130食目、赤ワイン
フォルス様とタマモ様の足下には、赤ワインの空ビンがいつの間にかに転がってる。
空ビンが増加するに連れ、料理が乗ってた皿を山積みにされていく。その料理の大半が酒のツマミになる料理だ。
クラッカーとそこに乗せるディップ数種、具材が違う数種のアヒージョ、サーモンのマリネ、豆腐モッツァレラ等々をご用意した。
酒精が、そこまで高い程じゃないにしろ、流石に飲み過ぎだと思ってしまう。この後、他の国が来てから世界会議メープルが開催されるのに大丈夫だろうか?
ぱっと見、フォルス様とタマモ様の二人は酔い潰れてる様子はなく頬が赤くなっていない。
「美味な果実酒じゃが、こんなものは妾にとって水となんら変わらん」
「私もよ。こんな美味しい果実酒があるなんて、体内に染み渡るわよ」
獣人族━━━━いや、獣妖族はアルコールに強いのか?酒精はそんなに強くなくても、こんなに飲んだら酔ってもおかしくないのだが、もうそろそろ止めた方が良いだろうか?
それに今止めなければ、後どれくらいビンを空けるか分かったもんじゃない。今の段階で十数万円分が二人の腹の中に消えてしまってる。
「あのぉ~、もうそろそろ飲むの止めた方が宜しいかと。この後、会議がありますから」
「まだ飲めるのじゃがのぉ。カズト殿に止められれば、諦めるしかないのぉ」
「そうなのよ。お土産に数本貰えば、良いのよ」
「わ、分かりました。ご用意しときましょう」
カズトは苦笑いをするしかない。店の経営で、いくらか金銭は余裕がある。あるけども、これを一週間あると思うと今から頭が痛くなってくる。
ホコリも積もれば山となるって言うし、少々痛い出費だ。まぁ他国の王族と繋がりが出来たと考えれば、安いのかと思う。まぁ考え方の違いだ。
「流石の妾も腹が膨れたのぉ」
「フォルちゃんが、腹一杯に食べたのは何年振りなのよ?」
「さての?最低でも50年振りかのぉ」
「それくらい、カズちゃんの料理が美味だった証拠なのよ」
「そうじゃのぉ。今宵も遊びに来い。いいな」
「あっ、はい」
フォルス様の瞳が一瞬獲物を狩る時の猛獣のような瞳をしていた。あの場面では、選択肢はイエスしかない。まるで蛇に睨まれたカエルだ。
これも【恐】なのか。昨日で克服したと思っていたが、まだまだのようだ。
【恐】を解かれた後もびっしょりと冷や汗と震えが止まらない。本当に昨日、二人の間に入りケンカする前に止められたと昨日の自分を褒めてやりたい。
今夜、再びフォルス様とタマモ様の部屋へ行く事を約束させられ、二人の席を後にした。
「王様王妃様、お楽しみになられておいでしょうか?」
「うむ、どれも美味で目移りしちゃうわい」
「お店でも見た事のない料理が多くて迷います」
パクパク
「そうね、馬車の中と昨日のフルコースも美味しかったけど、今日も一段と美味しいわ」
既に王妃様はデザートに突入されており、一つ一つが小皿に盛り付けされてるせいかペロリと一皿を数秒で平らげてる。
女性は、よく別バラだからとデザートを大量に頼む人はいるけれど、カズトが産まれ育った日本の女性よりも食べてるかもしれない。
まるで、回転寿司かわんこそばでも食べてるかのように次から次へと王妃様の腹に消えていく。デザートの早食いか大食いがあったなら上位入賞するかもしれない。
ゴクゴク
「酒が、こんなに美味しいとは思いもしなかった。流石は勇者カズト殿がご用意してくださった酒の事はある」
「お父様、獣人族でないんですから飲み過ぎです」
「良いんじゃないか」
「この後、会議が控えてるのですから」
「……………しょうがないのぉ。ヒック、我が娘レイラに言われたら止めるしかないじゃないか」
王様は、レイラに止められ酒を飲むのを止めた。誰が見ても分かるように王様の顔全体が赤く染まっており、明らかに酔っている。
このまま着席なさると、おそらく千鳥足でまともに歩けるのか見てるこっちが不安になってくる。
「随分と酔われてるご様子。これをお試しを。酔いがたちまち引いていくでしょう」
「これは変わった色じゃのぉ。ヒック、本当に飲み物なのか?」
「薬みたいなものですので、色に関しては我慢していたければと」
良薬は口に苦しというし色合いもそうだが、味わいも苦手な人は苦手だ。カズトも好んで飲もうとはしない。
王様にお出ししたのはウコン入り飲料だ。二日酔い対策のドリンクの原料として有名だ。ただし、王様の目の前にあるのはカズトが独自に配合したものだ。
出来るだけ飲み易いよう味を調整し、薬効を全面に押し出す形に配合した。カズトももちろん味見したが……………まぁうん、味はご想像にお任せする。




