121食目、マッサージというよりブラッシング?
「タマモの件は片付いたのぉ。妾も〝まっさーじ〟とやらをやって貰おうかのぉ」
「フォルちゃんズルいのよ」
「黙らっしゃい。お主は、散々やってもらったクセにズルいとは何事かのぉ」
「うっ………………」
フォルスの論破にグゥの音も出ない。錯覚だと思うがカズトの瞳には、タマモが明らかに小さくなってる風に見えてる。というか、絶対に俺の目の錯覚でなくて5歳児の子供程に小さくなってる。
カズトは何度も目を擦り、明らかに小さくなってるタマモを凝視した。小ぢんまりとしたタマモは、まるで小動物みたくて………………俺のモフモフ道に火をつけてくれる。
今直ぐにモフモフと愛でたい。ヤバい、ウズウズと発作的な感覚で右腕がタマモ(小)に触ろうとするが、左腕がそれを阻止してる。それ位にモフモフとしてそうで、マジで可愛いと思ってる自分がいる。
おそらく、レイラがここにいれば第一に抱き着いてる。まぁドロシーも例外でない。
「な、何なんですか?そのちっこいタマモさんは?」
「ちっこいって言うな!」
怒られるがちっとも怖くない。何となく【恐】を発してる気もするが、容姿が幼女化してるせいか全然カズトには効いてない。
「【恐】を使える我々獣妖族の副作用みたいなものじゃな。我々が他の【恐】に負けてしまうと、見た通りに可愛い姿へとなってしまうのじゃ」
「屈辱的なのよ」
プンプンとタマモ(幼女)は頬をプクゥとフグみたく膨らませるが、やはりちっとも怖くない。むしろ可愛さ倍増である。
「我々が【恐】に負ける事は、同じ八王でないとあり得んからのぉ。今のタマモの姿は貴重と言える」
「可愛いですね」
「クッカカカカカ、お主面白い事を言うのぉ。タマモでないが、気に入ったぞ」
【恐】に負け幼い容姿になるのは獣妖族にとって一番屈辱的な事らしく、それを可愛いとか言うのは本当ならもってのほからしい。
だけど、カズトがタマモ(幼女)を可愛いと言った事がフォルスにとって笑いのツボに入ったらしくお腹を抱え笑っていた。
一方、タマモ(幼女)はフォルスの笑い声に涙を目元に貯め、今直ぐにでも泣き出しそうな雰囲気を出していた。
言っては悪いが、泣き出すのを我慢してるタマモ(幼女)も怒ってる時とは違う可愛さを持ってるとカズトは密かに思っていた。
「獣人国家アルカイナに来る時があれば歓迎するから絶対に来るのじゃ」
来る時って言いながら絶対って言ってるじゃないか!俺に選択肢なんかないのか?!
「そんなの無いに決まっておろう。というよりも、お主が来なかったら……………妾二人がオババ様に殺されてしまうからのぉ。タケヒコからも再度お願いされるやもしれぬからのぉ」
「忘れてたのよ。それも伝えようと呼んだのよ」
「オババ様って言うのは………………」
オババ様は、二人と同じく八王の一人で猫人族の頂点に立つ実質八王No2の実力者だ。本名は猫魈猫美、猫人族の最上位種族である猫魈だ。
尻尾が三又に別れてる事が主な外見上的特徴であり、八王の中で最古参の一人であり数少ないフォルスやタマモを止められる者でもある。
「お二方と同じ八王………………さぞ強いのでしょうね」
「強いとかそんな次元ではない。まるでバケモノじゃな」
「そうなのよ。怒るとめっちゃ怖いのよ」
心無しか二人とも、そのオババ様とやらにブルブルと脅えている。この二人がこんなに脅えるとは、どんな人物なのかカズトは興味が湧いて来たが、もう一回言うが………………この二人が恐れる程の人物だ。
興味半分恐怖半分といったところか。
「確かお主、オババ様の孫と会ってるじゃったな」
「えっ?誰で………………はっ!まさか」
「どうやら頭に浮かんだようじゃな。おそらく当たってるじゃろうな」
まさかライファンの祖母が八王の一人だとは思わなかった。その血を引いてるから、あんなに強いのか!行商人を生業にしてるのに護衛をつけないで国々を行き来してる。
確か二人程お供がいたはずだが、その二人もライファンと同様獣妖族のはずだ。そこんじょそこらの盗賊や魔物なら返り討ちにしてしまうだろう。
「ライファンが、まさか王族だとは思わなかった」
「あのお転婆娘からは想像出来ぬであろうな」
「オババ様から直々に商人の心得と戦闘技術を学んでるから強いのよ。八王でも良い勝負になるんじゃないかしら」
「えっ?マジですか!」
確かに一緒にパーティーを組んだ時は予想以上に頼もしかった気がする。露出が多い衣服を着て、良くあんな動きが出来るなぁと感心していた。
そのライファンの祖母だから、さぞ強いというか二人がバケモノ呼ばわりしてるのも納得するしかない。きっとゴツい身体付きをしてるに違いない。




