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勇者レストラン~魔王討伐して、やることないのでレストランを開きました~  作者: 鏡石錬
3章魔法大国マーリン

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117食目、タマモに連れ去られる

 神樹の森フリーヘイムの王族一行への用事が済み、もういい時間帯なので自分に宛がわれた客室へと戻ろうと廊下を進んでいたところで、何者かに背後から目隠しをされ抱きしめられた。

 背中には、なにやら柔らかい物が二つムニュンと当たってる。形を変えながら、まるでスライムみたいに柔らかく気持ち良いと口から出るのをどうにか我慢した。


「くすくすっ、だ~れだ?」

「この声は………………タマモさんですか?」


 全く気配がしなかった。本当に誰もいなかったはずなのだが、急にタマモが現れた。というか、目隠しをされるまで気付かなかった。

 これも獣妖族のみが使える【オソレ】なのか?もしも敵だったなら、すえ恐ろしいな。俺、何をさせたのか知らずに死んでるぞ。


「カズちゃん、探したのよ」

「な、何の用ですか?タマモさん」

「もう、そんな他人行儀で話さないでよ。私とカズちゃんの仲じゃない」


 フゥとタマモの息が耳に掛かり、ゾクゾクと体全体に鳥肌が立った。まるで男の生理現象が来たみたいにゾクゾクと来た。

 この人は、イタズラ好きでなければ美人でキレイだと感じるのに、中身が非常に残念で………………あぁ本当に残念で仕方ない。


「ハァー……………」

「何でそんなに残念そうなのよ」

「いえ、何でもないです」

「お姉さんが来たのよ。『わーい、タマモの姉さんだ。ヤッホーイ』って喜んでくれたって良いのよ」

「そんな物好きがいたら良いですね」


 そんな物好きがいたら本当に見てみたい。

 外見が美人で中身が残念だと………………タマモの前ですっごく言いたいが俺の本能が止めた方が良いと止める。美人でイタズラ好きだが、怒らせると怖い部類なのは明らかだからだ。


「ねぇーねぇー、お姉さんに抱き着かれで嬉しいでしょ?」

「えぇ、そうですねぇー。嬉しいですよ」


 カズトは棒読みで返事をする。中身が残念でなければ、まともに相手してるのに…………………あぁ、本当に残念だ。


「あっそうそう、カズちゃん今暇?」

「自分の部屋に戻るので忙しいです」

「暇なんだ!そう良かった。じゃぁ、今からタマモの部屋に出発よ」


 この人、話を全然聞いてくれない。いや、むしろ聞いていたからこそ俺を連れて行こうとしてるのか?!ニコニコ笑顔で超絶に断り難い。

 カズトの抵抗もむなしく首根っこを掴まれ引き摺りながら連行された。聖剣エクスカリバー無しでは、到底獣妖族の腕力には勝てない。

 そして数分間引き摺られながら到着したのは、俺らの部屋と何ら変わり映えしない扉の前だった。その扉を開くと中から声が聞こえて来た。


「やっと戻って来たのかぇ?!その手に持ってるものは………………」

「フォルス様、夜分失礼致します」

「ただいまなのよ。散歩の途中で思わぬ、拾い物をしたのよ」

「はぁ~、カズト殿を子犬を拾ったみたいに……………グフィーラ王が聞いたら嘆くぞ」


 タマモに連れて来られた部屋の中にいたのは、タマモと同じ獣人国アルカイナ八王の一柱であり女王でもある不死鳥女王フォルスだ。

 魔法大国マーリンに到着した時と晩餐会時とは違い、物凄くソファーにて寝転び自分の家のように寛いでいる。

 というか、寛ぎ過ぎている。衣服である着物が所々はだけており、男であるカズトには目のやり場に困るより毒になりかけている。


「フォルス様、衣服をちゃんと来てください。他の者に示しがつきません」

「クッカカカカ、勇者という者は本当に怖いもの知らずよのぉ。他の者なら不敬で一掃してやるものだ。だけども……………プハァ~、それを不問とする代わりに何か妾に旨いもんを食わせろ。それで手を打とうとやろうでないかぇ」


 プカプカと煙管をふかしながら、カズトに要求してきた。断ったら不敬になり、罰せられる事になる。どちらにせよ、カズトには断れない。二択に見せ掛けて一択しかない。


「はぁ~、分かりました。どうせ断れないのでしょう。少々お待ちください。準備致します」

「カズちゃん、タマモの分もね。もしも、用意しなかったら一生タマモの【オソレ】で虜にしちゃうから」


 ぞくっ!カズトの背中に何やら冷たい空気みたいな、言葉では説明出来ない悪寒的なものが襲ってきた。

 その悪寒がタマモの言葉に呼応するかの様に背中を撫でられてる感覚を覚える。まともに言葉を発せられないまま、カズトの体全体から冷や汗が溢れ出ている。

 この場にいる事よりも、いっそのこと一思いに殺してくれた方が……………まだマシに思えてくる。魔法大国マーリンに到着時に発した不死鳥女王フォルスの【オソレ】が遊びと思えて来る程だ。


「これこれ、タマモよ。カズト殿が固まってしまってるじゃないかぇ。その悪いクセを治せないものかのぉ。気に入った者を【オソレ】で縛るクセを」

「えぇ~、ダメかな?お持ち帰りしたらダメかな?」

「ダ・メじゃ。早く解かんかい」

「ちぇ~、はい、これで解けたはずよ」


 ぷはぁ~ハァハァ、可愛い顔してこの人……………いや、この獣妖族超絶に怖い。ガクブル、怖いわぁ

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