早く【魅了】の効力を上がる条件を探さなくてはいけない。
「そ、それはお前もだろう」
「止めて!我のために争わないで」
「「原因はお前だ」」
どうにかしてジブリールの【魅了】を止めさせた。しばらくして効果が切れたのか、ジブリールを見ても何も感じなくなっていた。
「ハァハァ、もう使うなよ?」
「どうしようっかな?」
「俺には使うなよ?ミスティーナには使っても良いから」
「な!何でよ」
タダのジョークだから、そんなに怒るな。プンプンと怒るミスティーナを宥めながら残りの黒森精族がいる部屋に歩を進める。
俺とジブリールは、部屋の外に残りミスティーナだけ入って貰う。俺達が殺られたと誤認させるためだ。
「ただいま」
「「「お帰りなさいませ。お姉様」」」
三人の黒森精族は、ミスティーナが心配していたようで部屋に入ってくるなりすり寄って来た。
「おケガありませんですか?お姉様」
「あの穢らわしい男に何もされませんでしたか?お姉様」
「あの穢らわしい男は殺ったのですね?お姉様」
壁を隔てても黒森精族三人の声が部屋の外まで響いて来る。
《正義》の能力により精神耐性は付いてるはずなのに《正義》の瞳から涙が頬を伝い落ちる。
(グスン、悲しくないやい)
(良い子良い子)
泣き虫を宥めるように《正義》の頭を聖母のような微笑みで優しく撫でる。
「えぇ、もちろん殺ったわよ。あんな男に負ける訳がないじゃない」
「「「流石はお姉様」」」
ミスティーナのウソを何の疑いもなく信じる黒森精族の三人の娘。
その三人の記憶を弄る事に罪悪感がないと言えば、それこそウソになる。一番、この三人と過ごして来たのだから。
お姉様と呼ばれてるけど、本当の姉妹のように過ごして来た。
だけど、今は新しく仲間になったカズヤと《恋人》の方が大事だ。
なので、罪悪感等の罪の意識を殺して目の前の三人の記憶を弄る事に何の躊躇いはなかった。
「精神魔法【記憶改竄】」
目の前の三人には、聞こえないよう小声で詠唱した。改竄してる途中は、まるで人形のようにその場に立ち尽くして動かない。
三人の内一人の記憶は、ワタシの記憶をコピーしたモノを埋め込む。これで偽物のワタシが出来上がった訳だ。
後は、適当に【肉体改造】によりワタシに似せるよう改造すれば大丈夫だろう。
残りの二人は適当に記憶を弄り、本物のワタシの記憶消し偽物のワタシとの記憶をでっち上げる。
端から見たらなんて悪魔の所業に見えるが、今のワタシにとって褒め言葉にしかならない。




